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2024年『カム フロム アウェイ』日本初演 東京公演初見感想


はじめに

 Come From Away(以下"カムフロ")との最初の出会いは、コロナ真っ盛りの頃に海外の配信?か何かで出会った「Me and the Sky」。英語のままだし字幕も無かったのに、流石ミュージカル関連だからかすごい集中力で自分のリスニング機能が働いたらしく、「なんて素敵な歌/歌詞なの!!!!!!!」と画面に釘付けになってしまい、急いで手元のメモに"Me and the Sky/Come From Away!!”と書き殴ったのが始まり。
 実話を元にしていて、10人ちょいのcastで100人近くを入れ替わり立ち替わり演じ分けて…って絶対私好きそう!!面白そう!!これ日本でやるのいつだろう?!!!やったら必ず行く…!!!!!!となったのが確か2021年頃。
 そこから2年あまりでの日本初演の解禁。「なんですかこれは帝劇コンですかフェスですか」と言いたくなるようなスゴツヨのcastの面々に3度見して驚きつつ「チケットは、取れる、、、のか?」と首を傾げつつ、「取る。そして行ってMe and the Skyを聴く!!!!!」と向かったのでした。

この記事はネタバレしてます

 基本的に「後から読み返した時に自分で観劇後の興奮を思い出す用」に書いている意味合いが強いので、ネタバレが多いです。が、なんせ一回しか観ていないので、厳密な台詞・歌詞・立ち位置情報ではなく、あくまで私の記憶に残っている範囲です。

全体/音楽/演出

 群像劇がちゃんとしっかり群像劇になってて、普段主役を張ってる方々ばかりがひしめいてもちゃんと同じ強度(というのが正しいのか分からないけど)で比重が変に偏ることなく全場面進行してたのが「流石。。。!!」だった。「プリンシパルとアンサンブル」という構成がミュージカルでは大抵あるし、勝手ながら「個性がぶつかり合って舞台の上で物語に集中しづらくなったりしたら辛い。。。」という懸念があったものの、清々しいほど文字通り「入れ替わり立ち替わり色んな人にスポットが当たり、色んな立場からの言葉が語られる」構成が守られていて、この人数でそれが叶うって、脚本もだけど演出も演者もさすがのクオリティ。。。!と気持ちよく唸って観てた。 

 プログラムの対談によると、コロナ禍のBWで、出られなくなったcastの代わりに世界各地から(おそらく経験者の)castを呼んで上演したという話が
あるらしく(しかもあまり稽古をしなくても成立したって凄すぎる…!)、完全にこれは妄想ながら「全世界カムフロサミット」みたいのがあったら、同じ役をやった人同士「わーーあなたもあれやったのねー!」「あの場面のあれめちゃくちゃ大変だよねー!これとこれの早変わりとかねー!!」とか盛り上がったりするのかな…それってめちゃくちゃ楽しそうだなぁ…とわくわくしてしまったり。 同窓会…というと「同じ場で育った人の再集合」というイメージなのと、世界各地での上演ということで、同じ流派で過酷な修行を経て免許皆伝を達成した人同士みたいな一体感ありそう。

 Me and the Skyの歌詞、「Suddenly」ってどうなるのかなーと全然思い浮かばなかったのが「気づけば」になってたのは「なるほどー!」な自然さで満足。他にも亜子さんがひたすら工夫してなるべく自然にリズムに沿うように入れて下さった歌詞を耳で追いながら楽しめて、今回は3曲だけとはいえ待望の歌詞掲載もあり(!)、わぁああ歌詞読みたいですの要望がプログラム制作側にもじわじわと届き始めてる?!と嬉しい変化。

キャスト別感想(アイウエオ順)

安蘭けいさん

 私やっと久々に生のとうこさん(=安蘭さん)観てるー(涙)!!!!!と出だしからミーハーにうるうる。ダイアンの、スマートで(=賢くて)、サバサバした口調の自立した40代像に、「これですx2、とうこさんぴったりー!!!」とワクワクしつつ、輸入ミュージカルだしかなり脚本の設定に忠実だろうけどそれにしてもアテ書きか?となるほどのドンピシャぶり(島のウェイトレスさんとか、たった一言でももうあーーーとうこさんがとうこさん全開だー!!!となったり)。一番印象に残った、肩震えるほどツボだったのが、タラにキスするかしないかのシーンの「私(キス)しない。」の言い方で、ここでダイアンがこう言うのは想像に難くなかったけど(さらにいうと、「で、ニックとするんだろうなー」まで初見なのになんとなく想像ついたけど)、なんだろうこの場の盛り上がりを削ることなく&でもしっかりお騒がせしつつ(笑)甘酸っぱく展開させる流れのナチュラルさ!!と、再び「とうこさんのお芝居好きだわー。」を自覚する機会に。

石川禅さん

 かっこいい方が容赦無く自然に演じる冴えない(設定の)おじさんここに極まれり、と言う感じで、去年のアナスタシアでのヴラドは結局カッコよかったし、冴えないを突き詰めるとこっちに軍牌が上がるが何故それでもこんなに素敵なの禅さん…!!!!!と心の中でじたばたしながら、愛おしく楽しんだ。ステレオタイプなイメージを敢えて意識して脚本に書かれたであろう「イギリス人の仕事人間なおじさん」が、島での時間を経て豊かなその後の人生へのきっかけを手にしていくのが、本当に嫌味なく&いやらしさを感じさせることなく、でもいい具合に泥くさく(リアルで、変に物語用に美しく整えすぎてないと言う意味で)描かれていて、(これ編集してるのが6/29なのもあって付け足すと)2024年観劇における上半期ベストカップル賞の一つ。

浦井健治さん

 健ちゃんさんのお芝居って他の作品でも毎回そうなんですが、他の方だと「その台詞本気で言ってます?」って意地悪に勘繰りたくなる王道にホワイトな(正統派な)台詞が毎度疑いの余地なく本気に聞こえて話がちゃんと壊れないのが今回も見事で、ケビンTの真っ直ぐさが眩しく、バスの労働組合のリーダーとしてのワイルドさとの対比が随所で楽しめてお得だった。文字通り骨の髄まで良い人な役がなんでこんなに毎度期待を裏切ることなくハマるんだ…。やっぱり健ちゃんさんの他の役をもっとたくさん観てお芝居のゆるぎなさを確かめていかなければ!!と再認。

加藤和樹さん

 ボブー!!!!ガンダーに降り立った側の役の中ではおそらく一番感情移入しやすかった役。ニューヨーク育ちで警戒心が強くて、でもとっても純粋で、いじらしいまでに周りをよく観察しては都度真剣に振る舞いを試行錯誤してるかわいいボブが激ハマりで、客席で一緒に「ガンダーの人たち良い人すぎじゃん?!」と驚きながら沢山笑い、ガンダーの人からポジティブな影響を受けていく様子をうんうん、とにこにこしながら追いかけてた。
 セクシーな(!)機長役がまた最高のコントラストで(笑)、あ、私の知ってる加藤さんこっちで来た!!!とにやにやしながらオペラグラスを使い(心の中で「やー我々へのボーナスステージですね〜」と言いながら観てた/笑)、ラストにケビンTの新秘書として出てきた際は「更なるすごいの来た!!!!!」と精神的に絶叫だった(実際客席からひゃあああみたいな声があちこちから漏れてた…お察しします、じゃ無かった、私もその叫びに共感します、ってなってた)。

咲妃みゆさん

 フレッッッッシュ!!!なレポーター役と想定外の事態に翻弄されるCAさん役がどちらもすんなりハマってて、特にジャニスについては必死さやぼろぼろになりながらも仕事に真摯に食らいついていく様子にさすが嫌味がなくて、適材適所〜を実感。全員で入れ替わり立ち替わりナレーション的な台詞を入れる構成だったけど、それでもおそらくジャニスが担う比重が一番大きくて、他の役に輪をかけて口跡の良さや台詞の安定感が必要な役だったし、みゆちゃん適任。
 細かいところながら、「ジャニス!」って訳もなく&特に用もないのにダイニングでみんなが声かけちゃうのすごい分かるよ、一瞬でいいからこっちを向いてもらいたくなるの、めっちゃ分かる、、、とうんうん頷かせてくれる可愛さ(見た目だけじゃなく、なんというか、古文でいうところの「らうたし」みたいな、小さくて若くて大事に守りたくなる可愛さ)があって、すごつよが揃い並ぶ布陣の中にいい多様性を確保してた。

シルビア・グラブさん

 私やっとシルビアさん生で観てる…(涙)!!!!!!と、これまた話の展開と関係なくご登場を確認するなり勝手に涙。元々チケット取ってたのに行かれなくなってしまった本来のカムフロmy初日、せめて代わりに録画見る!!と家で荻野清子さんコンサート(WOWOW)を再生し、シルビアさんの歌う「いつかどこかで」(三谷幸喜さん作の『日本の歴史』より)を聴いてぽろぽろ泣いてたので、生のシルビアさんだぁーーー、ちゃんと今日はお芝居生で観られるんだぁあああと開演直後からすごい高揚感だった。
 ひたすら動物の安全と環境確保に努めるボニーの竹を割ったような清々しいストレートさ(思考も発言も/笑)と、動物たちへの声がけがとても板についていて、これも、、、アテ書き、、、?と輸入ものなのに何度も真剣にアテ書きを疑いつつ、お芝居として絡む対象が夫以外ほぼゼロでかなり一人芝居タイムが長いのに、素晴らしい満足感で、ほんと流石シルビアさん。
 プログラムを読んで仰天したのが、ビバリー(めぐさんが演ってらした機長)のアンダーがこの役という構造になってたらしくて、いくらシルビアさんだからってなんて過酷な?!え、アンダーも?!本役を持ちながらこの段取りが何百個もあるお芝居でアンダーも?!え、それ自動的に20人分くらいやるってこと?!と。。。シルビアさんの機長もめちゃくちゃ似合っただろうから、そのうちどこかでMe and the Skyを聴ける機会が来るといいなぁ。。

田代万里生さん

 「全員がそれぞれ一人何役も演じる公演」と聴いたとき、真っ先に「まりまりさん(=田代さん)の役が複数一度に観られるってもうそれ絶対に元が取れる作品じゃん!!!!!!」と私の中でのチケット代に対する躊躇を一気に消し去って下さったのがこの方。さぁどんな振り幅で?!と原作未予習ながら期待値大で着席したにも関わらず、「まさかここまで完全にかけ離れた役のオンパレードで来られるとは…!!!!!」と、嬉しさで目を見張る程だった。台詞を伴う役&お話における進行上の比重で考えた時に一番強烈に離れた個性の組み合わせを担ってたのがまりまりさんのケビンJ+その他役だったような(エジプト人の料理人と秘書)。演じ分けって言葉について尋ねられたら紹介したくなるくらい、気持ちいいほどの匠の技で、いいもの観たーーーー!!!!という充実感だった。物理的には同じ体格/しかもほぼ同じメイク(だと思った…変えてらしたかもだけど私の席からはそこまで極端に印象変わらず)でここまで物理的にも印象変えて物語に溶け込めるってほんと凄い…と唸る楽しさ。あとはとにかくやっぱり間が最高なのと(コメディ要素があったから特に痛感)、どういう要素でどんな印象になるかをきっちり計算されて緻密に丁寧に舞台に現してらっしゃる感がすごく素敵で(こちらは料理人役のところで特に)、流石取材をきちんと(これまた流石まりまりさん…なルートで)されてたのをプログラムで読んで、あぁやっぱり好きだー…とじわじわ噛み締めて帰り道に。

橋本さとしさん

 あまりにもさりげなく色んな場面にて舞台の緩急の「緩」を担われてて、巧いって思わせない巧さってこういうことを指すんだな…と後から反芻。何回思い出してもいまだに「ふふふ」と笑ってしまうのが、帽子やメガネでくるくる演じ分けてらした「島の市長さん紹介」(笑)。これぞ演劇の醍醐味!な演出で、脚本通りなのだろうけど、なんとも言えない味が次々滲むのがほんと名人芸で、年齢重ねた時にこれがこの鮮やかさで出来る俳優になるには…とか(や、やる予定は私には無いのだけど)、つらつら考えては楽しんでる。

濱田めぐみさん

 機長めぐさんだったかー!!!!!!!と理解した時の嬉しさと期待と、それをしっっっっかり上回る観劇後の充実感。パイロットとしての前半のお芝居のかっこよさはもちろん、歌の中で描かれる彼女のキャリアや、電話の場面になる度に垣間見えるオンオフの切り替えがやっぱりとても自然で血の通った、物語にどんどん引き込む(引き込まれる〜とか感じる間も無く物語の世界に没頭させてくださる)お芝居で、今回も大満足のめぐさんだった。。。
 学校の先生タイムは妄想たくましい(なんか親近感/笑)キャラクターで、加藤さんの機長が出てきて照明がピンクになる度に、周りの他のお客さんと一緒にふふふふと思わず声を出して笑いながら楽しんだり。この系統のめぐさんのお役を観るのが初めてだったので、何故か照れに似た気持ちも沸き起こりつつ(ラジオとかで聴いてるかわいい感じの素の雰囲気と時々被って感じられて)、振り幅素晴らしい〜!!!と噛み締めた。

森久美子さん

 誤解を恐れず書くと、モリクミさんがcastに居て下さったおかげで初めて、本来この作品がとても意識したはずの国際色の豊かさ、リアリティみたいなものが強く出せたんだろうな、という感じだった。同じ人種のcastだけで構成しながら「世界中から集まった人々を描く」ってもうすでに物理的な面で一定のハードルがあって、他の上演国でもそれはおそらく多かれ少なかれ同じように課題だとは思うのだけど、パッと全員並んだ時にあまりにも全員シュッとした人ばかりだと「ほんとに世界中からたまたま居合わせた人… なのか…?」という胡散臭さが出てしまうよなと私は感じてたので。モリクミさんの存在は、お芝居や声だけじゃなく、シルエットそのものにものすごい大きな意義があったなぁ、と感じて観てた。
 一番印象に残ったのはニューヨークで消防士をしてた青年のお母さん役で、ミュージカルではあんまり普段出会うことのない「すっきりしない」「ぐいぐい進展しない」場面における間や表情が逆にとてもリアルさを印象付けてて、ドキュメンタリーを観ている感覚が強まった。

柚希礼音さん

 ちえちゃん(=柚希さん)ってこんなに柔らかい雰囲気のお芝居がレパートリーにあったんだっけか!!!と新鮮に驚き、包容力あるみんなの生命線としての役がぴったりだった。プログラムによれば、どうもあのシーンについては「絶対に泣かないように」と厳しい演出があったらしいのだけど、私が観た際には電話のシーンでぽろっと涙が溢れてしまってて、「いや、そりゃこの先生なら泣いてしまうだろうな。。。」と逆に違和感なく私は説得されてた。他の日は違ったのか、もし涙が無かったらその時は逆にどういう印象になったのか、気になる。。涙が無くてもきっと、違う印象ながらすとんと腑に落ちるお芝居として成立してただろうから、やっぱり2回観たかった。。。

吉原光夫さん

 バスでみんなを連れて行く際の、のんびりとした方言風なイントネーションの場面が何故かめちゃくちゃ印象に残ってて、演じ分けの楽しさ、というフレーズをここでも。 舞台にいらっしゃるだけでなんでしょうかこのゴージャスさは!!と隠しきれない(って多分どなたも隠す意図はなかっただろうけど)存在感を放ち続けながらもちゃんと脇役パートが成立していて、改めて稀有な作品を客席で楽しめたんだなぁ…とじわじわ時間が経っても反芻してる。

アンダーの皆様

 そもそも、各castがあらかじめ最大10人近い人物を担当する上に、一つでもずれたら大惨事になるような段取り/キュー(次の台詞や動きのきっかけとなる合図をこう呼ぶそう)が山積みなこの作品で、4人だけでアンダーやるってもう指数対数的にとてつもないこと…と、観終わってさらに驚愕だった。あれを?たった4人でサポートしてらしたって途方もない。。。
 castの方々自身も「カムフロ出て/作品自体きっちり成功しました」って経歴が今後途方もない力を持つだろうなと思う一方、アンダーでカムフロ支えてましたってものすごいパワーワードだよな…と感じ、元々お名前はよく拝見してて、舞台からも素敵な時間をいただいてた方々が半数ながら、カムフロアンダーメンバーとしてしっかりお名前が頭に刻まれた、上條 駿さん、栗山絵美さん、湊 陽奈さん、安福 毅さん。

終わりに

 下書きを準備したのが3月末、ちゃんと編集して書き上げたのが6月末(!)というめちゃくちゃ長丁場で(の割にひたすらにミーハーな内容…)、もはや3ヶ月経っても鮮明に記憶に残っているものの回想録に近いものの、なんとか書き出せて満足。。

 大切なお時間でここまで読んで下さり、ありがとうございました!!!

参考にしたもの

公式HP

Apple Musicにあるオリジナルサウンドトラック

公式プログラム(電子版)


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