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【大分】白地図に夢を描く〈2022年シーズン展望〉

いよいよ2022シーズン開幕。選手やチームに関する様々な情報がちょっとずつチラ見せされていたので、そこから「今季こんなことやりたいんじゃないの?」ってのをそれっぽく書いていきます。

大まかな流れとして
・昨年の振り返り
・2022年に期待すること
・開幕スタメンの予想
・各ポジション別のお話

みたいな流れで。

昨年の振り返り

2021年の大分トリニータは片野坂体制6年目。
ベースは自陣でゆっくりボールを回し、相手を引き付けて背後を狙う「ミシャ式」と呼ばれる戦術を採用していた。

これが通用していたのは2019年夏ごろまで。そこからの1年半はどのようにアップデートをしていくか、というところに非常に苦心していた。
片野坂監督が施すことのできたアップデート未満のマイナーチェンジの肝は「ボランチを下げない」というところであった。

【ベース】

ミシャ式の可変はビルドアップ(ボール保持)ではWボランチの片側を下げて左右のWBを上げた4‐1‐5(4-1-2-3)をベースとする。
ボランチの小林裕紀を下げーの左右のWBの井上&香川上げーの。シャドウの町田&渡邉は中盤と前線のつなぎ役、みたいな。

ここからのマイナーチェンジは主に2つだったと思う。

【マイナーチェンジ①】

1つ目はボランチは下げないままのミシャ式。左右のWBを上げて3-2-2-3のような可変。

3バックの左右を大きく拡げて左右のWBは前へ、ボランチそのまま!
相手がハイプレスに来たらGKを使って数的優位をつくる。
これはシーズン序盤から意識していたやり方であったが、ハイプレスの餌食になる回数が増えて負けが重なってしまった。

【マイナーチェンジ②】

2つ目は下げる選手をボランチから片側のWBに変えるパターン。

矢印の方向からわかるように反時計回りに選手を循環させて左右のWBが逆の動き、シャドウの片側(図では渡邉の位置)がサイドに立つ形。終盤戦は渡邉の位置に呉屋を使ってみたりと可変で相手を間延びさせて背後を突く!というのが狙いとしてやっていた。

【2021年の課題】

ボールの動かし方を工夫して打開を試みた、というのが昨年のやりたかったこと。そこの秩序は最後まで崩れなかった、片野坂トリニータの貫いたこと。しかし、秩序はあれど自らカオスを盤面に落とし込めなかった。ここが大きな痛手。
「カオスを盤面に」とは言い換えるとオープンな展開。これを嫌う必要があった。1つ目のマイナーチェンジで試みた3-2-2-3がマンマーク気味にハメられると局面の打開が難しい。個で上回れない。これが大きな誤算であった。
片野坂トリニータのフットボールはボール保持をして相手にアクションを起こさせる。ここが始まり。ここに策を講じられてアクションがリアクションになってしまう。すると自陣の深い位置で突然攻守が入れ替わって…失点が増えてしまった。
つまるところ試合を支える戦術はあったが、試合を決めるディテールまでたどり着けなかった。試合を支える戦術そのものに無理が生じてしまっていたのだろう。知らんけど。

ざっくりとした振り返りはこんな感じで。
守備面でも方策はあったが、「間違っちゃいないけど、どんどん状況が悪くなる」場面が多かった。

でも、それが何より愛おしかった。不格好で愚直で歪。理想に殉じた片野坂トリニータ。報われなかったことは悲しいが、昨年末、我々はあきらめないことは勝つことよりも難しく、だからこそ人を惹きつけるし、報われることを切に願うんだな、と感じました。サッカーは心を動かす。魂を揺さぶる。また、奇跡は2度も続かない、とも。これを味わってからの2022年です。

2022年に期待すること

2021年の課題は「自陣での保持から…どうする?」というのに本格的に着手したが形にまではできなかった。ずばーんと突き抜けるものは見つけられなかった…といったところで新シーズン。
カテゴリーも監督も変わってどんなことを期待するか?ですが、それはもちろん「得点力の向上」に尽きます。もうちょっと具体的に言い換えると「相手の虚を突く仕組みづくり」でしょうか。
ボールを動かすのは、あくまで相手を動かすため。ここをもっともっと能動的に、アグレッシブに、というのが今季見られると思います。

ここで「なぜ能動的に、アグレッシブに」という点ですが、それはJ1レベルだと個で上回れないから。片野坂監督もよくコメントで「30人全員で」と言っていたように、グループで対策を準備しないと厳しい。
ビッグクラブになりうるだけの素地がある都市近郊のクラブには、予算面でも有望な人材が近くで見れるという点でも大きなアドバンテージがあって、地方クラブはこのようなクラブに対し、「違う価値」で選手を引っ張ってこないといけない。これはチームだけでなくクラブ全体の課題であるため、ややズレてはいるが…根底にあるのは「個で上回ることが難しい」というのが共通認識だ。
そこに対してのアプローチが片野坂監督は「ボールの動かし方」で、下平監督は「ボールのあるエリア」で解決を試みよう、という違いがあると思われる。
ボールを持ったらまずは前を見る。前進のためにどうするか。これが片野坂さんのアグレッシブさ。ボールがどの高さにある(自陣1/3orミドルサードorアタッキングサード)かでどんなアクションを起こすか。これが下平監督が求めるアグレッシブさだと。まだゲームを見てないので何とも言えませんが、そんな違いがみられるはずです。

開幕スタメンの予想

でっかい期待をバーンと出しておいて予想が全く当たらない…なんてのはよくあることだと思うので、半分でも当たったら褒めてやってください。優しい気持ちでみてくれ…

フォーメーションは4-1-2-3。これはYouTubeで松原良香さんと下平監督の対談にてシステムより選手の特徴を重視している、との前置きはありつつも、ベースは「攻撃から、マイボールから」という事を語っていたので、予想もそれに沿ったものとして考えています。

細かいところは各ポジションで話すとして…キーになるところは左右のWG。両翼のポジション。
ヨーロッパでリーグを席巻しているクラブでは、ここに個で打開できるような強力なアタッカーが必ずいる。自分は欧州サッカーはほとんど見ないのでうすーい情報ですが、マネやサラー、スターリング、ムバッペなどといった国を代表する選手。ここに強力な選手を置くことで、相手をズラす起点にできるから重視されます。なぜ?というお話は長くなるのでまたの機会に。
そしてボールの保持にこだわっているのは上記の動画内でも語っていたので2CBも軸になります。

そして開幕、というところで互いに事前情報がほぼない。スカウティングが難しい状況の中では、対策よりも「どういうコンセプトで今年やっていくか」のお披露目的な意味合いも帯びる。ここで中盤2列目の2枚(インテリオール)の下平監督の「色」が出てくるんじゃないか、と考えます。
たぶんインテリオールは攻撃的な2枚。「攻撃的に」と語る監督が開幕でかじ取り役をアンカーとインテリオールの片側に任せるよりも、アンカーに一任するような印象。攻撃で色が出て、中盤で気が利くタイプを並べるんじゃないかな、といった感じ。
思ったままに語ると収拾がつかない&横文字がうっかり並びやすいので、そこらを噛み砕きつつ、各ポジションの話に移ります。

各ポジション別のお話

GK

高木駿
吉田舜
西川幸之介
濵田太郎(←大阪産業大)

天皇杯での活躍が印象深い高木が盤石の正守護神。
ポープが町田へ移籍したため選手層は薄くなった印象だが、GKに足元の技術を求めるという既定路線は変更せず。大卒新人の濵田(←大産大)のプレー集でも積極性が光っていた。ルヴァン杯ではっきりしたGKの序列が見られるはず。

CB

左CB
三竿雄斗
刀根亮輔
上夷克典
(Eネット)

右CB
ペレイラ
小出悠太
坂圭祐

下平監督も片野坂監督のように右には右利き、左には左利きの選手を置きたい、という考え。ここに関してはボールの保持と身体の向きが関わってくるので重視している。が、現状で左CBが本職の選手は三竿のみ。昨年は刀根が頑張ってこなしていた事、なんか夏場にチラッと途中出場でボランチをやってた上夷あたりがあくせくしながら三竿とポジション争いをするのかな、と。ここ2年は三竿が元気にほぼフル出場をしているため、刀根や上夷はスポット起用とみているかも。あとはEネットが左利きでデカい!足長い!から括弧書きで頭数に入ってると予想。
右CBは再起を図る坂、昨年の主力小出といるが、ペレイラがとりあえずは序列が上と予想。
「攻撃から、マイボールから」というサッカーを目指す中でのCBの役割は、ボールを保持しながら前進をする起点。相手のFWがどの位置からプレッシャーをかけてくるかをよく見て判断をする必要があり、相手が引いた場合におびき寄せるのではなく、CBの選手が前進をして敵陣に迫っていくことが求められる。しゃらくせぇ海外かぶれは「コンドゥクシオン」なんて横文字を使いますが、要は運ぶドリブル。これが今季のビルドアップの大きな違いだと思います。

SB

右SB
伊東幸敏(←千葉)
松本怜
(小出悠太)
(井上健太)

左SB
香川勇気
高畑奎汰
(野嶽惇也)
(三竿雄斗)

3バックから4バックへと久々に変更をするためワンオペから解放されたサイド。編成が大きく変化しなかったためざっくりとドリブルが上手い奴が前、クロスが上手そうな奴が後ろ、くらいな分け方。基本は2人がポジションを争い、括弧書きの選手がチーム状況をみてヘルプをこなす、みたいな印象です。
このポジションはミドルサードに入ってからのボールの受け手になる場面が増えるだろうと予想。なので囲まれてヤバそうならラフにでもクロスを入れられる精度を選択肢に入れつつも、縦関係になるWGやインテリオールをうまいこと使わなければならない。それでいてもっと敵陣深くにボールが入ったら大外からサポートをしてクロス!みたいな役割。しんど…
サイドはタッチラインがあるため視野は確保しやすいが、密集地帯で良い状態の味方に付ける必要があるため、序盤は温かい目で見ていきたい。

DH

下田北斗
Eネット(←トンベンセFC)
弓場将輝
(羽田健人)

この中盤底のポジション、国と役割によって名称と意味合いが全く違うので誤解が多い。自分も正直わからない。
ポジション表記では「DH」がウイイレとかで馴染み深いが、

アンカー(英)…錨の意味。DFの前の防波堤のような。たぶん羽田がこれ。
ピポーテ(西)…軸の意味。Eネットはこのイメージ。
レジスタ(伊)…演出家の意味だったはず。ほかの選手より動的な下田がこの印象。
弓場はまだわからぬ。

守備的なのがアンカー、静的なのがピポーテ、動的(自由が与えられている?)なのがレジスタみたいな解釈です。
バルセロナとかペップのシティが好きと言っていた下平さんは「ピポーテ」で呼び方を統一するかもしれない。
GK、CBと共にビルドアップの起点になる一番重要なポジション。ここでの判断ミスは即!大ピンチ!になるため、無理しないとかここはターンできる!とかは周りも声掛けをしていい状況をたくさん作ってほしい。

IH

小林裕紀
町田也真人
野村直輝
藤本一輝
中川寛斗(←京都)
小林成豪
羽田健人

下平監督曰く「インテリオール」です。スペイン語。バルセロナがバキバキに強かった時のシャビとイニエスタがやってたポジション。日本ではインサイド(インナー)ハーフという言葉で馴染みがあるかもしれない。
ここは片野坂監督時代のシャドウと同じように試合毎に2人を選ぶ流動的な形でやっていくだろう。
相手が自陣で構える…という想定1つ取っても、間受けが上手い町田と野村を並べる?とか、どうしてもスペースがなくなるから中川でシャカシャカする?とか敵陣で押し込むためにボールの即時回収を求めて羽田使う、とか。その日のチームの特徴が出やすいポジションだと感じます。

WG

右WG
増山朝陽
井上健太
屋敷優成(←大分U-18)

左WG
渡邉新太
サムエル(←ECヴィトーリア)
梅崎司

ハイパーな反則選手が欲しい…グギギとなるポジション。ここにボールが入ったときに対面したSBを独力で剥せるのが一番。これが選択肢にあると下平監督はめっちゃ喜ぶと思います。が、ここは大分。誰でも抜けるような選手はなかなか取れない。なので、味方が上手くサポートして相手に「パスもあるぞ!」ってのをチラつかせつつ突破を図る仕組みを作っていくはずです。まぁ増山朝陽はスペシャルですし、渡邉新太も何とかしてくれるでしょうが。
個人的にはもうこのポジションで小林成豪がひらりひらりと相手をかわすさまをたくさん見たいですが、ここ大分に来てからシャドウで頑張っていたのでもうちょっと先の話かもしれません。また、中川も昨年は京都で右WGをやっているので、このポジションもインテリオール同様流動性に富んだポジションでしょう。

CF

長沢駿
伊佐耕平
呉屋大翔
宇津元伸弥(←宮崎産業経営大)

1トップ。鈍器で殴るかスパッと割くか。
昨年のプレーを見た感想では、2トップに適性のありそうな長沢と呉屋、思ったよりボールが収まらなかった伊佐。しかしこれは1トップが孤立していたから。今季はフォーメーション的にも選手とより近い距離間でプレーできるであろう事から上手くいってくれ~!と願うのみです。
わかりやすくターゲットになる長沢、押し込んでスペースがない中でもスッと背後を取れる呉屋に、「即時奪還」を求めるならばハードワークが持ち味の伊佐と三者三様の色があるため、開幕からどんな想定で誰を置くか、非常に読みづらい。

宇津元は

ポジションはトップかシャドーになると思う。自分もシャドーが一番やりやすい。
https://web.gekisaka.jp/news/detail/?347567-347567-fl

とのことだったので、CFなのかインテリオールなのか、はたまたWGなのか。これは下平監督はじめコーチ陣が、宇津元の特徴をどんなプレーで生かしてほしいかってところで注目になるだろう。

また、中川は柏在籍時にこのポジションに入ってゼロトップ的なタスクをこなしたこともあるらしい。ここ数年の記録を見てみると2トップの一角としてFWでプレーはしていたが果たして。

終わりに

新たなシーズン。新たな監督に新たな戦術。そして、渡邉新太。(言いたかっただけ)
片野坂さんとの歩みはこれから、大分トリニータのサッカーへと形は変わります。そのつながりをフロントや選手たち、そして下平監督が大切にしようとしているんだな、と、書いていて勝手に感じてしまいます。変わるのはアプローチのみ。やること、求めることは変わらない。
今年1年が実り多きことを願ってやみません。

そして、J1に上がってから昨年までの苦しくも楽しかった3年間はいわば「勝つことと負けないことの差」に大いに頭を悩ませたものだったと感じます。そんなチームが再起を期して1年での再昇格を目指す。勝ちにこだわる姿をより突き詰めてくれることがとてもとても楽しみです。まさに「挑戦」の二文字だと。

ロジックの積み上げと、ひとつまみの華やぎと。変化の1年。最後にJ2のてっぺんで共に笑いましょう。

写真引用元
大分トリニータ公式HP
大分トリニータ公式Twitter

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