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NAVA 導入・基礎編

・Ediカテーテルと横隔膜電位について


横隔膜電位(Edi)の波形


①新生児の呼吸様式
まず、はじめに新生児の呼吸様式とEdiについてお話します。
Ediは前回、お話した通り横隔膜電位のことを指します。NAVAではこの横隔膜電位をトリガして人工換気を行います。
新生児の呼吸様式は成人と比べて、浅い呼吸や深い呼吸、無呼吸や多呼吸といった呼吸が入り交じっています。(Ediの値も同様に変動する。)
そのため、吸気圧や吸気時間、呼吸回数が患児に合わせて変動するNAVAが有効と言えます。

新生児と成人の呼吸様式

②Ediの数値
Ediの正常値についてお示しします。

Edipeak 5~15μV(吸気努力の指標)
           早産児では5~10μV
Ediminimum 1.0μV以下(PEEPの指標)

Edipeakは先程のピンクの波形の頂点になります。あかちゃんの吸気努力の指標になります。高ければ高いほど、吸気努力があり、横隔膜は収縮しています。低ければ低いほど無呼吸または弱い自発呼吸と捉えられます。
Ediminimumは先程の波形の一番低い数値になります。これは呼気時の横隔膜の緊張を表します。この値が常に高いとPEEPの設定が低い可能性があります。

③Ediカテーテルの挿入位置

Ediカテーテルと横隔膜の位置

Ediカテーテルは食道内に留置し、横隔膜電位を読み取るために使用されます。このカテーテルの電極が画像の③(横隔膜)の位置にあり、電位を読み取れる場所にあることがNAVAでは大事になります。

カテーテル位置確認画面

SERVOのタスク画面、Ediカテーテル位置からカテーテルの位置が確認できます。(心電図波形を上から1波形、2波形と呼んでいます。)
挿入長は計算ツールより、カテーテルの選択をした後、患児のNEX(鼻→耳→剣状突起)を計測し、挿入方法(経口か経鼻か)を入力後、おおよその長さが表示されます。

Ediカテーテルの選択
500~1500g→6Fr49cm
1000~2000g→6Fr50cm(身長は共に55cm以下)

(挿入位置の留意点)
・強調ライン(ピンク)が2、3波形にあること
・1波形のP波、QRS波が大きい波形であること
・4波形のP波が消失していること

カテーテルの位置は心電図波形によって決定されます。
1波形はカテーテルが心臓に1番近い電極で見ているのでそれぞれの波形が大きく出ます。
4波形はカテーテルが心臓から1番遠い電極で見ているのでP波は消失し、QRS波は小さくなります。

※Ediカテーテルを挿入して位置を決めている間は、SIMVモードが望ましいです。NAVAモードでもバックアップは入りますが、あかちゃんとの同調をしてくれないため、オススメしません。

・NAVAで使用される用語

NAVAを行う上で飛び交う用語について説明します。
①NAVAレベルと供給圧
NAVAレベルは補助レベルのことをいいます。Edipeakに合わせて設定を変更することが多いです。
補助レベルと言われても何のことか分からない人も多いと思いますので、ここで供給圧について説明します。

NAVAにおける供給圧(最高気道内圧)は、

Edi(peak-minimum)×NAVAレベル+PEEP

になります。よって、NAVAレベルはEdiの値に対してどれくらい補助するのか?といったものになります。

(例)Edipeak=10μV、Ediminimum=0.8μV、NAVAレベル1.5μV/cmH2O、PEEP6cmH2O

(10-0.8)×1.5+6=13.8+6=19.8(20)cmH2O

NAVAにおける供給圧は式を見ればわかる通り、Ediの値が大きければ大きいほど、供給圧が上がってしまいます。
そのため、アラーム設定の供給圧上限アラームにて供給圧を制限します。
※設定した供給圧上限アラームから-5cmH2Oの圧まで制限されます。

NAVAレベルの調節は供給圧に影響するため、非常に大切になります。
過剰なNAVAレベルは補助が強すぎて、あかちゃんが呼吸をサボってしまい、Ediの値が低く出る可能性があります。
低すぎるNAVAレベルは、Edipeakが高く表示されることがありますのでNAVAレベルを上げることをオススメします。低い状態で換気が十分行えていれば抜管を考慮してもいいと思います。

②無呼吸時間
Ediの値が低く、SERVOが無呼吸と判断してから何秒でバックアップを入れるか?といった設定値になります。
たとえば、自発呼吸を40回していれば1.5秒に1回は呼吸をしてることになるので無呼吸時間は1.6秒以上から設定するのが望ましいと思います。当院では2秒で始めてることが多いです。

短すぎる無呼吸時間は、バックアップの回数が増えてしまいNAVAの良さを発揮できない可能性があります。
長すぎる無呼吸時間は、なかなかバックアップが入らず、患児が苦しくなる可能性があります。

そのため、無呼吸時間はとても重要な設定になると思います。

③バックアップPC
バックアップ換気中の⊿Pになります。abovePEEPの設定値になるので注意が必要です。
SIMVの時と同じ設定値のことが多いです。
NAVA中のPIPより少し高い圧に設定してることが多いです。

④バックアップRR
バックアップ換気中の呼吸回数になります。
これは、設定した回数を行うのもでは無く、バックアップPCの頻度と考えています。
バックアップRRを40回と設定すれば1.5秒に1回のバックアップ換気が得られ、50回と設定すれば1.2秒に1回のバックアップ換気が得られます。
バックアップ換気中にdeSpO2することが多ければ無呼吸時間やバックアップRRを短くするなどの調節が必要と考えます。

⑤バックアップTi
バックアップ換気中の吸気時間になります。
これもSIMVと同じ設定のことが多いです。

⑥バックアップΣ/%
バックアップΣ
はバックアップを何回行ったか?といった数値になります。
バックアップ%はバックアップの割合になります。

Σが多く、%も多い→無呼吸時間が短く、無呼吸も多い可能性
Σが少なく、%が多い→無呼吸が多い可能性(ほぼ無呼吸)
Σが少なく、%が少ない→ほとんど自発呼吸により換気できている

といった指標になります。

バックアップΣと%のトレンド


トレンドで見れますので是非、活用していただきたいです。

⑦Ediトリガ
Ediのトリガ感度になります。0.5のことがほとんどで、基本的には調節しません。

⑧トリガ
フロートリガまたはニューマティックトリガのことを指します。
1回換気量が10ml以下の場合、Yセンサを使用しますが、Yセンサ使用中でのトリガ感度になります。フロー波形や気道内圧波形でトリガしてしまっている場合(グラフィック波形の白線)、この値を鈍くする必要があります。
当院ではNAVAでの換気を活かすために-5で設定しています。


以上で、
NAVAの導入〜基礎についてお話しました。
至らない点や説明しきれていない点も多々あるかと思いますので、次の機会にお話できたらなと思ってます。
質問等々、お待ちしております!!!
明日からの新生児NAVA管理にお役に立てれば幸いです。

あかちゃんまん👶🍼

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