音楽やカラオケの配信代行サービスにおける著作権管理
始まり
昨今、音楽配信やカラオケ配信の代行サービスが台頭し、レーベルに属さない歌手やアーティストも気軽に音楽サブスクに曲をリリースしたり、その曲をすぐカラオケ配信したりとできるようになった。
それとともに、ふと疑問に思った、著作権管理団体への信託とかどうしてんだろう?と。
軽く調べただけで、信託をオプションでつけられるサービスもいることがわかった。
というわけで、音楽配信・カラオケ配信代行サービスがやっている著作権管理サービスをちょっと調べてみた。
※著作権管理以外の部分は基本触れない予定。
そもそも著作権管理団体の管理範囲とは
著作権管理団体に信託される権利はざっくり分けて13種類ある。ここではNexToneの説明を基軸としてざっくりと。※一部()括りでJASRACでの区分名記す場合あり
①演奏会等
コンサートやライブ、裁判やってたと思うが音楽教室での講師の演奏が該当する。
②上映・BGM
店で流したり、楽曲が入った映画の上映やゲームの稼働が該当する。
③社交場・カラオケ
バーやカラオケ店舗等での演奏が該当する。
以上3つは各団体共通して演奏権としてひと括りに扱われる。
④オーディオ(録音)
CD等、音声のみのメディアへの収録が該当する。
(盤面にJASRACだのNexToneだの載ってるのはこのため。)
⑤ビデオ
DVD、Blu-ray等、映像のついたメディアへの収録・使用が該当する。
⑥ゲーム
ゲームソフトやパチンコ等への収録が該当する。
※JASRACでは以下2種類に管理が細分化
録音(クレーンゲーム等映像なしのゲーム機)
ビデオ(映像のあるゲーム全て)
⑦映画
劇場映画での使用が該当。
⑧広告
広告全般での使用が該当。
※JASRACでは以下5種類に管理が細分化
CM送録(テレビ、ラジオ、ネットCM)
映録(劇場でのCM)
録音(アドトラック等の音声のみの使用)
ビデオ(店舗、イベント、街頭ビジョンの宣材映像)
出版(チラシやポスターへの歌詞、楽譜の利用)
⑨配信
インターネット利用全般が該当する。
それこそダウンロード販売、サブスク、動画サイトでの利用、音源、歌詞すべて。
⑩放送
テレビ、ラジオでの利用が該当する。
⑪出版
本や新聞等出版物での楽譜や歌詞の利用が該当する。
※漫画とかで歌詞出てきたときに近くにJASRACとか書いてあるのはそのため。
⑫貸与
レンタル店舗での取扱が該当する。
⑬通信カラオケ
通信カラオケでの配信が該当する。
完パケ音源等は管理団体に信託されず原盤権として、作家やレコード会社が持っている。つまり音源の利用は関係者との直接交渉となる。
だから、レーベル移籍経験のある歌手がベスト盤出したとき、一部再レコーディングしたり、配信版のみ未収録の曲があったらそっち絡みと思っていい、CD音源使っての歌ってみたが危険なのはそのため。
また、歌詞や曲のアレンジは著作人格権の問題となり、管理団体は著作財産権しか管理できないため、揉めた場合これもまた直接交渉になる。
(事案例:おふくろさんの歌唱を巡る森進一氏と川内康範氏の件)
これを踏まえてサービスを見ていこう。
TuneCore(https://www.tunecore.co.jp/)
よく使われている音楽配信代行サービスという印象。一作品ごとに管理費払えばストアからの売上100%還元だもんな。
ここの著作権管理サービスは管理費不要、著作権料取り分は85%。
ここで配信していない曲も信託可能。
管理期間は1年単位の自動更新。
管理範囲は、映画、ビデオ、ゲーム、広告のみ未信託(TuneCore自社で管理)、
残りは全てJASRAC信託となる。
何故全信託じゃないのかは不明。
BIG UP!(https://big-up.style/)
avexが運営する音楽関連サービス
音楽配信のみならず、大手レコード会社ならではのオプション盛りだくさん(グッズ制作など)
音楽著作権管理サービスの欄を見るが、対象楽曲も含めた詳細が書いていない…※ここで配信している楽曲に限るだろうけど。
しらみつぶしに、ここ経由の配信楽曲をJASRACで検索かけまくったところ、avex第4事業出版部からavex所属アーティストの楽曲と一緒に信託されていることを突き止めた。
※BIG UP!の曲、大半が未信託で心折れかけた。
JASRACでの管理範囲が狭かったためNexToneも合わせて調べた結果、こんな感じになった。
ゲーム、広告→未信託
演奏権(演奏会等、上映・BGM、社交場・カラオケ)→JASRAC
それ以外→NexTone
ちなみに、著作権料の取り分は書いていなかった…
楽曲収益化サービス(https://site.nicovideo.jp/music_rights/)
ニコニコ動画を運営するドワンゴが今年始めたサービス。
音楽配信、YoutubeコンテンツID付与、著作権管理の3つがあり、単体でも使えるようだ。つまり既にリリース済み、カラオケ配信済みの未信託楽曲も著作権管理で収益化可能だということだ。著作権料取り分は66.666%、約3分の2となる。(管理費は無料)
管理範囲は演奏権のみJASRAC、残りすべてNexTone…結果的に全信託。
音楽業界の慣例に合わせ著作権管理は10年単位契約(自動更新)とのこと。これを長いと取るかは読者に委ねるが、Tunecoreの管理期間見たあとだと長くみえるよな…
Frekul(https://frekul.com/)
ワールドスケープ運営の、音楽配信やカラオケ配信など色々できるサービス。
ここの著作権管理はかなり尖ってる。
というのも、音楽配信しただけでは管理されず、印税対応オプション付きでカラオケ配信(1曲あたり約2万円)を依頼した楽曲のみ管理され、範囲も放送と通信カラオケのみNexToneに信託というガチの最小限。
配信も未信託だからストア売上は音源の売上のみ…ただ裏を返せばネット、リアル全ての自己利用に手続きはいらないと言える。
なお著作権料は金額の7割もらえる。管理費はなし、管理期間は未掲載。
MUEジスト(https://music.mashup.jp/)
マッシュアップエンターテイメントが運営する音楽関連サービス
※サービス名でパセラが連想できた人は首都圏のカラオケ猛者に違いない。
BIG UP!同様、音楽配信のみならずグッズ制作等、アーティスト活動全般に使えるサービス(月額480円の会員制)
音楽出版管理費を1曲につき年額5800円払うことでJASRAC信託ができる。著作権料の取り分は6割。
信託範囲がわからなかったため、JASRACでマッシュアップエンターテイメントと検索したところ、配信とゲーム以外を全信託する方と、それも含めて全信託する第2事業部がヒットした…選べるんだろうか?ネットでの自己利用が楽かどうかしか違わないが…
えんすぺ!(https://ensupe.com/)
ハートミュージックが運営するカラオケ配信代行サービス。
著作権管理をここ経由で行うことも可能(何故かQ&Aの方にあり)
著作権料の取り分は6割。管理費、期間は不明。
特筆すべきなのが、まさかのNexTone全信託。
演奏権までそっちに信託するのそうそういないと思う、思うだけ。
Muse Cruise(https://muse-cruise.jp/)
デキゴコロが運営する音楽サービス。
音楽配信代行とカラオケ配信代行の2本柱
著作権管理費は無料。
ここ経由で音楽、カラオケどちらかを配信している曲は確実に著作権管理サービスを使える。それ以外は配信サービスの利用状況によっては引き受けてもらえるとのこと。過去の未信託曲も著作権料得るチャンスである。
著作権料取り分はここで配信している曲は8割、そうでない場合は5割、割合高い。
管理範囲はJASRAC全信託か、部分信託かを選べる。
部分信託は、配信をNexTone、通信カラオケ、放送、貸与をJASRACへそれぞれ信託する。
部分信託ならライブやCDでの自己利用は楽になる。
配信は管理対象なので同人ショップ等のDL販売に卸してる人は要注意。ただそこに気をつければネットでの利用(ライブのツイキャス配信など)も著作権料出るからでかい。
RECORDS QUEEN(https://records.ne.jp/)
カラオケ配信代行もやっている音楽出版社の1つ。
カラオケ配信時のオプションでJASRAC信託可能(無料)
取り分は不明。期間も不明。
管理範囲がわからず、JASRACでレコードクイーンで検索するも出ず…
所属の演歌歌手、 甲斐 犬人氏がここでリリースした曲を検索したところ、全信託で、出版社が第一興商音楽出版社。これ、DAMの方の出版社…ここ経由で配信して歌いまくられればDAMへの配信もワンチャン…?
結論
信託だけをできるところもあれば、配信サービス併用が前提のところもある。全信託の業者だけかと思ったら、部分信託やってる業者もあった。これといった総括はなし。