私の私による私のためのお風呂

7月30日
「今日もまた朝が来てしまったでござるか…」
何もしてないのに既に疲れてる体を起こして、真上にきた太陽の光を浴び、シャワーを浴びにいく。お風呂場のドアを開けるとそこは小蝿の世界だった。「壁の模様、ドット柄だったっけ?まあ、そうだったかもしれない」。そう思わせるほど綺麗な距離を各自が保っている。どうしてお風呂場が小蝿ワールドになってるのか。こいつらの原因は全てカタカナ3文字の植物(名前は忘れた)がお風呂場に持ち込まれたことにあった。

7月27日
このカタカナ3文字の植物は、母親がお風呂場に飾るために買ってきたものだった。狭いお風呂場に土を持ち込むなんて汚いと思った。たまにシャワーの水が土に当たり、土が溢れて床に流れる。私は「お風呂場に土はどうなのか」と母に尋ねたが「植物が可愛いから退かさない」の一点張りだった。が、その土の中にどうやら小蝿の卵があったらしい。実は小蝿は数日前にも出現しており、その時は5、6匹だったのでスプレーで退治した。そして母親に「ねえ、虫が生まれてるよ?退かさないと」と言ったが、「スプレーで退治したから」という。しかし次の日お風呂場に来てみると、もっと増えていた。虫が大の苦手な私はその日、洗面所で30分迷った挙句シャワーに入るのをやめた。

7月28日
様子は変わらず、なんなら数は少し増えていた。シャワーに入りたい。だが家にあった殺虫スプレーはあまり効果がなかったのか、それとも新しいのが生まれたのか、数が減っていない。植物自体に直接スプレーをかけてしまいたいが、植物が死んでしまうかなと思い、また虫にスプレーとシャワーの水をかけて退治。再度母親に植物を撤去するよう求めた。

7月29日
お風呂場に来てみると、ドアが開いていた。恐らく、お風呂場の中で殺虫スプレーが充満しないようにだと思われる。だけどそれでは小蝿が家中を自由に飛べるようになるだけじゃん!ほんとに虫が嫌い。一匹ならまだ、2桁の小蝿が家中にいるのは吐き気がする。半泣きでドアを閉めた。

7月30日
今日こそはシャワーに入りたい。洗面所に仁王立ちの私。お風呂場の扉をゆっくりと開く。いざ…
お風呂場のドアを開けるとそこは小蝿の世界だった。壁の模様、ドット柄だったっけ?まあ、そうだったかもしれない」。そう思わせるほど綺麗な距離を各自が保っている。終わった。こちらに向かって飛んでくる小蝿にスプレーをかける。カスー。殺虫スプレーは空であった。こちらに向かって飛んできた小蝿は耳を掠めてリビングへと飛び立つ。耳を掠める際にあいつが呟いた「俺は自由だ」という声が今でも頭の中でブンブンと飛んでいる。
私はいつになったら幸せな気持ちでシャワーに入れるのだろうか。頭にきた私はマスクを装着し、室内サンダルを履いた。シャワーヘッドを掴み、勢いよく小蝿たちを排水溝へと流していった。水が当たらなかった小蝿たちは必死に頭上を飛び回る。恐怖で何度も滑って転びそうだった。たかが小蝿、されど小蝿だ。私の素敵なお風呂タイムを小蝿たちから奪い返すべく奮闘すること約30分。目で見える限りの小蝿たちは全て殺した。ふと植物の横に目をやるとそこにはお気持ちばかりの「小蝿ホイホイ」が置かれていた。中には何も入っていなかった。
ゴミ袋に植物を入れ、根本の部分で口を縛り、庭に置いた。これで土から新しく出てくる小蝿も庭で大量発生することなく死んでくれるだろう、と一安心した。
きれいになったお風呂場を見て感動しながら「よくやった、よくやった」と自分に言いながらシャワーを浴びた。涙が、出た。

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