ずっと分かりたかったこと

コントを見るのが好きです。
映画もドラマも演劇もラジオも小説も漫画も音楽も好きだけど、漫才も好きだけど、だけどいまはやっぱり、コントを見られるのが一番うれしい。

「どうしてコントのほうが好きなの?」ってよく聞かれる。M-1は見るけどキングオブコントは見ないんだよねって人は多い。私は本当は、面白いものだったらコントでも漫才でも(演劇でも映像でももっと他のものでも)何だって好きなのだけど、でもたしかに、どうしてコントが一番うれしいんだろう、と思う。
物語が好きだからとか、演技が好きだからとか、きっとそういうことなのかなと思ってたけど、気持ちにぴったり合う言葉は、ずっとずっと見つかっていなかった。

この間行ったコントのライブ、トリはサンジェルマンというコンビだった。高校生クイズのネタ。一度だけ見たことがあって、よくある設定のなかにもこんな物語が込められるんだなって感動したネタだったから、少しずつ展開を思い出しながらコントを見ていた。
その時、なぜか、ものすごくぴったりの言葉が頭に思い浮かんできた。

コントは、人の格好悪いところを、人の可愛いところに変えてくれる。だから好き。

たいていの人たちは、みっともなくて滑稽でどうしようもない。毎日一生懸命で、一生懸命なのに失敗したり、泣いたり、挫けたり、時々大喜びしたりしながら生きている。面白いというより、可笑しい。
そういうところを大事に切り取る。大事に繊細にていねいに切り取ると、その奥に、笑いが隠れていることがあるのかなと思う。
毎日に散らばる無数の可笑しさは、そのまま、人を愛する理由になり得る。私は、誰かが愛されたり、誰かを愛したりする方法を、コントに教えてもらっているんだと思う。

3泊旅行の初日に告白しちゃう人。小学生の時書いていた漫画のコンセプトカフェを作っちゃう人。好きな子に「実はもう終電ないんだよね・・・」と言われて鼻血出しちゃう人。面接官のPCに貼られたステッカーを何かやだなって思っちゃう就活生。万引き犯の「スリルがたまらない」が分からなくて、スリルをポイントカードだと思っちゃう店員さん。18歳の誕生日、レンタルビデオ店のアダルトコーナー前で0時00分を待っちゃう高校生。みんな格好悪くて、みんな可愛い。


サンジェルマンのネタのあと、すぐにエンディングMCが始まった。そこで、サンジェルマンは今月いっぱいで解散するのだと知った。
私は2人を応援出来ていたわけじゃなかった。解散がさみしいなんて言っちゃだめだ。でも、もう解散を決めていた人たちがあれほど豊かにコントを演じるなんて、と思うと、言いようもなく切なくなった。

たくさんのコントを見てきた。首ったけになって足を運ぶ公演はいくつもあって、だけど、その人たちの前でも言葉にしきれなかったことを、解散直前のコンビに気付かせてもらった。
きっと偶然だと思う。でも、これからも私はたくさんのコントを見て、たくさんの人の可愛さを知っていくんだと思う。だからせめて、それが誰の前で思い浮かんだ言葉なのか、誰が気付かせてくれたことなのか、絶対に忘れないでいたいと思った。


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