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特異点『Vultures 1』~カニエウェストとPlayboi Carti~

日本時間2/10 17:00頃
Vultures 1解禁!!!!!!!
なんかTIDALで聴けるようになってる→Apple Musicにも来てる→Spotifyは!







というわけで2024年になってもファンダムを怒らす才能はピカイチなカニエ・ウェストさんでした。(1日遅れでSpotifyでも解禁済)


 3ヶ月前、新アルバムを出す告知が出た時は「あーはいはい、いつもの出す出す詐欺ね」という感じだった(実際このアルバムの前匂わせていたYesukeは出なかったし...)。それだと言うのにさらっとアルバムは公開。2月8日と9日のリスニングパーティー後48時間以内に公開されることがIGで知らされその60分後にまさかの一部サブスク解禁へと至った。TL上はリスパ時点からの熱気が公開と同時にさらに加速、SNS時代を象徴するかのように公開から3時間経過時点でYeezus、The Life Of Pabloと並ぶ傑作であることが大部分での共通認識となった。
 今回初めてリアルタイムでプロモーションからアルバム解禁までの道のりを観察する事になったが、資金力とチームのデカさからなるものとはいえ、ここまでの規模と完成度で魅せられては2024年の空気感が早くもカニエとTy Dolla $ignにジャックされたと言っても過言では無いように感じる。


Playboi CartiとTravis Scottにみる勢力図の現在

 ここから先は完全に僕個人の主観による見立てになるが、カニエの忠実な弟子ともいうべきトラヴィスの立ち位置が後輩であるCartiに奪われつつある。

There is no UTOPIA without Kanye West. There is no Travis Scott without Kanye West. There is no road without Kanye West.  
                                                                                         by Travis Scott 

2023年 Circus Maximusツアー時のカニエとのステージ上でのセリフより

 めちゃくちゃいい言葉だ。現代のHipHop並びにポップミュージックが何らかの形でカニエに影響を受けていると言われる状況下で去年聴いたこのセリフにとても感動したのを覚えている。だからこそDONDAの模倣で終わってしまったUTOPIAという作品を、僕はいまいち凄いと思えなかった。カニエが作った原曲の使用が3曲、プロデューサーとしてカニエ参加曲が3曲。作品の半分がカニエで染まっている上そこに革新性や目新しさはあまり感じられない。カニエという存在をオマージュなりパクるという行為即ち、新しい価値の創造・シーンへのアンチテーゼをもって批判することである。したがって彼のとった行動は"真似る”とも言えない"なぞる”といったほうが近い。

 一方で同じオタク仲間のPlayboi Cartiは、カニエの模倣に終わらず最近は新しい方法を模索し始めている。これから公開されるであろう新アルバムI AM MUSICの先行曲では十八番であるマンブルラップとシャウトを封印。甲高く細い声とチルいビートに舵を切り新たなフェーズに入ったことを予感させた。今までのマキシマムでXXXTENTACIONを受け継ぎ発展させた破滅~自殺願望を行き来するラッパーはもういない。

 Spotifyリスナー数も2023年5月の1700万人から1年足らずの現在、4400万人を記録(2024年2月)。自レーベルOpimのファッション・音楽面の拡大による面も大きい。ここ1年でフォロワー数・シーンへの影響力共にトラヴィスと2大巨頭を張るまでに成長している。

そんな2人だがカニエの寵愛をより多く受けることになったのは現在Playboi Cartiのようだ。先のリスニングパーティーでの出番や、Donda・Vulturesでの参加曲の数を見ると、どうしても興味の対象具合がわかってしまう。ラッパーとしてとびきり優等生なトラヴィスだが、ことカニエに認められゲームチェンジャーとなるかどうかは別問題だ。

VULTURES Listenning Party New York

まとめ


 タイトルに特異点なんて仰々しい言葉を書いたが果たして本当だろうか。そもそも現段階でこれが特異かどうか判断できるはずもなくこれがスタンダードになる可能性だってある(そんな事はありえないだろうが)。とはいえこれまでのアルバムより格段に文脈が読みずらくなっていることは明らかでありGraduationが出た当時の「エレクトロとの融合!ビート革命だ!」で済む時代では無くなった。そう簡単にこれが要石になるかどうか判断できるものではなく芸術の域に達したこのVulturesという作品に対しどう評価すれば良いか僕は決めかねている。音圧を上げないと全体像が見えてこないミックスにアルバム全体をベールのように包み込むくぐもった質感、ホワイトノイズのように絶妙な邪魔をしてくる。JPEGMAFIAという異能プロデューサーとの融合、母から娘主体のストーリー、Dondaを洗練するという偉業、Playboi Cartiの躍進。これらが今後どのように作用してくるのかは全く読めない。ただ一つだけはっきりと言える。
 カニエとPlayboi Cartiが動く2024年が退屈なはずはないだろう。


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