見出し画像

「八月十五日」

万緑のなか旅立ちて還らざり 

手元にある古い戸籍謄本に、叔父の戦死の記載がある。
「昭和弐拾年四月拾六日時刻不詳ニューギニヤ?-プンニ於イテ戦死」
除籍の記載は一年後の四月だった。
ただ二行の記載から推しはかられる、叔父の運命。
あとすこし早く終戦を迎えていれば、叔父は家庭をもち天寿を全うできたかもしれないなどと考えてしまう八月十五日。
終戦後、二歳だった姉は樺太で亡くなった。
ジフテリアに罹り血清が手に入らなかったと、とても賢い子だったと、母は小さな位牌を撫でていた。
それぞれの家にそれぞれの戦争の爪痕があった。