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横読み想定で作られた漫画のコマを切って縦に並べ替えてカラー化したwebtoonはぶっちゃけどうなのか?

こんにちは。フーモアの芝辻です。

以下の記事、大手出版社さんも続々とwebtoon制作に参入するということで、まだ国産でヒットが出ていない中で、グローバルではジリジリとwebtoonスタイルの漫画がスタンダードになる中で、非常に良い動きだと思います。

この記事にある、説明図が「既存の漫画を縦にコマを再配置しカラー化する」(以降、「横漫画の縦スクロール・カラー化」と呼ぶ)ようなことがwebtoonだというような、誤解を与える印象となってしまっています。

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そういえば、「漫画の縦スクロール・カラー化」は実際のところ、どうなんでしょうか?

今までやられてきた「漫画の縦スクロール・カラー化」で売れたという作品を聞いたことがなく、売れていれば、「俺だけレベルアップな件」のように何か数字でメディア等でも出るのではないかなと思っています。多くの作品が「漫画の縦スクロール・カラー化」されたという記事やニュースは出たりしているので、今回はどうなっているか調べてみました。

鋼の錬金術師の「漫画の縦スクロール・カラー化」は今どうなのか?

日本作品で日本国内で大ヒットして有名な作品で、「漫画の縦スクロール・カラー化」された作品があります。鋼の錬金術師です。最近荒川弘先生が黄泉のツガイを連載されて楽しみです。

韓国では既に横の漫画での翻訳版はあったようですが、以下はkakao pageで「漫画の縦スクロール・カラー化」されています。

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読者数はkakao page内では約72万人(2022年4月9日現在)で連載は水、金、日とハイスピードです(でした)。以下土曜日の他のkakao page上での人気作の読者数が70万人~190万人ですので、負けず劣らずという感じです。

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鋼の錬金術師の「漫画の縦スクロール・カラー化」は、スクリーントーンが上手く剥がされており、縦に合ったように既存の横をそのままするだけでなく、かなり手を加えて工夫をして「漫画の縦スクロール・カラー化」しています。以下のyoutubeに詳しく解説されているので見てみてください。

また横の漫画だと1話のボリュームも長いということもあり、「漫画の縦スクロール・カラー化」では、話を分割しています。

ですので、鋼の錬金術師はかなり考えられてコストもかけられた上で「漫画の縦スクロール・カラー化」されているのがよく分かると思います

一見すると上手く行っているように見えなくもないのですが、kakao page上で100話(横の漫画だと30話相当)で連載が止まっていたり、以下のコメントを見るとしばらく動きが無さそうです。

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連載が止まってしまっている理由は定かではありませんし、売上等の数字は分かりませんが、とある韓国webtoon作家さんから聞いた話だと、そこまで上手く言っていないということも聞いたりします。

マーベルコミックBlack Widowの「漫画の縦スクロール・カラー化」は今どうなのか?

2021年7月にnaver webtoonで連載を開始するとニュースになった、マーベルコミックスのBlack Widowの「漫画の縦スクロール・カラー化」はどうなったんでしょう?

以下見てみると2話で止まっている様子。

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アメコミは元々ボリュームも少ないので、大元の横漫画自体のボリュームが少ないのかなと思いきや、
Black Widow Vol. 1: S.H.I.E.L.D.'s Most Wantedが134ページあり、

Black Widow Vol. 2: No More Secretsが136ページあるので、

1ページ6コマ計算とすると、両方で1620コマ、webtoon化で1話70コマ平均とすると、この作品はwebtoon化すると23話相当はあることになります。


途中で止まったのか、元々2話しかやらない想定だったのか不明ですが、naver webtoonとマーベルコミックスはその後もどんどんとwebtoonで連携していくという発表をしておりマーベルのサブスクで連載しているのかもしれません。

漫画の縦スクロール・カラー化で起こる問題点

例えば、先程のマーベルコミックスのBlack Widowの「漫画の縦スクロール・カラー化」で説明をしていきます。

1.キャラクターなどの線の太さが極端に太くなったり、細くなったりする問題

以下のblack widowの横の漫画をコマを切って縦スクロール化すると

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(引用元:https://www.amazon.co.jp/Black-Widow-Vol-S-H-I-L-D-s-ebook/dp/B01M2VOKRT?asin=B01M2VOKRT&revisionId=&format=2&depth=1

以下のようになります。

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(引用元 https://comic.naver.com/webtoon/detail?titleId=775721&no=1&weekday=tue )

このシーンの上のコマは、元々が縦長のコマで、下の横長のコマとの大きさのまま縦に並べてしまうと小さくなってしまうため、拡大されています。そうすると線画の太さが太くなってしまいます。

そういう演出意図として線画を太くするのであれば違和感がないとは思うのですが、横の漫画ではそのような意図は無いように思います。縦にして、画面の情報量上大きくせざる負えないということで大きくすると、太くするということは強調をするとか、近くにその人物がいるとか、何らかしらの意味を持ってしまいます。が、このケースは単純に大きくしているだけなので、違和感が残ってしまうというわけです。

2.読者の視線誘導問題

横の漫画で”アメコミ”の場合は、紙で右から左にめくるため、視線誘導は左から右、上から下に読ませるように持ってきます。(日本横の漫画だと逆なのでご注意を)。
black widowの以下の1ページだと、左からの右に向かってキャラクターが動いているように見えますし、紙もそのようにめくるので問題読みやすいと思います。

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(引用元:https://www.amazon.co.jp/Black-Widow-Vol-S-H-I-L-D-s-ebook/dp/B01M2VOKRT?asin=B01M2VOKRT&revisionId=&format=2&depth=1

これがwebtoon化するとどうでしょうか?

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(引用元 https://comic.naver.com/webtoon/detail?titleId=775721&no=1&weekday=tue )

スマホでwebtoonでこのシーンをもし仮にゼロから演出する場合は、果たしてこのように描くでしょうか?斜め右下にコマを傾けるとかもあったかもですが、このままコマを分割して縦にしていますね。

3.トーンがカラー化を邪魔する問題
日本の横の漫画はほとんどが白黒とトーンで構成されていて、カラー化の際、トーンがあると全体的に暗い印象となります。以下ココナラで「ブラックジャックによろしく」の例があったので見てみると分かるかなと思います。

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(引用元 https://coconala.com/services/1045783 )

普通のwebtoonでは演出上そういうトーンを入れることはあっても、ほとんどのシーンでこのようなトーンがあるコマは見たことがありません。

4.レイヤーが分かれていない問題
コマを切る際、コマとコマにキャラクターや吹き出しがまたがっていたり、吹き出しをずらしたいけどその後ろが書いていなかったり、そもそも紙からのスキャンデータだと1レイヤーしか存在しないことになるので、切って縦に並べるだけでもかなり労力がかかります。


と、ここまで来るともう横の漫画を縦化・カラー化するな!と言わんばかりかと思いますが、これだけの工数をかけて、webtoonにするくらいなら描き下ろした方がいいと思えたりもしますし、そもそも目線移動や横や見開きで読む想定で作っているので、けしからん!ということかもしれません。

フーモアでは昔、自動コマ切ツールを作ったことがあり、技術的にも難しかったですが、いくつかの出版社さんや作家さんにこのツールがある程度できて話をしに行ったら、上記のような理由もセットで難しい旨をご指導いただきました。(賛同してくれた方もいましたが)

電子書籍向けに作られた横漫画、ボーンデジタル系は可能性が無くはないかも

電子書籍で売ろうと思っている作品は「漫画の縦スクロール・カラー化」は向いている可能性はあります。
最近電子書籍の売上が紙を超えて、漫画市場が伸びているというのはよく聞きますが、見開きがなく、1ページも3コマで吹き出しや文字も大きい漫画が多いなと思います。スマホで読むことを明らかに意識しているなと思います。
そういう作品は割りと「漫画の縦スクロール・カラー化」は合っているかもしれません。

kadokawaさんの「ゼロから始める魔法の書」は、元々はラノベで、コミカライズ(横の漫画化)されています。

最近kadokawaさんは既存横「漫画の縦スクロール・カラー化」をしており、以下のようになっています。

横だと1話の最後のページは以下ですが、

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タテスク化された作品は以下となっており、構成もしっかりと考えられている印象です。

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続々とタテスク化されているようなので、今後どのようになるか楽しみです。

おわりに

個人としては基本的にwebtoonはwebtoon向けに新たに描き下ろすのが良いと思っています。韓国でlezhin comicsがwebtoonのマネタイズに成功した2014年頃に散々多くの韓国企業が、「漫画の縦スクロール・カラー化」をやってきて、それから8年間まだヒットしたと聞いた記憶がありません。このnoteで書いた理由以外にもたくさんあるようですが、とある大手出版社さんがビッグタイトルの「漫画の縦スクロール・カラー化」をしたけど全然ダメだった、という話も聞いていたり、まだまだ権利的にも難しいところもあると思います。

ましてや横で読む想定で作った横の漫画を演出意図も変わってしまうようなことを許可できない漫画家さんも多いと思います。ガラケーで漫画が読めるようになった時、コマを切るのに反対だった方が多かったそうで、ブックサーフィンと言うかたちで、横の漫画の視線移動を活かした見せ方になったと聞いたことがあります。結果電子書籍のガラケー市場ができて(当初はアダルトが多かった)、どんどんと電子書籍化の波が訪れました。

「漫画の縦スクロール・カラー化」も、それをしたら「売れた!」という実績さえ出れば、一気に同様のことが起こるかもしれませんし、「漫画の縦スクロール・カラー化」に相性の良い作品というのがあるかもしれません(ボーンデジタル系など)。


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フーモアはグローバルwebtoonスタジオとして最新かつ最先端の情報を持ちながらwebtoon制作をしています。このような環境で働けるのはある意味でチャンスだと思っています!是非クリエイターの方々のご応募をお待ちしております!

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