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ニンジャスレイヤーをAoMシリーズから読む/S4_22「ビースト・オブ・マッポーカリプス◆後編」(前)

こんばんは、AoMシリーズから出戻りしました望月もなかです。 
今年は全然雪が降らなくて、暖かいなあと思っています。晴れた日は、もう春みたいです。

前回の感想はこちら。

【前提】望月のニンジャスレイヤー知識

・書籍第一部を3巻まで(中断)
 →6年経過(ほとんど内容を忘れる)
 →『スズメバチの黄色』読了
 →AoMシーズン1〜3読了+後、PLUS加入
 →AoMシーズン4以降はリアタイ+旧三部物理書籍14巻(今ここ)


◇◇◇

今回のエピソードはこちらです。

「ビースト・オブ・マッポーカリプス」 - ニンジャスレイヤーWiki*

シーズン4:「ビースト・オブ・マッポーカリプス◆後編」

鐘が鳴り、まもなく一糸乱れぬシャウトが聴こえてくる。憑依ニンジャが一斉にセイケン・ツキを始めたのだ。一般市民に加えニンジャすらも自由意志を奪われ、もはやネオサイタマは黄金立方体キンカクの意のままかに思えた……。だが、まだだ!ネオサイタマの死神がいる。キンカクにまつろわぬ魂を宿す、ニンジャスレイヤーが!

 ♯1

戦いに出向く前に、蕎麦食べて報連相をしていたフジキドさんとマスラダくん。二人とも成長したね……。シーズン4まで追いかけてきた身として、後方腕組み保護者面でしみじみと感じ入ってしまいます。

 マスラダは今再び、その折の「ソバ会合」に思いを巡らせた……。

ソバ会合ウケる

フジキドは小瓶を取り、シチミの粉をソバにかけた。そして数秒の間を置いて、マスラダに尋ねた。「……使うか……」「ああ」

「使うか」と声をかける前の「間」にフジキドさんの不器用さが詰め込まれており、最高の気分になっています。フジキドさんよかったねw

二人は同時にドンブリを傾け、汁を飲み、ドンブリを置いた。置く音がユニゾンすると、彼らの表情は微かに苦笑めいた

あ~~~~~~! にやにやする!

不器用ソバ会合に色っぽいお兄さんが参戦してきた。

フィルギアは割り箸を割った。「クロヤギ・ニンジャは太古のニンジャ。長命かつ不死身に近い。群体にして、その自我はひとつ」

フィルギアさんってときどき奥ゆかしいナラクちゃんみたいな役回りになりますよね……(例:タイラント・オブ・マッポーカリプスの決闘シーン)

「つながる」フジキドは国際探偵然とした推理を巡らせた。

また地の文さんがフジキドさんの味方してる。
マスラダくんやガーランドさんだって、事実や伝聞情報をもとに推論を組み立てることはある。同じことをしていても、フジキドさんの時だけ執拗に「探偵のすばらしく鋭い推理」みたいな修飾語をつけていますよね。わかるぞ。私の透徹したまなざしは鋭く厳しく、地の文さんの偏った感情を見抜いている。

フジキド・ユカノ・ナンシーの潜入組、懐かしの第一部みたいな空気感があって楽しいな~。特にナンシーさんとフジキドさんのやりとりには幾百幾千もの共闘を経たもの同士にしかないスムーズさがあり、豊富な滋養が含まれています。ンフフ。

ナンシーさんがコトブキちゃんのことを「有能なウキヨ」と評してくれて嬉しい!

◇◇

 ♯2

狩人アヴァリスは蔓天蓋の下、マルノウチスゴイタカイビル屋上で獣を待ち受けていた。逆光を背負い、襲い来る猛り狂った赤黒の炎。高揚感に震える。捻じれた角が軋み、カラスは喚き羽ばたき、シャチホコ・ガーゴイルはカラテ衝突余波に煽られた!

「他の狩人連中とのイクサはどうだった、ニンジャスレイヤー=サン?」半神はその目を爛々と輝かせた。

「これまでの戦い」をまとめてくれるアヴァリスさんが親切。わかる~。メイヘムさんは力強くて美しかった。

「どうでもいい。おれがそれをさせないからだ」

うううぅマスラダくん格好良すぎ……好きだ……!!
敵が若干余裕こいてるときに、マスラダが予想を上回る瞬間的加速で距離を詰めに来る戦闘シーンがいつも大好き!

そしてナラクちゃんがずっとうるさい(笑)

(((儂はかつてこの何倍も強力なデン・スリケンを跳ね返してきた。驕るでないぞマスラダ!)))

わかったわかった、わかったよ。
いえ本当にナラクが恐るべき百戦錬磨のニンジャだということはわかってるんですけど、おじいちゃん自己顕示欲が強くて情報に余計なノイズが多いんですよね。

(((所詮は手品遊び、何するものぞ。キンカクの溢れ雫どもはワケもわからず、癇癪じみて己が野放図な力に溺れるがせいぜいよ。制御もゼンもなき力に如何程の価値ありや!(略)

いや~でも、ここはすごいですね。絶好調ナラクの煽り口上、惚れ惚れしちゃう。
ナラク・ニンジャの真骨頂は、こういった恐るべき存在を天から地へと引きずり降ろして『所詮ニンジャ、儂に殺されるべき存在』という概念に等しく再定義し、こ奴もそ奴もニンジャであるなら同じこと、彫られた名前が違うだけでぜんぶ同じ形の麻雀牌! みたいに並べて指で弾いてしまうところにあるんだと思います。サツガイだろうがカツ・ワンソーだろうが、そこらの野良ニンジャだろうが、所詮はニンジャなんですよね。政治家もヤクザも幼稚園児も人の子として呪えるならさしたる違いはそこにない、みたいな。怨霊ならではの潔さにゾクゾクします。

マスラダくんもずっとかっこいい!


◇◇

 ♯3

マスラダは深く身を沈め、アヴァリスを睨む。無数のクロヤギ分身体へ刻んだ赤黒の亀裂が、アヴァリスの中で脈打つさまを見る。……その頃。マルノウチスゴイタカイビル建物内では、電子遺物ヒラグモを巡って、コトブキたちがティアマトと対峙していた。

店舗や警備施設で調達してきたアイテム。(略)C4爆弾。極めて物騒だ。これはビル内で得た品である。

実況でも再読1回目でも気がつかなかったんですけど、なんでビル内でC4爆弾を手に入れることができたのでしょうか。警備施設に爆弾があるわけがないですよね……もはや警備の域を越えているよ。まさかビルのテナントで売ってたりしませんよね? エネアド社からくすねたとかですよね? ネオサイタマ特有の不安がつのってくる!

手元の装備を確認し、「彼女を出し抜かなければならない……これらの品を以て」と呟くリバティくんにつなげられた「そして、勇気を!」のセリフが好き。コトブキちゃんの、シリアスな戦いに臨むときでも絶妙に空気読めてなくて、発言がちぐはぐで、でもだからこそ(なんとかなるのかも!)と思わせてくれるところが大好きです!

「ア……ア……嗚呼……」震えるディヴィナーのメンポを外し、ティアマトはマッチャを口に含ませた。

ティアマトさんにかかれば普通の抹茶もなんか媚薬みたいなオーラを放ってしまうの怖。

「ほほほ! 言いも言うたり。ニンジャ六騎士たる我、全知全能のドラゴンに真っ向挑むとな?」「竜退治は最高の誉れ。のぞむところだ」

リバティくん格好いい! 良い! 英国少年が口にすることで良さが跳ね上がっている!!

偽の茶器ヒラグモと透明マントを用いて強敵ティアマトを惑わし、無事に仕事をこなしたリバティ&コトブキ組。彼らの目的はヒラグモ奪取ではなく、茶器それ自体にハッキング侵入口を作ることであった。なぜなら、

ナンシーの情報どおり、ヒラグモの底部にはLANソケットが存在していたのである!

そんなわけないだろ。

異常なニンジャ世界観にだいぶ慣れてきた私でも、さすがに怒りますよ。

果たしてそれが冒涜的な増設作業によるものか、あるいは、古代より……いや、読者諸氏の正気を試す結果になりかねない疑いは、持つまい。

マジで怒りますよ。

ともあれ、キーとなる電子遺物にセキュリティを解除して電子侵入経路を確保し、期待を上回る成果を見せたコトブキたち。ナンシーさんがハッキングを成功させれば、儀式の転覆も夢ではありません!

「ここから、ボコボコにやっつけます」コトブキが言った。「わたし達は、負けませんよ!」

ガバガバ決意だ~~~いすき!!!!

◇◇

 ♯4

ニンジャスレイヤーはアヴァリスと睨み合い、コトブキはリバティとともにマルノウチスゴイタカイビル内で潜入任務に挑む。向かい合う廃ビルの地下駐車場、装甲ピザワゴンにカメラを向けると、そこにはサイバネ中毒者相手にピザをワンオペしまくる健気な少年の姿が! 

「このピザは神の啓示だ」「いわば、あの少年はピザ祭司」

ザック少年がピザ祭司になっちゃった……(ピザ祭司ってなんだよ)

厄介客へのタキ仕込み横柄接客スキルを覚醒させてワンオペを回していくザック少年、愛、地球博。AoM開始時は、ワンオペ少年ピザ提供行為がラストバトル成功のカギになるだなんて思いませんでしたよ。ねっマスラダくん!!

(((警戒せよ。さりとて恐るるべからず。奴がジツを引き出す原理はわからぬが、所詮……)))「いや、大体わかってきた」ニンジャスレイヤーはナラクに答える。

さすがすぎる。わかりがはやい。ナラクちゃんより早いのすごくない? これだけ理解わかりが早ければタキのピザ食べてアピールも絶対気づいてるはずなのに……(呼ばれてるとわかっていながら無視する猫じゃん…)

一方で呼ばれてなくても出てくる先代忍殺おじさん。

(初戦から、なんて苦しい戦いだったのかしら)

で、出た~!
アニメイシヨンのオマージュですよね?

アニメイシヨン、個人的には第一部で読者が喰らう体験を忠実にアニメ媒体へ落とし込んだ傑作だと思いました。でも(何て苦しい戦いだったのかしら)リピートは正直どうかと思ったよ!(笑)

「フジキド。イエ・モトは本来こうして用いるジツ。己の命を危険に晒す真似は繰り返してほしくありません」「……努力する」

ひ……
ヒィ……………………………………………………………

フジキドが己の命を危険に晒したことを咎めるユカノさ……はぁぁrぁjr

無理無理。マジで無理私が無理。ちょっと正気がたえられない。二つ返事で分かったと言えないフジキドの業、それでも最大限ユカノの気持ちを思いやり絞り出した回答が留保付きの「努力する」なのが……はぁ……

はぁぁぁぁぁああ


◇◇

 ♯5

フジキド、ユカノ、ナンシー・リンはエネアド社深奥へ潜入する。繰り返し待ち受けるセト直属配下の恐るべきニンジャ。だが殺した。フジキドとユカノは連戦に次ぐ連戦で消耗していく。次なる相手は……?

「だが殺した」の繰り返しといい、フジキドさんのガバ推理といい、物語解像度が第一部っぽくて懐かしい感じですね。

「オヌシは、すべき事をした」フジキドは低く言った。肩に置かれた彼の手に、ユカノは触れ

( ゚д゚) ・・・ (つд⊂)ゴシゴシ (;゚д゚)?????????

助 け て く れ

か、肩に手を
肩に手を。慰めるために肩に手を。
その手に触れ、

まってよお………無理だよ……人間には精神的に耐えられる器というものがあってそこにドバっと限界値を超えた関係性を注ぎ込むと、器が、器が
はぁ、はぁ、

気を取り直しましょうね。
カフェオレを飲みます。


マスラダくんが頑張ってるのに勝手に限界になってごめんね。
ちゃんと応援してる。

ひとりのニンジャには持てないほどの多種多様なジツを使ってくるラスボスと、マルノウチスゴイタカイビル屋上で戦う。今感想を書きながら気がついたんですけれど、これ、第一部ラストバトル(ラオモトvsフジキド)のリフレイン? オマージュ? でもあるのかな……。実際、フジキド側も第一部終盤のシックスゲイツ戦に近い描き方になっています(例:なんて苦しい戦いだったのかしら)。意識して書かれた可能性は結構あるのかも。

個人を悼む想いを年月の数えに組み込んでしまう法事のように、寄せては返す波が砂の城を洗い崩してしまうように、十年の時を経たネオサイタマで、フジキドさんが妻子の墓標に見立てた「マルノウチ・スゴイタカイビル屋上」に付与された意味が、ほろほろと解体されていく。
第三部が完結し、フジキドの戦いが終わった直後(ですよね?)に予告編として公開された「寝ブッダ像前のサツバツナイトvsナラク」の構図が、今シーズン終盤になってようやく本編に現れたのも頷けます。あの心臓出し入れバトルを経て初めて、フジキド家の慰霊碑を、新ニンジャスレイヤーが解体することが許されたのかもしれないな(物語的に)…なんて思いました。

(((これは! トビウオ・ジツか!)))

何? トビウオ・ジツって。認めたくない。
どんなジツかは分かってるよ、書かれてるから…でも殺人トビウオなんていません。

ちょっと脱線してしまいましたけど、こうして次々と未知なる技を使ってくる相手に対して、ナラクちゃんあまりにも強いですね。ズルといっていいレベルですよ。

「グワーッ!」
 アヴァリスが上体を仰け反らせた。ニンジャスレイヤーの拳が顔面に入っていた。(略)縦の拳を握った両腕が、まるで蒸気機関車のクランクめいて高速で回転!

やった! 通った……!!!
コトブキちゃん発祥リトル・イデアの型が敵ボスに「通る」たびに感極まっちゃう……!
コトブキちゃんの鍛錬が無駄じゃなかったこと、そしてマスラダとコトブキが積み重ねてきた日々に意味があることがわかるので、チェーンパンチが入る描写、好きです!


◇◇

 ♯6

アヴァリスの八芒星より繰り出されるジツを次々と撥ね退け、追い詰めてゆくニンジャスレイヤー。アヴァリスは勾玉の力をより深くまで無尽蔵に引き出し、己とキンカクの境を曖昧にしてゆく。

フジキドとユカノの連戦もいよいよ大詰め。
vsデスウイング戦は手に汗握るギリギリのバトルで面白かったです。

まあ私はフジキドとユカノさんの阿吽の呼吸バトルで瀕死なんですが……。

呼吸が、呼吸が乱れる。

致命的な攻撃が来る……フジキドとユカノは互いを垣間見た。

ビャーーーーーーーーーーー!!!(泣)

「……フジキド」ユカノはフジキドの肩に手を置き、呼吸を助けた。彼女もまた満身創痍一歩手前。「ナンシー=サンと共に。頼む」

アアアアアア゛ア゛ア゛ァ゛ーーーー!!!

はぁ、はぁ、たすけてくれ。
水を一杯くれないか。
ありがとう。お礼にすくってもすくっても水があふれる不思議な柄杓をあげようね……

軽率に肩に手を置き合う関係がもう家族じゃん家族だよ。公式も家族か親戚みたいなものって言ってたし……言ってたんですよね。N-FILESで。マジで? マジです。どうしろっていうんだよ、もう私の発狂を止める「それは幻覚だから落ち着いて」の呪文が使えないじゃないですか。魔法禁止令!魔法禁止令!!

深夜だけどカップラーメン食べていい?
賞味期限が先月の防災用品があるから、食べなきゃいけないの。

いいよ。


わーい

ふう……
ちょっと落ち着きました。
空腹で錯乱していたのかもしれない。穏やかに、心を落ち着けて、続きを読んでいきます。

 BWAHAHAHA! そうだろ? 俺や俺や俺は始祖の影。何を考えているかもわからぬ巨大な力が、微睡みの中で寝返りを打った。その痕跡だ。平等に価値がない。

サツガイさんって、自我がないように見えてある(言動で「これはサツガイ」だとちゃんとわかる)し、でもやっぱりないんですよね。シーズン3のアナイアレイターさんのときもそうでしたけど、乗っ取られた者にはサツガイさんの口調が混じるから、ちゃんと読者にはそれとわかる。「サツガイの発する言葉」と認識できるくらいの自我はある。自我がないという自我。蛇の尾を食らう蛇のよう。

不思議な存在ですよね……。
ブラスハートさんの人格ともまた違うような気がする。影響は受けてるのかもですが。

一つ、また一つと、屋上を囲んでいたシャチホコが押し出され、落下してゆく。

ああ…フユコ・トチノキへのお線香(代わりの生首)収納容器がこんな形で失われてしまうのですか。でもこれでよかったのかもしれませんね。フジキドさんはもう、生首詰め込み慰霊行為からは自由になっていい頃だと思います。その象徴だったシャチホコ・ガーゴイルが崩れ落ちたのも、巡り会わせというものでしょう。

アヴァリスは己の胸を拳で叩いた。荒れ狂う緑の装束が波打ち、蹄めいた音が応えた。「我が名はアヴァリス。誇り高きクロヤギ・ニンジャの仔にして、狩人。獣を喰らい、勝利の喜びを我らのものとする。それが俺のイサオシだ。最後まで付き合ってもらうぞ」

「カツ・ワンソーの影アヴァリス」が、サツガイの力を自らの意志で捨て、ヴァインの思い出を拠り所とし、再び「ヴァインの狩人アヴァリス」に立ち戻った場面。美しいですね。

頭上には成層圏。ネオサイタマを遥か眼下に見下ろして、戦いは次のステージへ移ります。

文字数がかさんできたので今日はここまで。
また次回の感想でお会いいたしましょう!

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次の感想はこちら。


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