夜にしがみついて、朝で溶かして
クリープハイプの皆さんのインタビューやアルバムに対するコメントを読む前に、聴いた直感で書いているので、色々お考えと違う点があるかと思いますが、お許しください。
(1)料理
疾走感のあるイントロが、1曲目に来るこの感じ。聴いたときに、『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の1曲目『愛の標識』を思い出した。売れていくクリープハイプのメジャーデビューアルバムに未だにしがみついている私。歌詞の中の比喩表現や韻を踏んだ言葉で、気持ちよく音が流れていく。どこの部分を切り取っても「クリープハイプ」の曲だとすぐわかる。「尾崎世界観」の歌詞だとわかる。クリープハイプらしさが溢れたトップバッターに相応しい曲だと思った。
(2)ポリコ
この曲は初めて聞いたときに、すごく好きな曲だなと直感的に感じた。なんでかは分からない、理由はないけど好き。ベースから始まるの、久しぶりな気がする。この曲「汚れ」をテーマに作ってるとしたら、それでこんなにいい曲ができるなんて才能かー、、、、。サビが低い音程から入って高くなっていくのが気持ちいですね。「最近どう まぁ別に普通」という会話を入れるのも「足りない」「言わない」という「ない」部分にフォーカスを当てるのもクリープハイプだなと思った。語彙力が足りない。
(3)二人の間
愛の点滅に入ってたクリープを聴いた時も思ったけど、「これをテーマで曲を作ってください!」に対して想像以上のクオリティで曲を作ってくるクリープハイプ。ダイアンの津田さんの「ゴイゴイスー」出てこなくてマネージャーに怒られる感じも、ユースケさんが短大卒業してるのも面白くて大好きだから、このコラボは嬉しい!漫才は劇場によく見に行ってるのだけど、漫才師がその時のお客さんに流れる空気を読んで、その場で巻き込んで笑いに変えていくのが本当にすごいと思う。曲のタイトルにもなってる『二人の間』は何年も何十年もかけて「二人にしか分からない間」になっていって。相棒であって、漫才を生業にしている仕事仲間である、という漫才師の絶妙な空気感がすごく表現されている。
(4)四季
新卒1年目の私。4月なんて右も左も分からないので、本当に毎朝の通勤が憂鬱で、責任感に首を締められながら、それでもどこか掴まるところを探して、その取手を必死に握って落ちないようにしていた。「年中無休で生きてるから疲れるけどしょうがねー」から始まる歌詞に少し肩の力が抜けて、楽になれた。だから職場に着く5分前くらいから四季を再生した。「この季節になるといつも無性に聴きたくなるバンド」という歌詞で、クリープハイプは年中無休で聴きたくなるバンドだとかなんとか思いながら、重たい職場のドアを開けて出勤していた、私の相棒になった曲。
(5)愛す
「逆に」から始まる歌詞。捻くれてますね!この曲を初めて聴いた時、今までのクリープハイプの曲で初めて聴くテイストだなと感じた。音がすごく丸くてポップだけど、ポップで片付けられない何か。「肩にかけたカバンの捻れた部分がもどかしい 何度言っても直らなかった癖だ」の歌詞はすごい。尾崎さんは本当に、2人の関係性や生活感を間接的に伝える歌詞考えるグランプリあったら絶対初代王者。上沼恵美子に嫌われるけど、志らく師匠が高得点つけてくれると思います。 その後に続く「もう元に戻してあげられなくなるんだな 自分でその手を離したくせに」が切なさで心臓持っていきますね、ポップなのに。
(6)しょうもな
落ち着いた曲かと思いきや疾走感のあるイントロでそのまま力強く駆け抜けていく曲。「愛情の裏返しとかもう流行らないからやめてよ」の言葉の後に、言葉を裏返した表現があって、尾崎さんは本当に言葉で遊ぶ天才だと感じた。「だから言葉とは遊びだって言ってるじゃん」、、、「言ってるじゃん」、、、遊びなのね、、、聞いたことがないけど、、、、そういう言葉(だから…言ってるじゃん)を使っていつの間にか、歌詞の人物とずっと会話をしていたかのような、前から関係があるような気分にさせてくれるのも尾崎さんですね。「あんたに」「お前に」「てめーに」とどんどん口が悪くなっているのも、何かを伝えようと気持ちが昂っているのが伝わる表現だなと思った。なんか音楽評論家気取りでしょうもな。
(7)一生に一度愛してるよ
クリープハイプの初期の曲とそれに付随する思い出を思い出して、もうあの頃には戻れないんだねと思ったことのあるそこの貴方と、ここの私。尾崎さんは定期的ファンの気持ちになった曲を書いてくれるので、離れられないですね、ちくしょー。ファーストアルバムは私の青春なので一番聴いてる図星です。歌詞の中に散りばめられた昔の曲の歌詞は、ファンにとってはたまらない、宝探しのよう。「よくここまでついてきてくれました」と尾崎さんにご褒美をいただいているような気持ちになった。
(8)ニガツノナミダ
ソフトバンクのCMの曲。早くフルで聴きたいなーと待ち遠しかった。SNSやWi-FiスポットなどCM用に真面目に言葉を散りばめたあと、「やりました よくできました」と自分を褒め「30秒真面目に生きたから」とさっきまでのがCM用ですと言わんばかりの歌詞。そして思い切りの転調。かっこいい!真面目かと思いきやこういう遊び心を大切にしているのも、太客の心をグワっと持っていきますね。
(9)ナイトオンザプラネット
『夜にしがみついて、朝で溶かして』というアルバムのタイトルを胸にゆっくりグサグサ突き刺してくる曲。
「このまま時間が止まればいいのになって思う瞬間」が23年生きてきて何度かあった。夜にあった。お酒に酔って、好きな人の自転車の後ろに乗って家まで送ってもらった夜、好きな人の匂いを嗅ぎながら背中にしがみついた夜、何に酔っていたのかもう分からなくなっていたけれど、家に着いてとりあえずお水を沢山飲んで寝た。朝起きたら現実に戻ってて、寝なければよかったと後悔した思い出。私は酒癖が悪いので酔うと、好きな人にしょーもない話ばかりしてしまう。「巻き戻せば恥ずかしい事ばかりで 早送りしたくなる」そんな朝。でも思い出は所詮思い出だからしょうもなく感じた。
そんな夢の中のような夜を切り取った写真を、アルバムから引きずり出してきて、私だけ思い出しているようなそんな曲。
(10)しらす
アルバムに必ず一曲入ってるカオナシさんの曲。今回はどんなテーマなんだろう、と毎回カオナシさんの着眼点が楽しみな私。そして今回は『しらす』それだけでもすごいのだけど、「しらすのお目目は天の川」等歌詞の発想力。カオナシさんの頭の中が覗いてみたい。曲はどこか懐かしく、そして愛らしい。図書館の隅の方にある、小学生低学年ぐらいの子が読む小説と絵本の間のような本を読んだ時のような気持ちになった。尾崎さんのコーラスも毎回大好きです。
(11)なんか出てきちゃってる
会話形式で尾崎さんが話し合っているこの曲。偶然ネジが…なんのネジなんだろう…。「偶然」っていうのがなんか言い訳に聞こえて好き。ちょっとエッチな方に考えてしまうんですけど、違いますかね?違かったら考える余白作った責任とって尾崎さん!!
(12)キケンナアソビ
この曲のタイトルを見たとき「尾崎さん37歳になるんだから、危険に遊んでないで、そろそろ落ち着きなよ」と勝手に思った。「危険日でも」とかしょーもないことライブでほざいてるらしいじゃないか!女の敵だ!敵!
とか言いながら、ちゃっかり聴いてちゃっかりこの曲に魅了されています。女の子の半分?言い過ぎかな?3分の1ぐらいは「夢みたい」な夜を経験した後、朝になってふと「馬鹿みたいだあたし」と思ったことがあるのでは? ここで身体を許したら安い女と思われるとか、関係ないか、もうシたことあるもんね、と思った経験が自分の頭をぐるぐる回って変なところに刺さった。曲を聴いたあとは、なぜか尾崎さんに対して「もう少し遊んでいてほしいな」と思った。
(13)モノマネ
『ボーイズENDガールズ』は私にとってとても思い出深い曲だけど、それとは関係なかったとしても、私はこのモノマネという曲が好き。あと「シャンプー」っていいですよね。お風呂は何も隠せない場所だし、それに付属するシャンプーは生活感が出てとてもいい。。。その言葉から始まるのが2人の仲を表していますね。「幸せはすぐそばにあったのに、いつの間に見落としてたんだろ、、」という気持ちに勝手になって聴いてます。特に何もないけど。それぐらい曲に感情移入できる曲。「今もどこかで続いてるような気がして 探して」と探しているのがまた胸が苦しい。「全然似てない」からの尾崎さんのハイトーンボイスの気持ちよさ、音程の気持ちよさったら、すごい喉乾いた時に飲む麦茶みたいな、耳掃除でいいとこついたみたいな、生理的な気持ちよさがあって本当に最高です。
(14)幽霊失格
「そんな夜を一人で歩いてる」から始まるこの曲。「そんな夜」どんな夜なんだろう?とこちらの想像力を豊かにさせてくれる歌詞。「今日は珍しくまだついてくる」というのも普段があるからこその表現ですよね。この曲の歌詞はすごく文学味を感じるので、これから初めて聴く方は、ぜひ聴くだけでなく活字で読んでいただきたい。先程の『愛す』で出てくる癖「肩にかけたカバンの捻れた部分がもどかしい 何度言っても直らなかった癖だ」に対して、今回は「座って用を足す癖 今でもまだ直らないまま つくづく犬みたい」と同じ癖だけど、「言っても直らない『愛す』」に対して、「しつけた(直させた)ことを守っている『幽霊失格』」癖ひとつとっても違いがあって面白いですね。
(15)こんなに悲しいのに腹が減る
この曲はイントロで胸がギュッとなった。イントロのギターリフもそうだけど、曲中のギターいつもと違うエフェクトがかかってて、それがすごくいい。すごく壮大な雰囲気を感じます。この曲をCDJの最後に聴いて「今年も終わるなー」と感慨深くなりたい。「生きたい生きたい死ぬほど生きたい」という歌詞が尾崎さんは変わっていないんだなと太客たちを安心させてくれます。『風にふかれて』の歌詞で「君はまだ生きる」ように『待ちくたびれて朝がくる』ように。どんなに苦しくても、辛くても最後は明るく続くように描いてくれる。尾崎さんの根の人の良さが出てますね。大好きです、これからも。聴きたい聴きたい死ぬまで聴きたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?