インド生活を振り返る(日本企業の苦悩)

インドから帰国して2か月、もうインドで悪戦苦闘していたことは遥か彼方昔のような気持ちになっています。
日本での新たな仕事にも慣れてきて、それなりに忙しい日々を送っています。なかなかインドのことをじっくりと振り返る時間も取れず、このnoteを書くと記憶が何となく蘇ってくる気もします。

やっぱり許せん。

さて、僕が帰任する際に後任に残した引継書があるのですが、その冒頭でインドの日本企業で働く際の注意点のようなものを残してましたので、今回はそれを取り上げてみます。

何度も繰り返しますが、すべての在インド日本企業、及びそこで働くインド人がこの通りということはないはずです。きっと上手くやれているところもあるし、優秀なインド人と前向きに働ける場所もあると思います。あくまで「僕がいたところだがこんなんだった」というに過ぎません。


1.     性善説は一切通用しない

少し主語が大きくなりますが、日本企業がインドで中々上手くいかない原因は「日本の考え方が通用すると期待するため」と考えています。
ありとあらゆる事象において、日本での日本企業は

「一定の教育を受けた人々が、一定の精度/速度で、悪意を持たず働くこと」

を前提としており、ERP等の社内システム一つをとってもそのような設計思想で構築されていると思います。
ところがインドではこれが全て逆であり、

「我々が想定しえないレベルの人々が、低い精度/速度で、悪意を持ち働く」

が実態だと、悲しいながらもこの3年で認識しました。
日本人は国民性からも「性善説」で他人に一定の期待をしますが、これがインドでは一切通用しないと考えておくのがベターです。
最初から性悪説でとりかかる必要があり、
「トンデモナイ人材の可能性がある」
「精度も速度も遅い可能性がある」
「不正含めて悪いことをする可能性がある」

と疑ってかかっても足りないケースが多々あります。もちろんこれが全てとは言いませんが、往々にして想定していた最低のケースを超えてくることもあります。
とにかく性悪説で全てに覚悟して臨むことが重要と考えます。
なので、日本で使っているコンセプトやシステムをそのままインドに移植した企業は大抵エライことに陥っていると思います。
 

2.     変革を望まず、その場しのぎに徹する
インド特有の文化として「ジュガード」という考え方があります。
よく言えば臨機応変、悪く言えばその場しのぎ。
何か問題/トラブルが発生した際、根本の原因を探り当てて解決するのではなく、その場で何とか迅速に解決するという考え方です。
恐らくその結果としてIT開発等で昨今求められるAgile開発方式に強い、といったメリットはあると思われますが、物事が根本解決にならず、同じ問題が再発するリスクを常に抱えている状況が続く傾向が強いです。
インド人は変革を好まないケースが多く、これまで通りのやり方をとにかく続けたい、何か変えるとしても自分ではやりたくない、という考えが極めて強いです。
従って、何か変革に迫られてもジュガード精神でその場しのぎ(言い訳含む)で対応する為、変革を行う際には徹底的に追い詰めて誰がいつまでに何をやるかについてのコミットメントを書面/文書で取る必要があります。
 

3.     時間の概念が希薄
〆切や期限といった概念が非常に弱く、承認/了解取付が期限ギリギリとなり検討時間を取ることが出来ないケースも多いです。
僕のいた会社では社内改善は進んだものの、未だにギリギリ文化は根強く、都合の悪いもの程ギリギリに持ってきて検討時間を与えないという作戦も多々あります。
ギリギリ締切間際の場合には、ドライに
「検討時間が足りないので承認不可」
としてバッサリ切ります。
これを繰り返すことで徐々にですがこの悪しき文化を薄れていくものと期待しています。
 

4.     責任転嫁文化
とにかく他人のせいにする文化が極めて強いです。
そのため、業務上で何らかの問題が発生した場合でも、問題箇所か原因の特定に時間がかかる傾向があります。
事実関係を淡々と確認し、言い訳・責任転嫁的な発言を徹底的に封じることが肝要であり、当事者と思われるメンバー複数から裏付け含めて確認を取る必要があります。
又、責任転嫁傾向の強いメンバーは案件/プロジェクトから思い切って外してしまうことも対応策の一つとなります。
責任転嫁内容についても、針小棒大的に小さなミスを鬼の首を取ったかのように大きく見せかけてくる傾向が強いので、具体的な数値やプロセス等含めて追い詰めながら確認していくことも重要と考えます。
最終的には誰がいつまでに何をやるのか、について書面/文書で残すことで責任転嫁機会を封じることも可能です。
 
5.     Open Questionは禁物
どのような場面でも質問/疑問を投げかける際にはOpen QuestionではなくClose Question(Yes or No、A or B等)を心がける必要があります。
Openの場合、関係のない話や長い言い訳等でポイントが一切分からなくなる可能性が高い為、Yes or NoスタイルのClose Questionで短い回答を繰り返すのが良いと思われます。
Closeで質問した場合でも関係なく長い回答を行う傾向が強い為、その都度回答を遮りYes or Noで聞き続ける必要があります。
 
 


とまぁ、こんな感じです。赴任当初はこれにしっかりと気づけておらず、だいぶ時間と労力を無駄にしました。
文化の違いと言えばそれまでなのですが、そう言って片づけるにはあまりにも大きい違いだと思っています。

同じように感じている日本人が結構多かったので、程度は違えど当てはまるんだろうな、と思ってます。

これからインドに進出する方々には、

「悪いことは言わない、やめときなさい」

としか言えません。

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