インバウンド需要の行方と街のカフェ事情 アイディアのタネvol.7
久しぶりのスカイツリー訪問と消えた行列店
この世の中で淘汰されるものと残るものの違いはなんだろうとよく考えます。つまり、一時的なトレンドではなくて、もっと、本質的に普及するものとは。
今日はアイディアのタネというよりは、そういうことについて考えさせられた話です。
先日、といっても昨年の9月ですが郵政博物館にいこうと、友人とスカイツリーのある東京ソラマチにいきました。
数年ぶりのスカイツリー。博物館見学後は押上周辺を散歩して、近くのカフェでコーヒーとスイーツを楽しもうと思っていました。かつて押上からアクセスの良いところに住んでいてたびたび遊びに行っていたので、その頃の記憶を頼りに店を調べました。
ところが、です。
候補に挙げていた6つのカフェのうち4つが閉店していました。
そりゃあコロナ禍でインバウンド需要も日本人の観光客も減って、飲食店は非常に厳しい状況だったのだろうと思うけれど。
でもあの頃あんなに並んでいた店が影も形もなくなるなんて、とショックでした。
スカイツリーができて間もない頃、私は押上に行くたびに小さな違和感というか危うさのようなものを感じていたのを思い出しました。スカイツリーのそばにあるだけで、世界で話題のスイーツが開店しただけで、大行列しているというか。
もちろん食べ物が美味しくないわけじゃないのですが、立地の良さや話題にされる情報の影に隠れて曖昧な印象がありました。
PRで行列は作れるけどずっと人気の店は作れない
PR会社にいた時に何人かの先輩に同じようなことを言われたのでよく覚えている教訓が、PRで行列は作れるけどずっと人気の店は作れないという話。
特に食系のPRに関する話でしたが、開店時の行列やテレビ露出の獲得なんてちゃんと仕込めば簡単なんだと話していました。だけどマーケティングPRでできるのは本当に一時的な話題作りにすぎず、そこからいつまでも人気が続くには中身が良くないといけないし、ちゃんとファンが作れないといけない。
その後、食に限らずあらゆるプロダクト・サービスにおいて広報の仕事を通じて嫌というほど思い知った事実です。
本質ってなんだろう。それは単なるモノの良し悪しだけではないような。
開店から今日までちゃんと人気のお店ですぐに思い浮かぶのはブルーボトルコーヒーです。
一号店が清澄白河にオープンする際、開店の行列に並んだ私にとって思い出深いお店ですが、2022年になってひさびさに行ってみたら未だに大行列!
テイクアウトは30分、イートインは40分ほど並んでやっと注文できる状況でした。
それでも待って店内で感じるこの空間の素晴らしさ、コーヒーのおいしさ、地元密着のフードメニュー、温かく丁寧な接客など、やっぱり好きだなーと、また来ようと思える心地よさであふれていました。
押上エリアで生き残る地元密着型のカフェ
話は戻ります。
結局押上エリアに行った私たちがどうしたかという話。
押上エリアのカフェの中で私がとても好きだったカフェは幸いにもまだ営業していて、そちらに伺うことができました。
東向島珈琲店というお店です。
ここはスカイツリーからは徒歩で20分以上かかるどちらかというと東向島駅や曳舟駅が最寄りの下町感あふれる古民家カフェです。
レアチーズケーキがおいしくて、奥の窓の外からは公園を見渡すことができ、子供を遊ばせている間に一服するのにもちょうど良い場所です。
特に飲食店においては地元の人や街にどう馴染み、愛される場所になるか、ということがとても大事だなと思います。
その上で、固定客だけでなく、新しい人に向けてもオープンであること。
私はカフェは媒体だと思っています。
特に個人経営のお店は作り手の想いの全てが五感で体験できる画期的なメディアだと思います。
届けたいものがそこに確かにあり、ちゃんと届けたい人に届いているかどうか、メディアとして機能しているかが長く愛される場になるかが大事なのかな、そしてそれは意外と稀有なことかな、と考えさせられた一日でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?