真ん中の人

ブルーノマーズのライブに連れていってもらった。


10年来の友達がブルーノのTOで、存在はずいぶん前から知っていた。でもこれまで、ブルーノマーズ、と検索したことすらなかった。
私にとってブルーノマーズは割と声に出したいタイプのカタカナで、そして「とにかくすごいらしい」というだけの人だった。

ライブに連れていってもらうことになったと伝えると、TOの粋な計らいですぐにプレイリストが届いた。
検索したことのない人の曲を、私は6曲も知っていた。これって本当にすごいこと。きっとライブを楽しめる自信が湧いた。

彼はステージにいる間、ずっと笑っていた。
かっこよくて美しくてチャーミングで、全部だった。

え何あれすごい!と思ってたらそのままそれが通り過ぎちゃって、次のすごい!がすぐに来る。ちょっと待ってまだ行かないでよってなる。ブルーノは全然まだそこにいるのに。
そういうことの繰り返しで、いつかブルーノはあっという間に、本当にそこからいなくなってしまった。
遠くのスタンド席だったけど、モニターは一度も見なかった。

真ん中の人だ、と思った。
アイドルじゃない。アカレンジャーじゃない。スターという言葉でさえちょっと足りない。真ん中だ。

たとえば音を4つしか選べないとして、ブルーノの選ぶ4つの音はキーもテンポも完璧で、その4音だけで、誰もが踊りたくなる。
馴染みがあるから好きなんじゃなくて、もうずっと前から植え付けえられていたような好き。理由のいらない好き。
そういう真ん中さがあった。

ブルーノはとんでもなく歌が上手で、ピアノもギターも演奏してみせて、ダンスまでパーフェクトだった。
それはもちろん彼が、世界的に選ばれた人だからなんだろう。

でも私には、ギターを弾きながらツイストするブルーノが、ただ踊りたいから踊ってるだけにも見えた。ほら楽しいよ?って言われてる気がした。

出来るかどうかじゃないな。表現したいって思うかどうかなんだな。と思った。
そんな訳ないかもしれないけど、そうやって思わせてもらえただけで十分だ。


帰り道はもちろんずっと、ブルーノのことを考えた。
彼はどんな人なんだろう。どうやって作品を作ってるんだろう。
どうしてエンターテイナーになろうと思ったんだろう。
私はまだ彼のことを何も知らない。

はじめて、ブルーノマーズ、と検索した。
隅々までwikipediaを読みながら、プレイリストに合わせて家まで踊って帰った。

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