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月の満ち欠けを読み終えて

 映画化されるということで、取り寄せて読みました。
まず、本の感想は人それぞれだと思うので、気を悪くされる方もいるかもしれません。映画化ということは、この物語をもとに脚本が組み立てられるわけなので、期待したいなと思います。

・瑠璃
・三角
・小山内
・正木

主な登場人物です。
わたしが思うこの物語の主軸は「瑠璃と三角」
小山内はこの二人を描く為に選ばれた人という感じ
正木はこの「瑠璃」の思いに巻き込まれた人
そして物語の終わりに
主人公とされる小山内もまた「生まれ変わり」の運命に気づかされる

ここからは、ネタバレになるかと思いますので、まだの方は読まないでいただけると嬉しいです。
それくらい、この本は受け止める人による思いの幅が大きいと思います。
2017年の直木賞
わたしは、どちらかというと芥川賞や直木賞よりも本屋大賞を好みます。



瑠璃と正木と三角

煙草屋に勤めている時に正木に惚れこまれ結婚をした女性瑠璃
正木はいわゆる昭和時代の企業戦士
結婚をして子供に恵まれ出世する事が当たり前と思っていたようで
瑠璃の気分におかまいなしにセックスを強要する無神経男

子供ができないのは瑠璃に原因があるかのように遠回しにストレスを与える男、そんな男と結婚してしまった自分を少し悔やんでいるようで、いや文章から感じ瑠璃は「逃げたい」ように感じる

その正木がどうやら浮気していると知るのは「アグネスラム」と名乗る女性からの嫌がらせ電話。併せて出張が多くなる夫正木に対しての不信感

その仕打ちに対して「寂しい」のか「悔しい」のかはっきりとは感じられない瑠璃の行動

ある日、雨宿りしていた場所(三角大学時代のバイト先)がレンタルビデオ店だったことで三角と出会う。
三角から雨に濡れた髪を乾かすように借りたTシャツと交わした言葉

映画館での再会(といっても、この再会は三角の思いがはたした再会)
持っていた三角へのプレゼント
思いもよらなかった三角からのプレゼント

瑠璃にとっての三角は「逃げ場所」だったのか「心を開放できる人」だったのか、この二人の会話で交わされる瑠璃の「生まれ変わりへの思い」

そもそも瑠璃は三角を
「生まれ変わってもそばにいたいほど愛していたのかどうか」
ここがこの物語への是非が分かれるところだと思います。


わたしはというと、どうも瑠璃の行動に冷めてしまって読み進めることに

正木は瑠璃を愛していたのか

三角は瑠璃を愛していたのか

文章からはあまり感じとる事が出来なかったので
わたしは三角と小山内に感情移入をして読み進めることになりました

三角と瑠璃の人目を憚らって合瀬を続ける日々の会話に
この二人の全てが描かれているとはとうてい思えず
描かれていない部分は読者に委ねたのだろうかと思いえるくらい
作者が描きたかった「輪廻転生」の為の瑠璃と三角というように感じてしまい『冷めた感情』が物語の最後までぬぐえなかったです。


一方主人公とされる小山内は、愛する妻と子供を交通事故で亡くしてしまいます。実はその愛する妻と娘の謎の行動が「瑠璃と三角」と強く関係しているという物語です。

正木はというと、一通の置き手紙を置いて事故で亡くなってしまった瑠璃への懺悔の気持ちからでしょうか廃人のように生きていた数年からなんとか故郷に戻り生活を立て直しとある建築会社に勤めることになります。
失った日から十数年後、自分を慕っていた勤め先の二代目社長の子供との関係から人生が狂ってしまいます。


三角を愛していたから2度も生まれ変わったとされる小学生の「瑠璃」に翻弄される大人たち
そして小山内に忠告する「瑠璃」

クライマックスは間違いなく三角に強引に会いに行った2度生まれ変わった「瑠璃」

◇ ◇ ◇

物語を読み終えて
この小山内と三角が「生まれ変わりを信じ、受け入れてからの人生」のほうが気になってしまいました。

はたして二人はこの「自分を愛して生まれ変わってくれた少女」とどう関りを持って生きるのか

小山内に関してはある程度の将来を決めた女性の連れ子が 
かつて自分が失った妻だということは、この後、二人をどう愛していくのか

すでに中年になってしまった三角は
大学時代に愛した「僕のすべて」であった瑠璃を
小学生の姿の「生まれ変わり」の瑠璃とどうつながっていくのか

みんな不幸になる未来しかみえなくて。
正木が疑われたように幼女誘拐とされたような
そんな不幸な未来しか描けなくて
辛くなった読了でした。

ただ、唯一救われたのはラストの三角の台詞でした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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