人肌
人肌が好きだと思う。
小さい頃から親によくくっついていた。
年子の妹がいたことも影響していると思う。
小学生の頃は友達と手を繋いで帰ったり、
中学生になると手は繋がなくなったけど、
友達と腕を組んで歩くのが好きだった。
人肌が好きだと自覚したのは、高校生の頃、
「ハグはストレスを軽減するんだよ」
と友達が教えてくれたときかもしれない。
同じ部活の他クラスの子で、
たまたま掃除場所が一緒になった。
私たちは花壇の清掃係で、毎日15分、
校舎の前の花壇の雑草を抜いたり、
花がらを詰んだり、水やりをしたり。
掃除時間は「無言作業」と先生たちには口うるさく言われたけれど、
花壇の担当をしていた用務の先生は許してくれていて、
おしゃべりしながら花の世話をするのが楽しかった。
私が何か嫌なことがあって愚痴を言ったときだと思う。
友達が「ハグはストレスを軽減するんだよ」と言って、ハグしてくれた。
確かに、幸せな気持ちになった。
それから、部活や進路でしんどいとき、
何度かハグしてもらった。
友達は私より背が高くて、肩の上から手をまわしてくれる。
私は友達の腰に手をまわしては毎回「細っ」と思いながら、
友達の鎖骨のところに顔を埋めた。
大人になると、そういうふうに気軽にスキンシップを取れる人はいなくなった。
まして、ソーシャルディスタンスとか言われる時代だ。
その反動で、実家に帰ると、家族にべたべた接触してしまう。
妹は中高生の頃は、喧嘩ばかりでバチバチやり合っていたけど、私が家を出てからは、かなり優しくなった。
私がハグしても、ちょっかいを出しても受け入れてくれる。
今日、家に帰る前にハグしに行ったら
「ずっとここにいていいんだよ」
と言って、離してくれなくなった。
「じゃあ、養ってくれる?」と言ったら、
無言で開放された。切ない。
誰もいない、薄暗いアパートに帰ってきた。
一人は楽だけど、やっぱり少しさみしい。
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