非常ボタン

強盗殺人事件を追う約40日間が終わった翌日の夜。会社でぼんやり新聞を開き文字を追っていたら、ある文章から目が離せなくなった。

6月14日付の朝日新聞朝刊、広告大手「電通」に関する上智大教授の談話。見出しは「支配にあらがう仕組みを」。以下に引用する。

特定の何かや誰かが強大な力を持つときは、支配のリスクを明確に意識して、あらがう仕組みを整えておかなければいけません。重要なのは選択肢の多様性、そして追い詰められないための非常口を確保しておくこと、その手段に出るハードルを低くしておくことです

〈中略〉

人間関係や社会における支配構造は、そうはいかない。いじめや性被害などのハラスメントは、深刻な問題であり続けています。それらも当事者間の問題としてだけ処理されるのではなく、独禁法のような、外部の目を通じて有効に機能する非常ボタンを用意しなければならないのではないでしょうか。

出典:(耕論)「ガリバー」頼み、課題は 柴田明彦さん、舛添要一さん、楠茂樹さん:朝日新聞デジタル

まるで今の自分の状況を言われているようだった。そうだ、私は「非常ボタン」を押したんだ。これ以上追い詰められないために。

非常ボタンを押しても、構造のそばにいる人の言葉や視線を気にして、また傷つくこともあった。救われたかったからこそ、そうなったことは明らかだった。でも、救われる言葉を新聞で見つけた。

一見すると自分とは無縁なテーマのオピニオン欄の記事。自分の現在地とつながり、肯定してくれた。この40日間、新聞の価値は特ダネにあるんだと、要求されてきた。それもあって、新鮮な体験だった。

手段に出るには、自分1人だけでは勇気が足りなかった。ハードルを低くしてくれたのは、信頼する大事な人たち。心の底から感謝しています。

その人たちのことを想って、おやすみなさい。


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