産後、平和.予兆.大パニック

●産後0日目:小饅頭出産当日。
お産の最後の方は眠り産になっていたもので、陣痛中以外は寝てた。
なんなら小饅頭がズルズルっとゆっくり出てくる時も痛いながら夢うつつというか朦朧とした状況だったため、生んだ実感や達成感よりも陣痛からの解放感でハイテンション。
分娩台で朝食を食べ、夫は帰宅し、よく分からないうちに病室に戻って寝…られないくらい頭キンキンに冴えてて休息できず。
初授乳「赤ちゃんだあああ!小さいなぁ!!!」
3時間後2回目の授乳ではやや疲労感と冷静さが出てる。
むしろ赤ちゃんに対する関心は減ってたんじゃないかな。
「えっと、私が産んだんだね。わー、赤ちゃんだ。れーれー言うみたいに泣いてる。この子のお母さんどこー?あ、わたしか」みたいなフワフワした感じ。赤ちゃん出てくる時ほとんど寝てたから、気付けば産まれてて実感のないままスタートしたような感覚を覚える。
そこから夜まで同室するも、新生児の初期って本当に寝てるのね。写真撮りまくって「あー、赤ちゃんだー。産まれたて、抱っこし放題。私が産んだのか、だから私と2人っきりで預けられてるのか。」と。ただ我が子という実感はなく、ただ赤ちゃんとしての可愛さを感じるのみ。
特別な感じはなく、他の赤ちゃんに対する可愛らしさと同じ。
「我が子ってもっと特別可愛く感じる物だと思ってたけど、多分みんなこれくらいの可愛さなのかな。」ということで納得させる。
初めてのことだもん、仕方ない。そう言うものかと思った。マジで。
ただ、オキシトシンに当てられて、我が子に対してメロメロにラリってる自分を想像してたので、それを味わえなくて残念だと思ってた。
「実際以上に良いように想像してたなぁ。こんなもんなのか。」と。

夫はすでにメロメロ。看護師さんにおくるみで包まれてれば「竹に入ったかぐや姫みたい」と感想を述べる(私にはチマキの親善大使程度にしか見えてない)
ラリってない私としては「かぐや姫はさすがに盛りすぎな」と夫の感想を疑っていた。

●産後1日目:日中は同室。全身の筋肉痛が現れる。特に変化なし。我が子としての実感は未だなし。
入眠困難は継続。
産後初のシャワー浴が気持ちいい。全身でシャワーの温感を噛み締める。
しかし陣痛中に浴びたシャワー浴は違法薬物かと思ったくらい気持ちよかった。
産院からのアロママッサージのプレゼント。マッサージ開始10分以内で寝落ち。すんごい気持ち良かったから最後まで起きて噛み締めたかった。無念。

●産後2日目:日中のみ同室。泣き止まない時間発生。
「まあ仕方ねーか、赤ちゃんだし」と思って、なんとなくしつこいくらいお腹に聞かせてた音楽(CHAGE&ASKAの名曲)をふざけて聴かせてみる。
泣き止む(多分偶然)
「私本当に人間をお腹に入れてたんだ」と思う。
「ああ、この赤ちゃん入ってたのかな、じゃあなんであんな馬鹿みたいに働いてたんだろう、もっと妊娠期間を楽しめば良かった。もっとお腹に話しかけて、妊婦さんとしての時間を噛み締めておけば良かった。なんで妊娠してないような気持ちで無理してたんだろう」と思って涙。
一時的な情緒不安、発生。
「あーこれがマタニティブルーズ」と脳みその冷静な部分で考えながら、涙を引っ込め授乳室に向かう。

日中のみ同室の予定で、夕方赤ちゃんの預け開始の授乳時間に「今夜は授乳時間に授乳室に通おうと思います!」と行動計画を発表。
すぐさま「このまま連れて帰って良いよ!授乳時間になったら一緒に来てね!」と修正が入り、ノーと言えない日本人の代表としてそのまま同室開始。/(^o^)\ナンテコッタイ

●産後3日:見事に授乳で寝不足。
良いのか悪いのか、起き上がるのがしんどすぎて寝るたびにあやしてたら気付けば添い寝で寝ていた。ベットから落ちてなくて良かった。
添い乳はまだ習得してない。
夕方、毎日欠かさない夫の面会、その日も変わらず娘を抱っこし30分(1日に可能な面会時間)を潰しかけ、帰り際に「出張の日程がわかったよ、○○日からだいたい○○日まで。」と報告を受ける。
おいおい、当初の予定より早いやないか。1ヶ月までは出張なさそう言うてたやないか。

生後3週間の乳飲み子を抱えて母子家庭?
タイミング悪く、連日のように2歳児の熱中症(長時間自宅に放置)で死亡させてしまった事件の詳細についての報道番組を目にしていた期間。

ああ、私はきっとこの子を殺してしまう。

そう思った途端に身体中の血液が冷え切り、頭が一気に冴えだし、主張も意思疎通はおろか、寝返りもできない赤ん坊が目の前にいる。
一切の抵抗が出来ない赤ん坊をいろんな手段で虐待する方法が頭の中に浮かんでしまう。
えげつない手段で熱中症に追い込む方法だけでなく、扉の隙間、洗面台、ドライヤー、机、椅子、目につく全ての物が赤ん坊に危害を加える凶器に変化して見えてくる。
それらを使って虐待している自分の姿が連想される。

赤ん坊に対して加虐心なんて一切ないのに。
赤ん坊の泣き声をうるさくも感じてないのに。
望んで授かった、待望の我が子のはずなのに。

赤ん坊と2人きり。たぶん睡眠時間も短くて、それでも容赦なく泣き出す赤ん坊と密室。誰かの目は届かない。

自分で自分が1番信用できなくなった。

虐待する自分の姿を想像できる、そんな発想ができるということは、そういうことを実行してしまう恐れがあるからなんだろう、きっとそうだ。

息ができないくらい泣いて、大声で泣いて、止まらない。時間はすでに夜間帯。
スタッフ数も最小、申し訳ないと思いながら、自分の情緒を制御できなくてナースコール。
すぐに看護師さんが飛んできてくれた。

15分くらい話を聞いてくれて、地域の保健師さんとすぐに連携すると約束してくれた。
「明日退院だけど、だからってすぐに私たちと切れるわけじゃないから頼ってほしい。お家に行くことは出来ないけど、保健師さんが行ってくれるように相談するね。○○さんが心配していることが現実にならないように出来る限りのことをしていこうね」と優しく話してくれた。

胃袋がひっくり返るんじゃないかと思うほど泣き通した。

●産後4日目:退院。
私はこの子を殺してしまうんだろうと絶望しながら家に向かう。

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