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町内最大級のセンダン巨木、まさかの伐採計画

郷里・山口県田布施町の麻里府地区にあるセンダン巨木。

幹周305cmと250cmは、環境省の巨樹・巨木林データベースによると山口県内のセンダンで第5位にあたる太さと判明しています。周囲に木や建築物がなく、珍しく整った孤立木なので、枝張り28mの樹冠サイズは田布施町内最大と思われます。

この木が、十分な調査や住民との議論、告知も行われずに、伐採されようとしています。老朽化した麻里府公民館を高台に移設するにあたり、このセンダンを含む約5000平方mの広大な敷地を田布施町は昨年12月に取得。行政側の判断で早々とセンダン伐採を決めてしまったのです。

センダン巨木。麻里府交差点のそばにある。南敦著『田布施の名木』(田布施町教育委員会発行 2005年)の45選に選ばれ、「樹齢百年以上経過していると考えられる」と記されている。
2本の株立ち樹形。センダンは南日本〜熱帯アジアに分布する落葉高木。白と紫の花がちょうど今頃咲いている。

5月22日、私はわずか30分ですが東浩二・田布施町長に面会し、これらの旨を伝え、センダン巨木を残した公民館計画に変更するよう個人で申し入れました。しかし、話が通じなくて愕然としました。町長の返答を整理すると、以下の通り。

1.公園ならこの木は残すが、ここは避難所。標高が最も高い場所に公民館を建設するから、センダンは伐採する。
2.スケジュールや予算があるから、今さら変更はできない。
3.住民の合意を得ていないと言い出せばきりがない。本当に多くの住民が伐採を知らなかったのか?
4.町内最大という証拠はない。山にもっと大きな木があるかもしれない。
5.高齢者は2階に上がりたがらないから公民館は平屋。

2023年5月22日16時 東浩二田布施町長との面会より

ところが、私が検証し作成した位置図(町が作成した平面図や測量図は渡してもらえなかったため、閲覧した図面や空中写真、現地計測を元に作成)では、センダンの樹冠(枝葉)はか5m前後しか建物と重なっていません。これなら、センダンの一部の枝を伐採するか、建物の形状を変える、建物の位置をずらす、建物を2階建てにして1階面積を狭める、などの方法で、センダン巨木を残すことは十分可能と思われます。

配置計画図とセンダン巨木の位置を重ねた図(町長面会後に筆者制作)

しかし、センダンを残せるかの検討はほとんど行われていないと思われます。なぜならこの公民館計画は、当初からセンダンの伐採を前提に進められており、町が作成した資料にはどれもセンダンの位置が記されていません。町が設置した2つの住民会合の場、「地域に密着した麻里府公民館を考える会」(非公開・議事録なし・指名制・10人前後?)で提示された2案、「麻里府地域夢プラン」(公開・報告書類あり・公募制・14人)で提示された3案、いずれの平面図にもセンダンが描かれていなかったとの証言からも明らかです。

私は、それぞれ3回開かれた両会合で、センダンの伐採是非が全く議論されなかったことに疑問を抱き、両団体の会長や、役場の総務課長をはじめ、10人近い地元住民からも直接話を聞きました。すると、公民館を考える会では、町側が最初に伐採する方針を提示した時に、反対意見が出なかったのでその場で「合意を得た」と判断したことがわかりました。夢プランの方では、そもそもセンダンの伐採は全く伝えられておらず、参加者によって「センダンは残すものと思っていた」「切られると思っていた」と受け止め方が異なっていたことがわかりました。

樹木と造園設計を専攻してきた私の立場から、両団体の会長に麻里府のセンダン巨木の価値を伝えると、会長は「そんなに価値があるとは誰も知らなかった。それならあの木は残せばいい。住民だって切りたいと思っているわけではない」と話してくれました。

私は会長らの発言を得た上で、町長らと面会に行ったのですが、町長らは驚いた様子で「会長が本当にそう言ったのか確認してみる」と答えたものの、スケジュールと予算があるから、センダンは必ず伐採する、計画は変更しないの一点張りでした。敷地造成の基本設計は6月末までに完了すると聞いています。

こんなちぐはぐな経緯で、樹齢100年以上(過去に伐採歴があると思われ、根株より上は50年前後と推定)と言われる郷土のシンボル、歴史・景観・自然の財産が、安易に伐採されることがあってよいのでしょうか? 設計者の笹戸建築事務所も、本当にセンダン巨木の伐採が絶対に必要と考えているのでしょうか? むしろ、ランドマークとなる巨木があることで、素晴らしい公民館ができる最高のロケーションなはずです。最初から専門家が関わってまともな手順で計画されていれば、伐採という選択は通常あり得ないと思うのです。

今私にできることは、この巨木伐採計画を、世間と地域住民に広く発信することです。本当は地元の方々に丁寧にセンダンを説明をしたいし、議員への呼びかけや、署名運動も考えねばならないし、守る会をつくろうと提案してくれる方もいらっしゃいます。6月議会も迫っています。でも私は、23日から1週間、名古屋・岐阜へ出張なので、残念ながら一度手を離れます。

何かご協力いただける方は、ぜひお願いしますm(__)m 私のセンダン関連の写真や図面は自由に使っていただいて結構ですし、シェアも歓迎です。

【6月1日、16日付 追記】
田布施町は、センダンの木を一部保存するよう計画を変更し、以下の2紙に記事が掲載されました。新聞記者の取材が関係者らに入ったことで、残した方がよいと方針転換したようです。

2023年6月1日付 中国新聞・山口総合面
センダン巨樹、田布施町が伐採方針変更し一部保存へ 麻里府公民館の移転先

2023年6月16日付 朝日新聞・山口東部版
センダンの古木は残った 山口・田布施

町に問い正してくれた町議の方々、地元住民の方々、『田布施の名木』に推薦・選定してくれた方、新聞記者さん、英断いただいた田布施町の方々に感謝申し上げます。今後は、幹や樹冠を極力大きく残し、根元周辺の造成や舗装を配慮するよう提言していきたいと思います。ありがとうございました。

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