見出し画像

良くも悪くも沖縄らしい? 外来種ギンネム

「沖縄で一番多い木は何?」 と問われたら、うーん、と少し考えて「ギンネム」と答えるだろう。
 ガジュマルは石灰岩地だけだし、イタジイやリュウキュウマツは山地だけ。ハイビスカスやブーゲンビレアもよく見るが、町中だけだ。それにくらべてギンネムは、町中にも生えるし、石灰岩地の空き地には大群生するし、山地の林道沿いにもたくさん生えている。少なくとも人の生活圏で一番よく目にするのは確かと思う。

 1〜2㎝の小さな葉(小葉)が、鳥の羽のように並んで1枚の葉を構成する、特徴的な葉の形。夜はこの葉が閉じて眠るように見えるので「合歓(ねむ)」の名がある。内地に分布するネムノキ(花はピンク)と似るが、花が白い、または葉が銀白色を帯びるので「銀」とつく。拙宅でも窓越しに生えており、一年中、花や実をつけている。

 ネムノキは内地で時に観賞用に植えられる在来種なのに対し、ギンネムは熱帯アメリカ原産の外来種で、わざわざ植える人はいないだろう。日本では南西諸島と小笠原に帰化し、雑草的にはびこっている。やせ地で旺盛に育つので、かつて肥料として畑にすき込んだり、燃料用に植えたりしたのが最初で、戦後には焼け野原を緑化するために、米軍が空からタネをまいたという。現在では、世界の侵略的外来種ワースト100に選定され、小笠原では貴重な在来種を守るために積極的に駆除されている。

 私が訪れた東南アジアやアフリカでも野生化したギンネムを見たが、沖縄ほど多くはなかった。近年は沖縄産のギンネム茶も作られているし、我が家でもバーベキューのマキはギンネムとモクマオウ(これも外来種)が定番だ。良くも悪くも、沖縄らしい木と思う。

『週刊レキオ』2022年6月30日掲載の記事

<キャプション>

ギンネ(銀合歓)
マメ科の常緑小高木で高さ3〜10mほど。葉は2回偶数羽状複葉と呼ばれる珍しい形。ホウオウボクの葉にも似ている。

【閉じた葉】
暗くなると葉が閉じる(就眠運動)。何のために閉じるかは明確に分かっていない。

【ギンネムの花】
白い花や若い実をつけたギンネム。石垣島の海を背景に撮ると、ギンネムもきれいに見える。

【ギンネムの実】
果実は茶色く熟すと裂けてタネをこぼす。果実や葉は毒成分も含んでいる。

* * *

※この記事は、沖縄の新聞「琉球新報」に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」に掲載された連載記事「葉っぱで分かる木々明解」を、一部改変して再掲載したものです。

* * *

沖縄の木の見分け方や特徴を詳しく知りたい方は、奄美〜八重山の自生樹木全種を収録した著書『琉球の樹木』(文一総合出版)や、草花も含め1000種掲載した著書『沖縄の身近な植物図鑑』(ボーダーインク)もぜひご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?