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感情論で読み解くパルワールド

2024年1月19日にリリースされ、SteamやXboxでプレイ出来る「モンスター収集サバイバルオープンワールド」ゲーム、パルワールド。発売以来物議を醸しネットでの議論も熟してきたパルワールドですが、この投稿では「感情論で読み解くパルワールド」と題し、ゲーム評論に関しては素人の筆者なりにパルワールドを取り巻く感情の流れの一端を読み解いてみようと思います。

今回のテーマは「パルワールドとポケモンと動物愛護」パルと呼ばれるモンスターキャラクターの虐待を嘆く声が聞かれたパルワールドですが、その際に比較されるパルワールドとポケモンを動物愛護という観点で見た場合にどういった問題があるかを考えます。



・ポケモンと動物愛護


2012年の10月ごろ、国際動物愛護団体PETAが「ポケモンは人間に虐待されている」という主張を始めました。
同団体の主張は「ポケモンというゲームはポケモンをボールに閉じ込め戦わせることでトレーナーが虐待をおこなっている」というものです。
PETAという動物愛護団体はたびたびこういったパフォーマンス色の強い主張を展開する団体らしく、当時のネットでは失笑の声も多かったようです。

もしあなたがこの主張を耳にしていたら、どのように反論したでしょうか。
当時のネットでは「いやゲームだし」という反論が多かったようです。
当時、任天堂の広報の方は「ポケモンのテーマは人との共生、絆です。それが多くのファンの皆様に支持されてきた本質的なことですし、みなさんもそう理解していただいていると思っています」と話していたそうです。
しかしトレーナーがポケモンをボールに閉じ込め、自分の好きなタイミングで戦わせ、またボールに閉じ込めているのは事実な訳です。前情報無しに聞かされたらそれが絆による共生とはとても思えません。

ポケットモンスターはもともとゲームボーイのゲームです。ポケモンをボールに閉じ込めるのもゲームの都合であって、実際の動物をボールに閉じ込めている訳ではありません。だったら、ネットの声と同様に「これはゲームですから実際の動物とは関係ありません」と答えれば良かったのではないかと思います。

しかし任天堂はそれをしなかった。
その理由は当時の任天堂の販売戦略にありました。

・ポケモンとキャラクタービジネス


ゲームとしてのポケモンは1996年に最初の「ポケットモンスター赤」「ポケットモンスター緑」が発売、その後ハードを移りながら続編やスピンオフ作品が出続け、最新作の「ポケットモンスタースカーレット」「ポケットモンスターバイオレット」が2022年に発売、その後の有料追加コンテンツ「ゼロの秘宝」の販売も好調と言えます。
しかしゲームをあまりしない方にとっては、ポケモンといえば「アニメのポケモン」なのではないでしょうか。

アニメとしてのポケモンは1997年に第1話が放映され、1998年には映画も大ヒット。アニメのポケモンも続編や映画の放映が続き、最新作が2023年から現在も放映中です。
その間グッズやコラボの商戦も続き、今や累計で13兆円もの経済規模を誇っています。

アニメは当初からサトシとピカチュウの友情がテーマだったようで、第1話ではピカチュウを手懐けようとするサトシとそれに抵抗するピカチュウの反目が描かれていました。
ポケモンとトレーナーの友情。これは原作の「ポケットモンスター赤」「ポケットモンスター緑」ではほとんど存在しない要素でした。アニメ化に当たってゲームをアニメのストーリーに仕上げる必要がありその過程で生まれた設定のようです。
しかし、この追加された設定は販売戦略にプラスに働きました。ポケモンのマスコット的な可愛いデザインと美しい友情の物語が合わさりかつてない規模のヒットを生み出したのは前述の通りです。

キャラクタービジネスとして当たった以上、任天堂や株式会社ポケモンとしてはキャラクターとしてのイメージを崩すことは出来ません。そういった事情が広報の方に「絆による共生」を語らせたのではないでしょうか。
また著作権やパクりが問題になるのもキャラクタービジネスの文法によるものです。キャラクターとして売り出す際に似たものがあると困るという話であり、ゲームとして売り出す分にはパクりパクられ切磋琢磨するというのはいつもの事です。

そしてキャラクタービジネスとして躍進する一方で、ゲーム側はあまり無かった要素との齟齬を埋めるために、後付けでポケモンと人間の共生の設定を追加していきました。
しかし、ゲームの根幹の構造が変わらない以上、動物愛護団体に突っ込まれてしまうような「ポケモンのゲーム的な扱い」は変わりません。ポケモンと触れ合う要素は追加されたものの、絆による共生をしているはずのポケモンをボールに閉じ込めて戦わせている現状は同じだったのです。

・パルワールドと「マタギ」的共生


ではパルワールドはどうなのか?それこそもっと酷い虐待をしているのではないか?
確かにパルワールドでパルは人間のために働き、餌をもらい藁のベッドで寝て、狩りに連れて行かれて戦わされ、時には食べられてしまうという扱いを受けています。
しかしそれってごく自然な動物との共生の仕方なのではないでしょうか。
古来より人間は動物を生活のパートナーとして、飼育し、使役し、時には食用にしていました。果たしてそこにまるで愛情が無かったと言えるでしょうか。

パルワールドでは夜中に気性の荒いパルに囲まれてしまえばそのまま襲われて倒れてしまうこともあります。決して人間に虐げられるだけの存在ではありません。そしてゲーム内の強さから言って、そのようなパルと対等に戦えるのもやはりパルなのです。
拠点を自由に動き回り、人間に力を貸してくれるのもパルです。時には表情豊かなリアクションでプレイヤーを和ませてくれます。
共に狩場を走りまた恵みを授かる。プレイヤーキャラクターの風貌も相まってその共生の姿はマタギの様にも見えます。
もちろんパルを兵器にする要素もあります。しかしそれは絶対にしなければいけない訳ではありません。パルを兵器にしなくても十分にやっていけるゲームだと自分は思います。

さてここまで論じてきて、あなたはモンスターの扱いについて問題を抱えているゲームは間違いなくポケモンよりパルワールドの方だと言えるでしょうか?単に面白いから、売れているから良いゲームだと言っている人しかいないと思いますか?本当に?

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