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宇宙飛行士試験試験挑戦で得られたもの(続編)

宇宙飛行士試験挑戦から早二年。私は残念ながらセミファイナルで脱落してしまいましたが、本試験が終了してからの方が多く得られるものがあったので、今後宇宙飛行士試験に応募される方の参考になればと思い、筆を取りました。得られたものとは、「選抜試験で得られたつながり(アラムナイ)」です。ぜひ、次回以降宇宙飛行士試験に挑戦される方のモチベーションの一つにしていただければと思います。

選抜試験アラムナイについて

日本は、教育制度的にも多くの試験に受験することが多いです。例えば、高校受験や大学受験、早い人だと小学校受験、中学校受験もあるでしょう。大人になってからも資格試験など多くの試験を経験します。それらの受験においては、他の受験者は皆ライバルであり、交流することは稀ではないでしょうか。

私も受験するまで知らなかったのですが、宇宙飛行士選抜試験では上記の概念を覆し、受験者全体で受験したメンバー同士を称え合い、選抜された宇宙飛行士のメンバーを全力で応援する受験者によるアラムナイが存在します。本記事では、私が本試験で得た最大の資産であるアラムナイについてご紹介したいと思います。

2024年現在、過去の宇宙飛行士試験は下記の通り合計6回実施されています。(合格者数 / 受験者数、カッコ内は選出された宇宙飛行士。敬称略)

第一回:3 / 533(毛利衛 向井千秋 土井隆雄)
第二回:1 / 372(若田光一)
第三回:1 / 572(野口聡一)
第四回:3 / 864(古川聡 星出彰彦 山崎直子)
第五回:3 / 963(油井亀美也 大西卓哉 金井宣茂)
第六回:2 / 4127(米田あゆ 諏訪理)

総受験者数は述べ7,431人で、合格者数(歴代宇宙飛行士)は13人と突破率0.17%の非常に狭き門であり、栄冠の影で7,400人近くの人が涙を呑んでいます。私を含めて試験に落ちた方も従来から宇宙開発について熱いパッションを持っている方が多く、試験終了後にはその想いをどこにぶつければ良いかわからなくなることが多いです。実際に、私自身も試験終了後は、全力で走ってきた余韻から一種の虚無感を感じてしまいました。そんなとき、受験者ネットワークから「全世代交流会のお知らせ」が届きました。

全世代交流会への参加

第六回の受験もそうですが、宇宙飛行士選抜試験では、第二次試験から一箇所に集められ、様々な試験を課されます。必然的に、共に過ごす時間が長くなり、受験者同士の交流が深まります。第六回の受験時にはSNSなども発達していましたので、二次試験参加者のLINEグループまで作成されました。その中で、上記のお知らせが回ってきました。
とは言っても、第五回の受験は2008年頃で約15年もの間試験はなかったので、世代間の繋がりはどうなっているのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は、15年もの間があいておりますが、連続で受験されている方もおり、その方がハブになり、第一回から第六回までの世代間をつないでいらっしゃいました。公言されていますが、今回選抜された諏訪宇宙飛行士も第五回、第六回を受験されており、過去から連続的につながっています。

そのような背景で、先日、第一回から第六回までの大交流会が開催されたので、参加しました。当日は、昼の部と夜の部に分かれておりましたが、それぞれで100名ずつ参加者がおり、非常に盛会となっておりました。

2024年に開催された全世代交流会の様子

本交流会は定期的に行われているようで、今回の交流会は3回目か4回目でした。昼の部では、参加者が各班に分かれ、2030年代の宇宙開発について考え、プレゼンを行うコンテストが催されました。
それぞれの班が、夢がありつつも、収益性も狙えるテーマについて発表されており、感服したのを覚えています。

夜の部で、前回、前々回の交流会にもご参加された大先輩にお話を聞くことができました。その方から伺った話によると、このコミュニティで交流を広げたことによって、人生の幅が広がっただけではなく、転職まで至ったケースが複数ケース存在するそうです。確かに、志を共にし、非常に優秀な方が多く集まるこの会では、機会を多くする手にする可能性があるのではないかと思います。

参加者のバックグラウンド

さて、今回の交流会では、昼の部、夜の部それぞれで100名以上の方がご参加されていましたが、私が注目していたのはその参加者のバックグラウンドの分布です。当日、名刺を大量に持参し、様々な方とご挨拶をさせていただく中で、多い順に下記のような印象を得ました。

  1. 研究者:約20%

  2. 医者:約10%

  3. パイロット:約8%

  4. 上記以外の航空宇宙産業:約15%

  5. 経営者:約6%

  6. その他:約50%

参加するまでは、医者とパイロットが圧倒的多数であると仮説を立てていましたが、実際には研究者が一番多く、宇宙飛行士を目指すには、研究者という選択肢を取ることも良いのではないかと改めて感じました。何かを突き詰めることは、宇宙にロマンを感じることと似ているのかもしれません。
また、話をしていく中で、全員に共通する点として、下記のようなことがあるように感じました。

  • 宇宙に対して熱い思いを持っている

  • 常に笑顔が多い

  • 物腰が柔らかい

  • チームで物事を進めるのがうまい

宇宙に対して熱い思いを持つことは、宇宙飛行士試験参加者であれば当然かと思いますが、常に笑顔であることと物腰が柔らかいことについては、試験当初から感じていたことであったので、今回の交流会で、JAXAの選抜チームの意図を再認識しました。

私自身が得たもの

まわりくどくなってしまいましたが、上記アラムナイ及び、交流会に参加してみて、私自身が得たものは大きく2つあります。

1つ目は、言うまでもなく、「仲間」です。私は残念ながら、宇宙飛行士にはなれませんでしたが、多くの「仲間」が増えました。社会人になると多くのしがらみがあるため、心の底から仲良くなれるような「仲間」と出会えることは少なくなったなと思っていましたが、このアラムナイは全員が宇宙が好きという想いを持っているため、そこからしがらみのない「仲間」になることは非常に簡単でした。実は試験終了後も最低2ヶ月に1回のペースで参加者のメンバーとは継続的に交流が続いています。彼らは、実力を多く兼ね備えているのはもちろん、人柄も素敵なので、いつか一緒に仕事をしても面白いだろうなと妄想しています。

2つ目は、「目標」です。1つ目と重なる部分が多くあると思いますが、アラムナイの先輩方が経験された道を詳細に伺うことは自分の人生設計にも大きく寄与すると感じました。私が話を伺った方は、受験当時30代前半でまさに私と同じような年齢です。その方が受験後、どのように過ごされて、どのようなチャンスを得て今のポジションになったのかを聞くことで、大きく今後の解像度が上がり、目標ができました。私の場合には特にエンジニアの立場でありながらも経営にも興味が出てきたタイミングだったので、経営者の方との話は刺激が多かったのを覚えています。

最後になりましたが、どう転んでも、上記のような素敵な未来が待っているので、今後宇宙飛行士の募集がかかった際には、ぜひ皆様も受験してみてはいかがでしょうか。

Xもほそぼそと更新しているので、ご意見など、DMでも良いのでいただければと思います。お読みいただきありがとうございました。

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