②内科レジデンシーのプログラム選択(PGY5以上)とマッチ率を上げる方法
驚いたことは、PGY5以上の人でgapのない経歴を持つapplicantはかなり少ないということです。Gapがあるold IMGはobservershipやexternship等を行う事で現場復帰→レジデンシー申請という流れが多いように思いました。そういった人達の多くはアメリカでラボに所属し研究実績を作りたい、あわよくば論文を書きたいと思っているのですが、コネも乏しいのでその方法を取るのはかなり厳しいです。確かに、Stanford等多くの大学は連絡しても無視です。
その次にあるパターンがアメリカで研究をしているold IMG。これが良いか悪いかはその人次第だと思います。論文があれば研究実績を伴っている人と捉えられるものの、研究に重きを置いていないプログラムは研究重視のapplicantを避ける傾向にあるからです。研究にも力を入れているプログラム(言い換えるとフェローシップマッチを意識しているプログラム)は若いIMGもアプライしている事が多いので、old IMGが入る隙がありません。
あとは自国でsubspecialtyのboardまで取った人がアメリカで研究やUSCEの経験を積まずにそのままレジデンシーからやり直すパターン。これはもしかすると日本からしかいないのかもしれない、と感じる程少ないと思います。そういう経歴のIMGの多くはフェローシップから入っているのかもしれません。
たとえば卒後6年目であれば、卒後6年目に見合った経験、スキルを伴っているのか、という考え方が大事で、その見方で一般的なold IMGを見てみると、決してそうとは言えない人達がほとんどです。アメリカで医者を6年もすればフェローシップも終わっていますし、内科のboardも研究実績ももちろんあるでしょう。客観的に判断し、卒後年数に見合った実績があるかないかで自分のapplicationの強さがある程度把握できます。それに見合った実績なのか。それ以下なのか。はたまたそれ以上なのか。
1つの内科プログラムが受け取るapplication数は1000〜5000個程度なのですが、gapなく臨床を続けていた人や研究で素晴らしい業績を残しているレアなPGY5以上を探し出すためにわざわざ数千を超えるapplicationを事細かに調べるプログラムは本当に皆無であるという事実は知っておくべきだと思います。
PGY5以上=何らかの問題点あり
と盲目的に判断されているかもしれません。確かに、上記のような背景を持つold IMGが多いと予想されるだけに、PGY5以上を全て除外してからapplicationを確認していく方が賢いと私も思います。私はインタビューに行く度に、全program directorや他のapplicantから「大学病院のプログラムに行くべき」とか「たくさんインタビューに呼ばれているはず」とか言われましたが、実際そんな甘くはなく、私のapplicationは確認すらされていないパターンがほとんどだと思います。もし見られていたとしても、コネがない限りはプログラムが定める卒後年数基準をすり抜けることは不可能だということも痛感しました(ウェブページに記載されていなくても多くのプログラムが卒後年数基準を設けている)。
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PGY5以上はeliglibleなプログラムを片っ端からアプライすることになります。意外にeligibleなプログラムは結構あり、200個くらいはあるかもしれません(卒後年数基準が記載されていないプログラムが多いのも理由の1つ)。私のように家族がいると行きたくない州も多数あるので、絞ると100-150個以内になると思います。しかし、「どこでもいいからマッチしたい」訳ではなく、実際は「フェローシップマッチに強いプログラムにマッチしたい」訳で、自分が応募するプログラムリストにはあまりそういったプログラムは残っていません。そして、若い人達もそのような強いプログラムにアプライしているだけに本当にインタビューに呼ばれません。結果的にPGY5以上はインタビュー数がゼロまたは1という状況に陥り、申請シーズンが始まる前からアンマッチの覚悟が必要です。
打破する方法は、
① 卒後年数に見合った実績以上の実績を作る(これはUSMLEの勉強よりも大変)
② 抜け道の検討
特にUSMLEの点数が低いold IMGとPGY10以上は抜け道を通るしかないです。そうでなければマッチの可能性はゼロと見積もる方が良いです。
抜け道の方法は
① アメリカに住んでる人は近隣のプログラムに直接連絡(NYなどIMGフレンドリーな地域では非常に大事。地理的な要素をしっかり加味するプログラムがほとんど。たとえば、家族がここに住んでいるのもあって是非この病院でobservershipさせて頂きたい、等。そしてそこにマッチできるよう取り組む)。
② 競争率が低いsubspecialtyのboardがある人はレジデンシーは諦めてフェローシップから始める。
③ 日本人を優先的に受け入れるプログラムに応募。その病院で前もってobeservershipしたりという計画も必須(2021年にレジデンシーマッチングに参加するなら、今から検討して応募の仕方など確認しておくことをお勧めします)。
④ 内科に関わらずとりあえずアメリカで医者したいというだけであれば、他のsupecialtyにアプライすることも大事。Pathology等はIMに比較し競争率が明らかに低いので、そういう異なるspecialtyへのアプライも選択肢に入れた方がいいかもしれません(2年連続内科インタビューに呼ばれなかった友人はpathologyで今回大学病院のプログラムにマッチ)。
私の経歴(PGYやUSMLEの点数など)はそのままに、スタンフォードの研究者ではなく、永住権がなかった場合を想像してみると、本当に1つもインタビューに呼ばれなかったかもしれません。「PCIをしていた循環器内科医」は聞こえは良いのですが、決してプログラム側はそういった人材を欲していない点は認識しておくべきです。非常に痛感しました。普通の卒業して間もない教え甲斐のある人がレジデンシープログラムにより適しているということです。逆に、+αの要素(スタンフォード、visa不要など)が加わると、状況は変わるということです。
Conclusion
PGY5以上で内科レジデンシーを狙う予定なら周到な準備が必要です。若いIMGに混じってアプライするならUSMLEの高得点かつ卒後年数に見合った実績は最低限必要です。ある特定のプログラムへのマッチに専念するというアプローチを取ることでアンマッチは避けることができます。そして+αの要素(永住権、米国の有名施設で研究±推薦状等)があると、「どこでもいいからマッチ」ではなく「フェローシップマッチに強いプログラムにマッチ」という目標が実現する可能性が高くなり、私の場合は実際可能でした。
「なんとか可能でした」という表現の方が正しいかもしれません。
もう少し詳しく説明すると、「どこでもいいからマッチ」だった可能性は予想通り90%以上(体感ではアンマッチの可能性はほぼゼロ)で、「フェローシップマッチに強いプログラムにマッチ」の可能性は10−20%程度でした。PGY5以上が後者の確立を上げるには、打破する方法②では無理で、+αの要素を含めた打破する方法①に取り組むことが重要だと思います。
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