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「テイミングマスター」のイ・ドギョン氏に聞く、ウェブトゥーンシナリオ&コンテの作り方【後編】

こんにちは。
フーモアの佐々木です。

今回のnoteは前回の続きで、webtooninsight Japan主催のオンラインイベントで、月光彫刻師やテイミングマスターを代表作に持つArc Studio代表のイ・ドギョン作家の≪ウェブトゥーンシナリオ&コンテの作り方≫のまとめの後半です。(webtoon insightを運営する福井さんに承諾済)

前回のnoteはこちらをご確認ください。


今回の後編は【作画】【ビジネス】に関するお話のまとめになります。

質問1:作画のポイントは?

韓国では1話ごとに読者の記憶に残るカットが1個は必要と言われています。もちろんたくさんあっても良いですが、最低1カットは入れます。その記憶に残るカットを韓国ではスーパーカットと呼んでいます。

質問2:制作の際にマストで気をつけていることは?例えば、セリフの文字数は何文字までとか1話あたりのカット数は100超えないようにしているのようなこと

セリフに関しては、吹き出しの中に文字を多くし過ぎないことです。スクロールの手を止めないように、なるべく少なくするのが理想です。
カットに関しては、スタジオや作家に依存しますが、個々人の限界を見極めてオーバーワークにならないようにカット数を見極めることが大事です。韓国のスタジオや作家それぞれ自らの限界を知っていて、60カットが基本になります。見せ場を作る際は60カットをオーバーすることももちろんあります。

質問3:webtoonにおいて作画のクオリティはどこまで重要な要素を占めるか?

作品のジャンルごとに作画のクオリティが変わります。
日本で人気があるロマンスファンタジーは綺麗なドレスが出てきますが、例えば横の漫画ですと、『カイジ』は絵が綺麗じゃなくてもヒットしており、もし『カイジ』の作画が綺麗だったらヒットしていなかったかもしれないと思っています。
そのため、作品のジャンルによって作画クオリティは変わります。

質問4:もし、イ・ドギョン先生が、日本の横の漫画や小説をwebtoon化するならどの作品をwebtoon化したい?

映像作品なら藁の楯をwebtoonにしたら面白いと思います。横の漫画で言うと、『BLEACH』がもしwebtoon化する場合は、ほとんど直さなくても良いと思います。実際、『BLEACH』の演出は韓国でかなり参考にしています。他には、『ゲットバッカーズ』もwebtoon化したら面白いと思います。

質問5:国内外関係なく、先生ご自身が感銘を受けた映像作品はあるか?また、現在注目されているWEBTOON作品はあるか?

映像作品だと、Netflixで作られているドラマを見ています。イカゲームや、地獄が呼んでいる未成年裁判は面白いと思っていて、ここまで作れるのかと感動します。
webtoonだと、最近はNaverを見ています。ザ・ボクサーは最近連載が終わったがかなり面白かったです。あとはshow me the luckey chan!に注目しています。


質問6:日本でヒットしているジャンルは、ファンタジーや悪役令嬢系が多く、結果作画クオリティが高いものが多い印象。それ以外の韓国のwebtoon作品が、なぜ日本で売れていないと思うか?

ピッコマやLINE漫画では派手な少年漫画やロマンスファンタジーが人気だと思っています。ロマンスファンタジーは悪役令嬢系は人気がある理由は、そもそも悪役令嬢は日本でかなり前から人気で、そこを韓国が真似して作ったので、日本で先行したジャンルを韓国がアレンジしただけです。だから当たり前の結果かなと思います。ビジュアルは目を引くという意味で、そういうものが売れるのは当たり前のことだと思います。

質問7:現状のwebtoonはフルカラーで美しいビジュアルのものが人気となっているが、Netflixでドラマ化された『地獄(地獄が呼んでいる)』はモノクロ作品だった。『地獄』に関しては最初からドラマ化を狙っていたものだったと思うが、今後『地獄』のような「モノクロ・縦スクロール」作品で大ヒットする作品は出てくる可能性があると思うか?それもとやはりカラーでないとヒットするのは難しいと思うか?


地獄は漫画原作ではなく、同じ監督が同時に企画しました。監督が原作者で、ドラマ化と同時にwebtoonが作られました。ですのでwebtoonが二次創作となります。モノクロの漫画は自分も描いたことがありますが、いろんなカラー作品と比べると注目度が低くなります。カラーの方が視線を集める力が強いので、競争を考えるとカラーを描くしかないです。ただモノクロが受けないというわけではないと思いますが、モノクロで大ヒットさせるには、それに加えてカラーの作品に劣らないというのが必要だと思います。

質問8:他のエンターテイメントと比べて、韓国の第一線で戦ってるプロデューサーのイ先生にとって、Webtoonの強みを何だと認識いるか?

私はwebtoonはスマホで見る漫画と定義しています。webtoonがスマホで読める最適な媒体だと思っています。それがwebtoonの強みです。また誰もがどこでもスマホさえ持っていれば読めるというところも強みだと思います。


質問9:キャラクターデザイン、トリートメントや作画、着色などのWebtoonの工程がいくつかある中で、クオリティに起因する割合はそれぞれどれくらいになる印象か。これは、今国内でも沢山の企業がスタジオを作るときに、どこの工程の人件費を高く低くするのか悩んでいたり、例えば有名なイラストのクリエイターに大金を払って引っ張ったら売れるのかなど、不確定要素が多い。勿論、全ての工程が絡み合って完成している認識ではあるが、重要な工程を優先順位として上から並べるとどういう順位になるかお伺いたい。

正確に何%かとかはないです。キャラが重要です。キャラが魅力的じゃないとダメ。ビジュアルが大事な媒体なので、キャラが作られてクオリティが高く出来ないとダメです。重要度はキャラクターの割合が大きいです
また、どの工程を優先順位をつけるかは、正解はないです。作品をどういう構造でつくるかのディレクションの話。絵コンテは韓国で、線画は日本で描く、みたいな。色塗りはインドネシアでやるという作品もあります。そうやってつくる作品であればその順番で良いと思います。重要な工程などは作品ごとに変わると思います。


質問10:作家やスタジオ側の立場として、kakaoとnaverの違いや、どのようにそれぞれに向き合っているか?

個人的な感想ですが、naverの場合は「少年ジャンプ」に似ていると思います。naver webtoon自体を「少年ジャンプ」のように韓国のジャンルとして紹介したことがあります。naverは日本漫画の編集部みたいな役割を持っています。一方でkakaoはヒット作を探す能力が高いです。ヒット作を発掘するなど、商業的な意味でセンスが良いと思っています。kakaoは小説をベースにしてwebtoonにした初めての会社です。novelcomicsを成功させた会社ということです。

質問11:これまで日本の”漫画”という産業は、1人の作家さんに依存したコンテンツの作られ方をしていた。これは、マルチスキルを求められたり、過度な仕事量を求められたりというネガティブな要素がある一方で、億万長者になる作家さんもいたので、光と闇があったと感じている。Webtoonについては、スタジオ的に制作される工程で、作業負担が軽減されたり、効率化されるというメリットがある一方で、お金も分散するという視点があると思います。先生のご経験も踏まえて、現状のWebtoonの原作者や制作関係者の方々の「クリエイター側」のご意見として、お金の座組みをこうして欲しい、こうなったらいいのに、という所をお伺いたい。

現在のwebtoonの制作者として、ゲームとかアニメーションを制作するという観点で考えてほしいです。制作費が多くある作品はクオリティが高いですが、関わる人も多くなります。webtoonの制作の負担を大勢でやるか、個人でやるかの違いなので、解決案はないと思います。もう少しクリエイターの環境は時間をおいて悩んでいくものだと考えています。

おわりに

韓国webtoonのヒット作を作り続けている作家さんの生の声などは日本ではなかなか貴重なイベントでした。お時間を頂いたイ・ドギョン先生、webtoon insightの福井さん、ありがとうございます!またこのような機会を設けてくださると国産webtoonでヒットを目指そうとしているクリエイターや制作スタジオの方々などにも役に立つ情報となってくると思います。


最後に弊社募集です!
フーモアはグローバルwebtoonスタジオとして最新かつ最先端の情報を持ちながらwebtoon制作をしています。このような環境で働けるのはある意味でチャンスだと思っています!是非クリエイターの方々のご応募をお待ちしております!

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◎制作アシスタント
 各工程における制作アシスタント業務になります。
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 webtoonのクオリティ管理と作画監修業務になります。
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 株式会社フーモア 担当:佐々木真史
 TEL/03-6228-4310 MAIL/info@whomor.com


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