見出し画像

(ショートショート)顔と名前は分かるが一度も話したことがないクラスメイトのようなもの

深夜3時。周囲の人達は眠っている時間帯だ。しかし、ネトゲは遊ぶことができる。そして、なぜか毎日その時間帯にいる人たちがいる。彼らがどういう人たちなのかは全く分からない。大学生か? 無職か? そのゲームで飯を食おうとしているプロの卵か? まあなんでもいい。しかし彼らはお互いのことを知っている。チャットやメッセージは送れないがIDは表示される。いつものメンバーで過疎ったネトゲを遊んでいるのだ。私達は友達ではない。しかしいつもいる馴染のメンバーになってしまった。

最近のネトゲではランダムマッチングが主流だ。だから誰とマッチして遊ぶかは分からない。しかし深夜3時という深い時間帯では遊び相手も少なくなっている。例えば午後8時の時点では500人が遊んでいるゲームでも深夜帯は70人ぐらいになるだろうか? その70人は、密度の濃い70人である。顔と名前はわかるが一度も話したことがないクラスメイトぐらいの距離感である。今日は誰とマッチするのか、あるいはしないのか。いつもいたあいつはいなくなった。いや、IDを変えただけか? まあそんなことはどうでもいい。私達は深夜のネトゲで遊んでいる仲間だ。今日も戦おう。明日も戦おう。みんなで時間を無駄にしよう。好きなゲームのサービスが終了しないように支えよう。