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聞く側? 話す側? [Footwork & Network vol.25]

 2023年4月、分身ロボットカフェDAWN ver.βで働くようになって6ヶ月、分身ロボットカフェDAWN ver.βのパイロットさんとの関わりが増えていた。以前の私は、障がい者の支援に関して何ひとつ知らない人だった。だが、分身ロボットカフェDAWN ver.βで働きながら、パイロットさんの現状を理解したくなり、私が分身ロボットカフェDAWN ver.βでパイロットさんの支援までできたらいいなっていう気持ちで、パイロットさんと向き合うようになった。その気持ちは、時間が経つにつれてパイロットさんの個人個人と過ごす時間が増えてからであるだろう。その中でも、楽しく真面目な話ができる方である、薬局のスタッフ&Orihime パイロットのさとこさんを紹介する。

 この文の最初から登場した、分身ロボットカフェDAWN ver.βとはなんだと思う方が多いだろう。『分身ロボットカフェDAWN ver.β』とは、私が現在働いているところでもあるが、「すべての人に社会とつながり続ける選択肢を」っていうテーマをもとにするところである。もっと詳しく説明すると、外出困難者である従業員が「パイロット」になって株式会社オリィ研究所が作った分身ロボット『OriHime』&『OriHime-D』を遠隔操作をし、顧客とのつながりを作っていく常設実験カフェである。このようなカフェで、パイロットとして働いてるさとこさんの人生に関するお話から、私は自分を振り返ってみた。

 分身ロボットカフェDAWN ver.βについてもっと知りたい方は、ぜひ下のWEBサイトをみてほしい。

 さとこさんと私が楽しくて真面目な話をするようになったきっかけは、わずか2ヶ月前、分身ロボットカフェDAWN ver.βのマーケティングを担当している私がさとこさんに質問をしてからだ。それまではお互いの近況を話したり、楽しく短い会話を交わすことが全てだった。しかし、暖かい雰囲気の分身ロボットカフェDAWN ver.βでパイロットであるさとこさんだけが知っているマーケティングの質問をするようになり、さとこさんは私が面白い雰囲気で真剣な会話ができる相手だと思うようになった。それから、私とさとこさんは、お互いの価値観や考えを話し合うことになったのだ。

 さとこさんは、9歳で小児がんを発見して手術したが、手術した時には完治できないと診断されたという。だが、ほぼ30年以上を奇跡的に生きていられたが、その奇跡的な人生にはいつも痛みとともにあり、他人はすることを私はできないという悩みが多い人生を生きてきたと話した。小児がんで病気だった時、看護師から多くの助けを受けたことをきっかけに看護師のライセンスを取ったが、続く痛みに看護師の仕事を続けることができなかったらしい。その後、昨年分身ロボットカフェDAWN ver.βのパイロットとしてデビューすることになり、分身ロボットカフェDAWN ver.βで働くことになったという。

 パイロットとして働くことになったきっかけは、2021年10月のニュースでオリィ研究所の代表オリィさんのことが気になったのがその始まりだという。オリィさんについて接するようになり、オリィ研究所をインターネットで検索してパイロット募集に応募するようになったそうだ。2022年3月、正式にパイロットデビューすることになったが、分身ロボットカフェDAWN ver.βですぐ働くことになったわけではなく、障がい者NPOがOrihimeロボットを通じて商店街で顧客に話しかけたり説明するプロジェクトとして仕事を始めることになったという。しかし、時期的に(コロナが深刻化した)プロジェクトが霧散し、正式に分身ロボットカフェDAWN ver.βでデビューすることになったらしい。

 看護師の仕事を続けるのは大変だったが、精神科病院で働いた経験から、人の心に寄り添うことがパイロットとしての仕事でかなり役に立ったという。分身ロボットカフェDAWN ver.βではOrihimeという小さなロボットがテーブルの上に置かれており、顧客とコミュケーションをとる接客サービスがある。その際、さとこさんは「うんうん」というモーションをよく使うそうだ。英語でいえば「Yes Yes」で、ロボットがうなずくモーションだが、さとこさんは「あなたの言うことを聞いています」という意味でよく使って顧客との楽しく真面目な会話ができる雰囲気を作り出すという。お客様からは、”さとこさんが私の話を聞いてくれる感じでした”と、さとこさんは分身ロボットカフェDAWN ver.βでは話す側より聞く側の人でいるという。また、アートクリエーターでもあるさとこさんは、自分のように小児がんを持つ子どもたちの気持ちを共感するoutputの方法として折り紙や絵でアート展を行うこともあるなど、さとこさんは相手の話を聞いて共感し、理解する方法を様々な場面で考えるそうだ。

 コミュケーションをとりながら聞いてくれる側にいるのは誰かにとって当然のことかもしれない。でも、さとこさんは当たり前じゃない人生の中で自分だけの方法で聞いてくれて共感する方にいるのだ。自分の痛みを理解してくれない人たちに囲まれてさとこさんは自分の人生を恨んだらしいが、そのような経験を謙虚に受け入れ、さとこさんは分身ロボットカフェDAWN ver.βのパイロットとして話を聞く方になったそうだ。さとこさんの話とコミュニケーションをとりながら、さとこさんが話を聞く側になるまでには、結構な時間が必要になったのではないかなと思った。誰かには、コミュニケーションって話す側と聞く側で別れてるからそれがアタリマエじゃない?って思うかもしれない。私もさとこさんとの対話の前まではそうだった。だが、聞く側でいるのはかなり大変だと思う。また、ただ聞くのではなく、理解し、共感するのはより多いエネルギーを使うだろう。分身ロボットカフェDAWN ver.βのパイロットであるさとこさんは、聞く側であり、楽しく真面目な話ができるようにするまで、いろんな経験をしただろう。その話を今後、さとこさんとまたやりたいと思う。この文を読んで、自分のコミュニケーションに関してもう一回考えるきっかけになってほしい。

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