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WEリーグよ、集客を増やしたいなら○○を聞け!

WEリーグの現状

ホーム開幕戦で集まった5306人

 先日行われたマイナビ仙台レディースがINAC神戸レオネッサを迎えてのホーム開幕戦で5306人という大観衆の中で行われた。WEリーグが5000人以上の観客を集めた試合はこの試合を含めて2試合しかない。もう1試合はWEリーグ初年度に国立競技場で行われたINAC神戸レオネッサと三菱重工浦和レッズレディースの試合で12330人。この試合は国立での開催ということもありリーグ側も普段の試合以上に力を入れていたように感じた。このような例外的な試合を除くと今回のマイナビ仙台レディースの5306人という数字はとても素晴らしいことである。
 では、なぜこれだけの観客が訪れたのか。結果から言ってしまうと「宮城県民招待」だろう。この試合は宮城県民は無料で観戦できたのだ。もちろんクラブとしての広報活動の成果もあるだろうが、「無料」という点、相手がINACという点、ホーム開幕戦という3つの条件があったからだと思われる。残念なことに、この試合はINACに0-3で敗れてしまったのは今後の集客の面でもクラブとしては痛かった。

目標と現実

 WEリーグは平均入場者数5000人を目標に掲げていた。リーグが発足してから3シーズン目。実際にどれくらいの入場者数なのか、下の表にしてみた。

塗りつぶし色は天候、黄色数字はメインスタジアム以外での開催

 小さくで見づらい部分もあるため、抜粋すると以下のようになる。上から3シーズンの合計入場者数と平均入場者数になっている。各チームの平均入場者数で5000人はおろか3000人を超えたのはINACの1シーズン目(3158人)と仙台の今シーズン(3113人)だけである。前述にあるように5000人を超えた試合のあった部分である。ちなみにINACは国立の試合を除くと平均2139人、仙台も920人になってしまう。見ての通り平均入場者数は5000人はおろか3000人にも到達できないのがWEリーグの現状となっている。

 また各節毎の平均入場者数はこのようになっている。これを見るとシーズンの中盤に入場者が落ち込む傾向にある。ウインターブレイクによる影響もあるだろうし、Jリーグの開幕による日程被りの影響もあるだろうが、平均2000人を大きく下回り1500人にも届かないこともあるのが現状である。

次のホームゲームで起こった現実

 この5303人が来場した試合が第2節。チームは3節にアウェイでアルビレックス新潟レディースと試合をして1-2で敗れ2連敗となってしまった。そして迎えた第4節のホームゲーム。会場は2節と同じユアスタで行われた。対戦相手も好調の日テレ東京ヴェルディベレーザ。当日の天候は晴れ、気温も10.9℃とINAC戦の13.5℃よりは多少低かったものの大きな影響はなかった。条件としては決して悪くなかったが、そこで訪れた観客数は「920」人。約4400人も少なかったのだ。もちろんホーム開幕戦でもないしチームも連敗しているということもあったかもしれない。それでもここまで減少してしまうと「無料」の恩恵は大きいのがわかる。

「無料招待」はアリかナシか

 どのクラブでも少なからず無料招待というのは用意している。スポンサーに対して配るものを除いても各試合で市町村を対象として○○デーと謳い無料で観戦できる試合は多い。小学生を無料にしたり各クラブが知恵を絞って色々な取り組みをしている。
 では無料招待はアリかナシか。個人的な見解を言うとアリだと思う。理由としてはいくつかあるが、まずWEリーグの試合にそこまで多くの観客が入っていないことは選手のモチベーションにも影響するし、来場する観客視点になってもガラガラのスタジアムよりは人が多いスタジアムの方が雰囲気も良く盛り上がりを感じる。特に選手側からしたら招待された人でも購入した人でも同じ観客であり、プレーを見てもらうという点に関して言えば、どちらの観客でも違いはない。さらに女子サッカーを普段見ない人からしたら興味を持ってもらうキッカケとしては最高である。
 もちろん無料招待を繰り返しているとチケットは買うものではなく貰うもの、わざわざ買うのは馬鹿らしいとなってしまう懸念もあるし、クラブ側としては手数料はかかるしチケット収入も減ってしまう。そこに関しては自分の考える対策としてチケットを購入した方には特典と付けたりグッズやスタグルの割引券がもらえるなどの付加価値を用意することでスタジアム内での購買にもつながるし購入者側のメリットも生まれる。
 じゃあ今回のマイナビ仙台レディースの取り組みはどうだったか。招待をして5000人以上の観客を来場したところは成功だろう。課題なのは、そこからどれくらいリピートできたか。半券をもって入れば次のホームゲームの時に割引価格でチケットを購入できたり、スタンプカードのように来場回数によって特典を付けるなどの工夫をしていれば違ったかもしれない。(追記 次節のホームゲーム500円引き券が配られたらしいです)来てもらうというキッカケを作るのに「無料招待」はとても有効的である。そのキッカケから継続させるのは、また別の努力が必要だ。

次につながるキッカケが生まれた試合

 先ほどはスタッフ側の取り組みから見たキッカケ作りの方法をいくつかあげたが、試合内容でもキッカケを作ることはできるし、一番効果がある。心を動かされる試合内容であれば「次も見てみたい」と思うのは普通のことだ。
 自分が応援している大宮アルディージャVENTUSも先日にホーム開幕戦を迎えた。その試合は2753人の観客が来場した。この試合はスポンサーをはじめ多くの招待があったのは事前に知っていたから、実際にスタジアムでみた埋まり具合を見て3000人を超えたかなと思ったくらいだった。この試合、VENTUSは1-0でセレッソ大阪ヤンマーレディースに勝利した。だが、勝利以上にこの試合の持つ意味が大きかったのは得点が生まれた時間帯だ。後半のアディショナルタイムに劇的ゴールが生まれた。前半は試合内容で相手に圧倒され良いところはほとんどなかった。後半は一転して攻める時間は増えたものの得点は奪えず。このままスコアレスで試合が終わったら、今日招待された人からしたら心を動かされない試合になったはず。だが、そんななかでアディショナルタイムに生まれたゴールで会場は大盛り上がり。劇的勝利は間違いなく「また見に来ようかな」と思わせる結果だったのが、今後のクラブとしての大きな収穫だったと思う。
 その次のホームゲーム。天候はあいにくの曇りで気温の急降下という条件としては決して良くなかった。正直1000人を下回ることも覚悟していたが結果は1386人。決して多い数字ではないが、前回招待だった人で今節チケットを買って見に来たという人もいた。

各クラブの努力

 クラブが知恵を絞って様々な取り組みをしている。Jとの共催を行ったりなでしこリーグと共催を行った試合もある。その中で、個人的に集客の対象や目的が明確だと思うチームが2つある。1つ目はちふれASエルフェン埼玉。埼玉には浦和、大宮とサッカーチームが3つあることから県内でもサポーターの奪い合いは必然的に高くなる。そのなかでエルフェンがターゲットとしてしるのがファミリー層。特に小さい子供連れの家族ではないだろうか。スタジアムが公園内にあり、サッカー以外での娯楽の提供ができる。またクラブとしても明確にターゲットを絞ったイベントや試合作り、託児施設、スタグルの充実などを感じる。チームとしての成績はこの2年間良いものではなかったものの、昨シーズンは初年度比116%とWEリーグのなかでは2番目となっており数字でも効果が表れている。
 もう1つのクラブはマイナビ仙台レディースである。今季のホーム開幕戦の5000人超えもそうだが、芸人や著名人とコラボしたイベントなどを目にする機会が多い。明確なターゲット層というものはわからない部分があるが話題性のある企画が多い印象を受ける。こちらも初年度比で153%と断トツの増加率となっている。それだけにこの前の920人は寂しい数字だったが、ここからの巻き返しには期待がかかる。

WEリーグが目指しているもの

WEリーグの理念先行と謎多きカップ戦

 WEリーグが色々な事に新しく取り組む時に「理念」を強調している気がする。なかにはWE ACTION DAYのように一定の効果があったものも存在するが理念が先行してしまいもっと大事な部分を忘れているのではないか。昨年のカップ戦ではわかりやすいトイレのピクトグラム?みたいな何をしているのか理解できないものもあった。(今シーズンの仮装大会の微妙だったが。)
 さらに、そのカップ戦の決勝ではダイナミックプライシングを導入したこともマイナスだった。浦和とベレーザ以外のサポーターからしたら当初の価格から相当跳ね上がったチケット代に購入を諦めた人も多いだろう。またテレビ放送に合わせて延長戦なしの即PK戦だったのも、致し方ない部分はあるにしろどうなのかと感じてしまった。(今年のカップ戦でも等々力での決勝となったが、その決勝の前座試合に予選で敗退した各グループでチームを作ってオールスター戦とかやったら、もっと注目を浴びて集客にも繋がりそうだなと思ったり?)今後リーグを長く存続させるためには、遠くを見るより足元を見ないといけないのではないか。

情報の発信地「渋谷」は本当か

 カップ戦決勝は当初国立競技場で行われる予定だった。しかし、三菱重工浦和レッズレディースがACLのプレ大会に参加することから日程の変更が余儀なくされ等々力での開催となった。情報の発信地として若者の街である渋谷を選んだことの大きな一つの形として国立開催で様々なアクションを起こす予定もあっただろうが、残念な形となってしまった。また、決勝はサンフレッチェ広島レジーナとアルビレックス新潟レディースということで結果だけみれば浦和レッズレディースの決勝進出がなかっただけに国立開催にもできたがこれはしょうがない。
 情報の発信地として渋谷を選んだ理由に「多様性」と「国際性」をあげている。また渋谷を訪れる方々に女子サッカーを身近に感じてもらうのを目的に「Home of.WE」をオープンさせた。ここでそもそもの疑問として渋谷に訪れる方々が女子サッカーにどれくらい興味があるのか。渋谷に女子チームがあるわけでもない、他にも様々な娯楽が多くある渋谷で勝負できるとは到底思えない。これも結局WEリーグの理念に縛られすぎていると感じるのは自分だけだろうか。

SNSの使い方

 リーグ側の要望かクラブ側の要望なのかわからないが選手たちが一斉に同じ様な投稿をしていることがある。ワールドカップの時、カップ戦が始まる時。普段あまりSNSで発信しない選手も含めて、みんなが同じ様な文章や画像を使って一斉に発信をした。もちろんこれによって見てくれる人はいるだろうから一定の効果はあるだろうが、はっきり言って呆れた。やらされている感が強かったのだ。なかには選手自身が工夫をして他の人と違いを付けて投稿したものもあったが、それはごく一部だった。情報の発信の仕方としては逆効果だったのではないかと感じる出来事だった。
 またリーグ側の情報発信も曖昧である。最近はSNSでの発信も積極的にはなっているもののリーグ戦やカップ戦を盛り上げようとする発信は非常に少ない。またワールドカップでのなでしこジャパンの活躍でWEリーグにも注目が集まる時期だったのに日程の発表ができなかったりなど、こちらにはわからない部分で色々な都合はあったにしろ勿体ないと感じた。
 また、SNSではないがWEリーグが選手名鑑を発売した。発売場所は発信拠点のHome of,WE。もちろん近くに住んでいる人なら買いに行けるだろうが、それはごく一部。では、そのほかの人はどうやって購入するのか。リーグ開幕以降に各スタジアムやAmazonで購入できると。そうです、「開幕以降」にならないと基本的には選手名鑑は購入できないのです。普通は開幕前にどこのチームにはどんな選手がいるだの楽しむものではないだろうか。そもそも、多くの人に見てもらうのに普段女子サッカーに触れない人がこの情報を見てHome of.WEに行くだろうか。こういうところを見ても本当にリーグを盛り上げようとしているのか疑問である。

選手あってのWEリーグだが

 今までのWEリーグの取り組みや動きを追っていくと選手を中心に考えていることがわかる。女性の社会進出やセカンドキャリアなど選手の事を第一に考えているだろう。それ自体は悪いことではない。だけど、それと同時にファン・サポーターを蔑ろにし過ぎてはないか。選手が声を上げれば検討するが実際に見に来る人の声には興味を示していない気がしてならない。リーグを続けていくのに選手がいなければならないのは当然だが、選手だけでは成り立たないのも事実。試合を見に来てもらう観客を増やすにはどうしたら良いのかという点についてもう少しWEリーグはクラブ任せにしないで考えた方がよいと思う。

WEリーグはサポーターの声を聞け

実はよく知っているサポーター?

 各チームのサポーターのなかにはWEリーグの事を色々知っている人も多い。WEリーグは上の人だけで決めてしまい現場の意見を聞かないなんて噂もよく聞く。実際のところはわからないが、そういう話を聞いて納得できてしまうくらいなのが自分が感じるWEリーグという組織である。「どこかズレてる」と感じる人も少なくないのでは?

リーグとクラブとサポーター

 WEリーグ側とクラブは連携しているのは当然のことである。リーグからの一方的なことが多いかもしれないが、ある程度はクラブ側からの意見を出すことはあるだろう。それと同時に各チームのサポーターには応援団体が存在している。その団体とクラブは試合の運営方法や意見交換なども定期的に行われている。またクラブの垣根を越えてそれぞれの応援団体が集まってミーティングを開催しWEリーグの現状や各クラブ、団体の取り組みなどの意見交換も定期的に行われている。
 では、リーグとサポーターの連携はどうだろうか。もちろんそこに連携など必要ないという意見もあると思うし、Jリーグなどを考えたときにサポーターとリーグが連携するのは大変だろう。しかし、まだ発展途中にあるリーグを今後も続けていくためには実際にサポーターの人々と意見交換をする機会があってもよいと思う。実際に来場する人の心理や来ての感想をリーグ側はもっと聴取すべき。

やってみないですか?チェアマン

 応援団体共通であがる話題の一つに「試合日程の公開が遅い」がある。スタジアムの使用優先権がJリーグにあったり、代表活動やACLなど色々な部分でWEリーグの決定権が下になってしまうのはしょうがないにしろ毎回日程の公開が遅いのはどうにかならないだろうか。Jリーグが秋春制になれば、今まで以上にシーズンが被りスタジアムの確保も困難となる可能性がある。これはミーティングで上がった1例に過ぎないが、他にも各チームのサポーターが抱える不満や疑問は多くある。是非チェアマンには一度ミーティング参加してくれたら良いのになぁと思ってしまう。(難しいのはわかってます笑)

さいごに

 ここまで長々と思いついたことを羅列してまとまりのない文章になってしまったが、それだけWEリーグには頑張ってほしいし今までの女子サッカーリーグの歴史を見ると繰り返してほしくない部分がある。1サポーターが知る範囲だから「実際はもっとこうなんだ」という部分もあるだろうしリーグ側の大変さも当然あると思う。もっと魅力あり多くの人がスタジアムに足を運びたくなるリーグにするにはサポーターが声を発信するのが一番の近道なのかもしれない。この記事を読んだなかで様々な感想があると思う。賛否両論あるとは思うが、それぞれ1サポーターとしての考えを聞いてみたい。

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