サポ目線で見る東京武蔵野シティFCのJリーグ参入断念と地域性が中途半端になってしまったクラブ名の話

東京武蔵野シティFCがJリーグ百年構想クラブから脱退しました
https://www.jleague.jp/release/post-63944/
https://www.tokyo-musashinocity.com/contents/332896

2016年、Jリーグ加入を目指すべく企業名を含む「横河武蔵野FC」から「東京武蔵野シティFC」に改名して挑んだわけだけど、百年構想クラブから脱退して法人も変更したことでJリーグ加入をすることはなくなりました。

断念した理由を引用。
"今回このような決断に至った背景ですが、Jリーグ参入断念につきましては、地域に根ざし社会に貢献するサッカークラブという原点に立ちかえること、また移管につきましては、Jリーグ参入断念に伴い、現状の経営体制を一新し、地域の多世代が参加できる多目的の総合型地域スポーツクラブを目指す一般社団法人横河武蔵野スポーツクラブに事業移管し活動していくことにより、充実したクラブとして大きく飛躍できるものと考え決断させていただきました。"

奥歯に物が挟まったような言い方ですねw
まあぶっちゃけムサリクこと武蔵野陸上競技場がJリーグのスタジアム基準を満たせなかったことで断念したといっていいと思います。

J3ライセンス申請の流れは次の通り。
2016年、東京武蔵野シティFCに改称し百年構想クラブとして認定。J3ライセンスはムサリクが基準を満たせず不交付
2017年、ムサリク改修が決まりJ3ライセンスを申請するも不交付
2018年、ムサリク改修完了。J3ライセンスは申請せず
2019年、J3ライセンスを申請し「5年以内のスタジアムの新設」という条件付で交付

クラブはずっとムサリクでライセンスを申請してきたんですよね。だからこそ、ライセンスが不交付になった後に基準を満たせなかった部分を武蔵野市に4億弱でムサリクを改修してもらっています。
ところが、その改修をもってしてもライセンスは交付されませんでした。まあ正確にはライセンスの交付自体はあったんですが、あくまで「5年以内のスタジアムの新設」という条件なのでムサリクはダメでした。

これは2018年にできたライセンス制度の「施設基準の例外規定」が大きく影響しています。改修か新設の見込みがあれば例外的にライセンスを交付するよ、というものですね。武蔵野も2019年は例外規定適用申請を提出しています。

想像になってしまいますが、ここでクラブとJリーグ側で思惑が分かれてしまったのではないでしょうか。武蔵野シティとしてはあくまでムサリクの改修を考えていたのに、Jリーグ側は新設ならOKとライセンスを交付したと。
当時は代々木公園やとしまえん跡地に新スタ計画が出る機運があり新国立の球技場計画もあったので、FC東京や東京Vの移転で味スタも空くことをJリーグ側が考慮したのかもしれません。

ここで問題になるのは東京武蔵野シティというクラブが何を目指しているのか、です。「地域に根ざし社会に貢献するサッカークラブという原点」の「地域」がどこを指すのか。そのコンセプトが明確でなく中途半端になってしまっていたのでは? と個人的には思っています。

シティというとマンチェスターをはじめクラブ名として嫌いではないんですけど、意味としては市ですからね。東京、武蔵、武蔵野、武蔵野市、被る部分も多いですが全部違う地域なんですよね。

J3ライセンス申請時にスタジアム新設計画があったとはとても思えないんですが、Jリーグ側としてはサッカーの普及をしたいわけですから例外規定は武蔵野への救いの手となるようにしたつもりだったのかもしれません。ムサリクではダメだったことを考えて含みを持たせた結果が「東京武蔵野」ですからね。
でも、クラブはムサリクの改修で武蔵野市と連携はしていたものの都をはじめ近隣市とは連携が取れていなかった。「武蔵野シティ」ですからね。
このあたり、とても中途半端でちぐはぐです。

サポーターとしても「武蔵野市を中心とする武蔵野地域」なら納得感がありますが、「武蔵野市限定」だと違和感があります。自分が西武新宿線沿線を転々としている武蔵野市外の近隣住民ということも大きいですが、ユースっ子もそういう人は多いんですよね。市内の三竿兄弟だけじゃなく市外の李忠成や阿部拓馬だって大事なクラブ出身選手ですからね。
このあたりサポ間でも共通認識が取れていないと思います。「武蔵野市」だから応援している人もいるでしょうし。まあ、そういう人は中心が武蔵野市ならいいやって思ってくれてもいそうですけど。

ただ、味スタは地元感が薄いという人は結構共通して多くなるんじゃないかな。これは、「たとえ味スタでやれたとして、それホームといえるの?」という問題ですね。
このあたり、外から見ると理解ができない人もいると思います。「武蔵野」と「多摩」の違いと言えばいいでしょうか……どちらも広域地名で定義もまちまちなので分かりにくいですかね。

「多摩」は東京のは23区以西のことを指すことがあります。この場合武蔵野市は含まれます。旧多摩郡を指す場合も北多摩郡だったので含まれます。でも、元々多摩川流域を指す言葉なので愛着が薄いんです。特にムサリクのあたりは北多摩郡の北端で、近くの武蔵関(旧豊島郡)、東伏見(旧新座郡)は多摩郡ではないですしね。
「武蔵野」は武蔵野台地がベースなので武蔵野市を含むことはもちろん、武蔵野市近隣にも愛着を持ってもらえる地名になるんです。多摩川以北を武蔵野と定義する場合は味スタも含みますが、あそこは国分寺崖線より南で武蔵野台地ではないんですよね。
ムサリクも味スタも同じ旧北多摩郡なんだけど、ムサリクは武蔵野、味スタは多摩に愛着がある地域だと思います。

だから、地勢的な乖離があって南北アクセスも悪く沿線文化も生活圏も違うので味スタは地元感が薄くなるんですよね。キャパも分不相応に大きいですし、ホームスタジアムとしてやっていくには難しかったでしょう。
まあ結局、渋谷やとしまえん跡地のスタジアム計画も新国立の球技場化も進展ありませんでしたから、そもそもFC東京と東京Vで味スタに空きはないんですけどね……

ちなみに「武蔵(武蔵国)」だと広すぎて埼玉と神奈川の一部、等々力どころか日産もニッパツも旧橘樹郡なので含まれちゃうので割愛しますw

「地域に根ざし社会に貢献するサッカークラブという原点に立ちかえる」ということは正しい選択だと思います。そして、ここでいう地域はやっぱり「武蔵野」なんですよね。「東京」は背伸びした結果だと思うんですが、僕らが背負うには大きすぎたんですw
武蔵野は近隣を含めてもJリーグの基準をクリアするスタジアムの建設用地なんか存在しないけど、JFLでも、ムサリクでもいいじゃない。地に足つけてやっていこうよ。
Jリーグを本気で目指している選手たちには申し訳なさしかないけど、個人昇格を目指せる場所としては十分機能すると思うのでどうか許してほしい。

というか、武蔵野にきたから成長できたと選手に言ってもらえるような環境を作っていくことがこれから重要になるのかな。J3ができてクラブの価値が相対的に落ちてセレクションに人が集まらなくなって弱体化したことがJリーグを目指すきっかけとなったクラブだし。
JFLでも成長できるから所属したい、と選手に思ってもらえるように価値を作っていかないとね。

まあ、チーム名は変わらず東京がついたままかもしれないけど、武蔵野に根付いたサッカークラブであることは変わらないはず。これからも応援していきたい。