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騒音と戦うための法律:環境基本法

 テレビのアンケートで隣人が行う迷惑行為は?という質問に対してぶっちぎりの1位が騒音だった。しかし、これだけ困っている人が多いのにも関わらず、解決のための決定打となる情報が拡散しない。わからないではない。誰に言って解決するかもよくわからないからだ。思いつくのは警察か弁護士か。

 こういう時に真っ先に相談するのは警察だろうと思う。しかし警察はよくて注意するだけ。何故か?警察官は刑事に関わることはやるけど、民事は民事不介入として動いてくれない。騒音は刑法に規定されていないからダメ。軽犯罪法に規定はあるけど、警察や弁護士に聞くとそれだけでは動けないみたい。警察が動ける時は健康被害などの実害が証明できる時。後は自動車の違法改造。家から出る大きな音は管轄外。

 では弁護士は?これは当たりはずれがある。弁護士は私人同士の争いは民法で解決するもの、という先入観がある上に彼らは民法のスペシャリストという自負があるために騒音を解決出来る者が限られる。民法には騒音の規定が無いから弁護士も手を焼く。

 騒音問題は刑法でもなければ民法でも無い。ならなんなの?環境基本法という行政法に規定されています。行政法は行政を拘束する法律だから民間人には及ばないんじゃ?と思う人がいるかもしれない。実際相談した弁護士の一人はそう答えた。ドポンコツめ。


環境基本法を抜粋します。

(目的)

第一条 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。


国民の責務)

第九条 国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。


2項 前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。


 国民は環境への負荷の低減に努めなければならない、と努力義務が規定されていますね。「環境の保全上の支障」と「環境への負荷」についてもちゃんと定義しています。


(定義)

第二条 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。


2項 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。


3項 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。


ここにある3項の公害の中で環境保全上の支障の中に騒音が入っています。つまりこの法律では国民は騒音を出さないように努力する義務がある、と言っているわけですね。

 努力義務とは?最近よく聞きますね。自転車を運転する際のヘルメットの着用も努力義務です。義務じゃないんでしょ?と言う人はおられるでしょう。確かに義務ではないし、罰則も無いです。しかし努力する義務はあるのです。毎夜騒音を出している人は努力していると言えるのでしょうか?当然言えないので違法です。

 罰則が無いなら意味ないという人がいるかもしれません。そうではないのです。違法であると断言できることが大きいのです。

 不法行為に対する損害賠償請求をする場合、満たさなければならない条件があります。具体的には


・加害者に責任能力があること

・加害者に故意・過失があること

・加害行為に違法性があること

・被害者に損害が発生すること

・加害行為に損害発生との間に因果関係があること


以上を満たさなければなりません。責任能力は12歳になれば備わるとされています。日常的な騒音はどう考えても故意に発生させていますよね。で、違法は先ほど説明した通りです。損害はケースによるところです。因果関係の立証も苦労はしないでしょう。


 じゃあどこから騒音になるのか?については環境基本法には書いていません。これがこの法律の面白いところであり、画期的なところです。


第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。


環境基本法にこう書いてある以上はすでに基準は定められているのです。告示という形で環境省にあります。


具体的な土地の区分は各自治体のホームページにあるので、騒音で困っている方or騒音を出しているかも?とお悩みの方はご自身の住む場所が何dbまでなら出していいのかをご自身の住む市町村のホームページで確認するといいですね。とはいえ大体は昼間で50dBまでかと思いますが。


 50dbと書きましたが、ちょっとでも50dbを超えたら違法かと言うとそうではなく、1時間の平均が50dbなのです。等価騒音レベルとは?


 じゃあ、100dbの大音量を1秒だけ出すのは違法じゃないのか?となると違法だと思います。眠っている時にそんな音が聞こえてきたら起きちゃうし。そこは「環境負荷の低減に努めなければならない」って条文に反するよね。


 騒音は違法ということはお分かりいただけたかと思います。じゃあ、どうすればいいのか?は次回以降。

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