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2021年度宇宙飛行士選抜試験受験期

はじめまして。whataと申します。

JAXAから募集がありました2021年度宇宙飛行士選抜試験を受験しておりました。残念ながら、二次試験にて夢が閉ざされましたが、今後夢を目指される方や自分のための備忘録として受験期を記したいと思います。試験の内容には触れてはいけないため、あくまでも募集要項に記載されている内容に沿って個人的な解釈をした上での対策や個人の気持ちの変化に絞って記載したいと思います。そのため、対策が本当に合っていたかには触れません。あくまで一受験者がどのような対策をしていたかの参考にしていただければと考えています。

私のバックグラウンド

私は、某県の片田舎で生まれ、そこで中学生まで過ごし、高校から地域の公立進学校に通っていました。その後、大学進学とともに上京してきました。修士課程まで修了し、新卒でメーカーに入社後、一度転職をし、現在では機械学習関係の職務をしております。社会人を数年経験し、宇宙飛行士試験に応募いたしました。

なぜ宇宙飛行士を目指そうと思ったのか

私は某県の片田舎出身なので、夜になると周りが非常に暗くなり、よく星を見ていました。そのため、物心ついた時から、地球の外はどのような世界が広がっているのだろうと想いを馳せることが多く、宇宙飛行士を漠然とあこがれ、目指すようになりました。最短距離を模索し続け大学時代の学部、大学院の専攻として宇宙関係の分野を選択しました。大学卒業後にも、人工衛星の設計をしたり、人工衛星で撮像された画像を解析する業務に従事したりと、常に身近に宇宙を感じれる分野に身を置いていました。
今回募集されている宇宙飛行士は、最終的には月に行き、人類の生存圏を広げるというミッションを掲げており、そこにも心から同意し、自分自身で新たな歴史を創りたいと感じました。また正直に申し上げると個人的には、無重力や、重力が小さい月で今まで経験をしたことのない気持ちを感じたいであったり、単純に綺麗な景色を見たいという純粋な気持ちもありました。

試験対策の方針

ここからは、私が実際に行った試験対策についてご紹介します。基本的に、試験は募集要項の8. 評価する特性に則って実施されると判断し、そこに当てはめて対策をしました。以下に募集要項の抜粋を掲載します。

選抜試験では、以下の特性を有することを評価します。また、これらに加え、宇宙飛行士の職務遂行に寄与する傑出した固有の特性を有する場合も評価します。
(1) 宇宙飛行士の職務に対して、明確な目的意識と達成意欲の強さ
(2) 宇宙飛行士に求められる任務・訓練に耐えうる健康状態
(3) STEM分野の知識や論理的思考力、円滑な意思の疎通が図れる英語能力とともに、教育や実務経験等の中で取り組んできたことにおける専門性
(4) ミッション遂行能力(自己管理、コミュニケーション、状況認識、リーダーシップ、問題解決、チームワーク、マルチタスク等)とともに、緊急事態にも迅速かつ的確に対処する能力
(5) 様々な業務環境及び技術や社会の急速な進歩・変化に適用するために、必要な身体能力及び精神心理的適応性・強靭性を有するとともに、未経験の知識や技量を速やかに習得する能力及び未経験の作業に対して自分の知識や技量を柔軟に活用して対応する能力
(6) 日本人としての誇りを持ち、人文科学・社会科学分野を含む広範な素養・知識を有し、並びに自分と異なる文化・伝統・価値観等を有する者に対する敬意を払う国際的なチームの一員にふさわしい態度
(7) 自らの体験や成果などを外部に伝える豊かな表現力と発信力
(8) 国内・国際社会で求められる高いコンプライアンス意識

2021 年度 宇宙飛行士候補者 募集要項

0次試験の対策と感想

対策

募集要項によると、「英語試験」と「一般教養試験」があるということでしたので、その二つについて対策をしました。

英語試験
英語試験は、0次試験にも含まれていますが、二次試験の面接試験で含まれているため、文章読解やリスニングだけではなく、しっかり話せるようにすることが必要だと考え、TOEFLやIELTSといったスピーキング試験がある試験対策を行いました。試しにIELTSは自費で受験まで行い、手ごたえを付けていました。なお、こちらのサイトでJAXAが公開している通り、英語試験にはSpeakingとWritingが実施されており、TOEICであったことが公開されています。次回、同じ形式になるとは言えませんが同対策をすることが宇宙飛行士試験対策になる可能性は大いにあると考えています。

一般教養試験
募集要項には、国家公務員採用総合職試験の内容と記載があったため、網羅されている1冊を選択し、そこに記載されているSTEMの分野について理解を深めていきました。私はそれまで国家公務員採用総合職試験を受験したことはなかったのですが、基本的に大学受験と被る部分も多かったかという印象です。一方で試験勉強の時には、大学受験時には選択していない生物などに関して、難しいと感じる面もありました。

感想

基本的には、募集要項通りといった印象を持ちました。対策した時間や質に比例して成果が表れるものだと感じています。また、ここでの参加者同士の交流はtwitter上などに限られており、試験中に仲良くなることはありませんでした。また、オンラインで開催する試験もありましたので、受験時の環境を整えることは地味に一番重要かと感じました。

一次試験の対策と感想

対策

募集要項によると、一次試験は「一次医学検査」、「医学特性検査」、「プレゼンテーション試験」、「資質特性検査」、「運用技量試験」があるということでしたので、ここからひも解いて対策を行いました。

「一次医学検査」、「医学特性検査」については、名前からは全くひも解くことができず、対策が難しかったですが、基本的には募集要項中の<(2) 宇宙飛行士に求められる任務・訓練に耐えうる健康状態>に関わる部分だと理解して対策を行いました。対策と言っても日々の暮らしを整えるということですが、半年間は運動の習慣をつけ(私はデスクワークが多く、全く動かない日もあるので、週に3回程度朝30分走る、週末はまとめて走る)、食生活でも体重を極端に増減させないように、ほぼ毎日測定し記録するということを行いました。

「プレゼンテーション試験」については、<(7) 自らの体験や成果などを外部に伝える豊かな表現力と発信力>が該当する項目だと理解しました。具体的な対策として、本業の方で積極的に社内外で発表経験を積むであったり、一般的な転職活動でも行われるようなフレームワーク(二次試験対策の部分で詳細を記載します)で自らの体験や成果を棚卸し、複数のストーリーで分けて話せるように専用のスプレッドシートの作成を行いました。

「資質特性試験」についても、項目からは全く見当がつかなかったので、<(4) ミッション遂行能力(自己管理、コミュニケーション、状況認識、リーダーシップ、問題解決、チームワーク、マルチタスク等)とともに、緊急事態にも迅速かつ的確に対処する能力>、<(5) 様々な業務環境及び技術や社会の急速な進歩・変化に適用するために、必要な身体能力及び精神心理的適応性・強靭性を有するとともに、未経験の知識や技量を速やかに習得する能力及び未経験の作業に対して自分の知識や技量を柔軟に活用して対応する能力>の部分だと理解し、そこに対して意識をしながら生活を行いました。仕事では実施されている方が多いとは思いますが、計画に対してバックアッププランを常に用意しておき、どういうタイミングでどういう事象が生じたらプランBに切り替えるかを練っておくということを徹底しました。

感想

この段階で、数人の方と個人的にお会いする機会を持てました。志の高いメンバーと知り合い、彼らの人生をより深く知ることで、自分自身の糧になるということを感じ始めた時期でした。また、宇宙飛行士選抜試験の準備をするにあたり、健康面やプレゼンテーションの意識を大きくしていたため本業の方で良い影響を与え始めた時期でした。

二次試験の対策と感想

対策

募集要項によると、二次試験は「二次医学検査」、「医学特性検査」、「面接試験(英語、資質特性、プレゼンテーション)」が実施されるということでした。内山氏の著書である『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』や大人気漫画『宇宙兄弟』でも一部紹介されていましたが、「二次医学検査」では、身体中の穴という穴を調べられる可能性があったため、準備としては、覚悟を大いに決めるということのみを実施しました。また、同著書に、中学校や高校で行った経験のあるスポーツテストのようなものの言及もありましたので、週に2日以上は3.5km程度走り、友人を巻き込んで週末に10km弱走る生活をずっと続けました。「面接試験」に関しては、続けてきた英語での自己紹介や志望動機のブラッシュアップを続けました。英語に関しては、外資系の転職活動にも使われるSTAR(Situation / Task / Action / Result)メソッドを用いて自分の志望動機や職務経歴等を洗い出しました。具体的な作業としては、スプレッドシートの縦軸にSTAR、横軸に自分の過去の経験を複数挙げ、全てのセルを埋めました(私は過去の経験を約10ほど用意しましたので、全部で50近くのセルを埋める作業を行いました)。
また、外資系の就活でも問われるような代表的な質問に対しては、何が来ても回答できるように5種類以上の回答案(スクリプト)を用意しました。以下に私が考えた質問例を示します。

  • 志望動機

  • あなたにとって宇宙飛行士とは何ですか

  • これまでで一番の危機はなんですか

  • 同僚と対立した経験を教えて下さい

感想

上述のような試験の準備は、非常に大変な作業(特に自分自身の経験の棚卸)でした。これらの質問が実際にあったかはお答えできませんが、少なくとも棚卸作業を通して宇宙飛行士への志望度をさらに高めるだけではなく、自分には何ができて何が苦手なのかを知ることができたので、本業の業務効率化であったり学習計画再策定には大きく寄与しました。また、運動習慣は宇宙飛行士試験対策として始めたものではなかったのですが、風邪をひきにくくなったりと生活する上でのパフォーマンス向上にも大きく寄与しました。

また、二次試験は、他の候補者とかなり密につながれることが、それまでの試験と比較して大きく異なる点だと感じています。内山氏の著書でも記載がありましたが、様々なバックグラウンドの方がおり、彼ら全員が同じ志を持っていますのでそれまでの人生や志望理由を聞くだけでもさらに熱い気持ちになるということが多々ありました。彼らは優秀でそれまでの人生が面白いというだけではなく、ほぼ全員が気さくで前向きな人柄を持った人だという風に感じました。やはり、狭い宇宙船の中で数日かけて月に向かうミッションが控えているので、アポロ13号のように何か不測の事態が生じてもポジティブにとらえ、決してあきらめないそんな人材をJAXAが選んでいるのではないかと感じました。気さくな人柄という観点に関して、本選考では表現力と発信力が募集要項にも記載されていましたので、そこを重視した結果気さくな方が多く残られたのではないかとも感じています。

後日談にはなりますが、2023年1月2日にNHKから放映された『選ばれるのは誰だ?宇宙飛行士選抜試験』にて試験の様子が詳しく紹介されています。その中で、体力試験・精神力試験として、

  • 反復横跳び

  • シャトルラン

  • 四足歩行のようなもの

が紹介されています。かなり体力を有するものであると考えられるので、日ごろから対策しておくことが重要ではないかと感じています。

さいごに

私自身の2022年を捧げた宇宙飛行士選抜試験は二次試験にて終了となりましたが、結果的に多くの時間を割いても良かったと心から思える試験となりました。私が受験する当初は、内山氏や大鐘氏の書籍、さらに宇宙兄弟を手にすることができ、それらを参考にどのような試験が待っているのかはある程度想像することができましたが、他の受験者がどのような対策や勉強法を行っていたのかは全く情報が無く、非常に手探りでした。もちろん、上記の対策全てが有効であったわけではないですが、副産物として、本準備により社会人としての教養は格段と上がったと確信しています。私は多くの方がロマンのある宇宙を入り口に、自分の殻を打ち破るために努力を行うことは、結果的に夢が破れてしまっても日本の国力の底上げのためには非常に重要だと感じています。私の経験が誰かの役に立てれば幸いです。

最後になりますが、選抜された未来の宇宙飛行士の方には、多くの候補者の思いとともに人類の次のステージで存分に活躍してもらえればと感じています。

参考

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