見出し画像

【大分】2020年シーズンレビュー 〈選手編③ ~FW編~〉

やべぇ。ずぼらした。
シーズンレビュー選手編ラスト!FW編です!!!ヒャウィゴッ!

9.知念慶(29試合 1609分/3G3A)
CF

未完の大器

昨年一番悶絶した選手。強靭なフィジカルとパンチ力のあるシュートが魅力のFWだったが、いかんせんフィットまで時間がかかりにかかった。
ボールを持てばキープにシュートにと何でもできる。だが、何でもしようとして何もできないみたいなプレーがたくさんあった。
彼の「何でもしようとする」はボールホルダーに必要以上に寄ってしまう事。CF、それも1トップというポジションを任されている選手が、サイドにフラフラと流れていきシャドウとポジションが被ってしまい、ゴールから離れてしまう。苦し紛れに放つミドルシュートはゴールを脅かすことはあれど、チームのコンセプトと合致していないのは明白だった。また、判断力もよくなかった。印象的だったのは25節の浦和戦、2:57~のシーンだ。相手のミスから敵陣でボールを奪い4対2の数的優位でボールを受けたのは知念。対面するDFの左右に2人おり、ほぼ"詰み"なシーン。ここで知念はまさかまさかのミドルシュートを選択。枠には飛ばしたがGKからも予測しやすく、絶好のチャンスをふいにしてしまった。隣で観ていた友人から「知念打つなよ」って3回くらい言ってたらしい……このシーンに象徴されるように、知念はボールを持ってからのルックアップがほぼ無く、自分のイメージのまま突き進んでしまう。キープもミドルも何でもござれ。だからこそ自分の中で完結させてしまうプレーは勿体ないの一言であった。

シーズン終盤には、チームとして知念がサイドに流れてしまうことを想定して、ボールとは逆サイド(主に野村)が中央レーンの補助をして知念が好きなペナ角のスペースを空ける事で調整。知念もそこで受けられるとわかるからハーフスペースより外側でのプレーがなくなり、結果として「フィットしてきた」という結論に落ち着いた。

何でもできるからする、というのは本当にチームのためになるか?というのを考えさせられた選手だった。知念の武器は何度も繰り返しになるが強靭なフィジカルとシュートレンジの広さだ。FWというポジションでこの武器はみんながみんな持ってはいない、特別な能力。その力をもっともっとゴールに向けて欲しかった。16節仙台戦で見せたシマオ・マテとのフィジカル対決に勝って冷静に1対1を決めて見せたり、カウンターから広いスペースをみて田中達也へアシスト。26節横浜FC戦では、ボックス内で何度も決定機を作り出し、難しい体勢から反転してコンパクトな足の振りからパンチのあるゴール。これらに象徴されるようにやればできる選手。何でもできるからこそ「敢えてしない」という選択がこれから身に付けばより恐ろしい選手に絶対なれる。

15節湘南戦での無念の途中交代から、悩みつつも食らい付き、プレーで答えようとしてくれた。結果としては3G3Aと満足のいくものではなかったが、#知念もういちねん (@ふぉれさん これ読んでね)のハッシュタグができたように、終盤で信頼も掴みかけていた。だからこそ、惜しい。今季も継続してプレーできれば、もっと上へ行けたと思う。
今季は川崎Fに復帰。川崎発、大分経由、世界へ。ACLでも頑張ってほしい。


16.渡大生(23試合 1023分/2G)
OH,CF

ふしぎなメルモ

我を貫く男だった。が、チームとは合致しなかった。
出場した試合の半分はスタメン。そして1000分以上も出場機会を与えられ、たったの2ゴールのみ。シュートは11本と全くと言って良いほど期待に応えられなかった。
渡の強みはアグレッシブさと身軽さ、そして献身性の高さだ。それは存分にみせてくれた。だが、彼も知念同様「動き過ぎる」きらいがあった。ただ、知念と違いシャドウというポジションだったのでサイドに流れるのはある程度許容できたが、コーナーフラッグらへんでボールを受けて……なにするの???な場面が多く、ボール保持を高めたまま敵陣に攻め入るというチームのコンセプトから大きく逸脱していた感が強かった。加入時の目論みではサイドに開いてもなんかガチャガチャしつつカットインしていくと想定していたが……

一方で、カウンターでは抜群の存在感。疑似カウンターでは広大なスペースをゴリゴリ進み、ボールの収まり所として機能。また、クロスへの飛び込みは光るものがあり、5節G大阪戦ではクロスボールに背後から飛び込んで移籍後初ゴールも決めた。

CFで出場した18節広島戦、19節鹿島戦では背後に飛び込む駆け引きをたくさんみせて相手をかき回しまくったが、広島戦では59分(→知念)、鹿島戦では45分(→髙澤)で交代と結果で応えられなかった。

かくしてカウンターが想定される試合でのシャドウでの起用と、CFとして相手をかき回す役割を果たしたがスポット的であり、得点はおろかシュートまで持ち込む場面も少なかったことから徐々に出番は減り、1年でチームを去ることになった。

渡のnoteは思ってる事をストレートに書いてくれてる印象があり、本当に好き。不思議な選手ではあったが、彼の意思の強さや我が道を行く感じがたまらんかった。まだまだ渡は渡のままであり続けるだろう。今季は同じ九州の福岡でプレー。カウンターなシーンは増えるはずなので生き生きとした渡がみれると思う。


18.伊佐耕平(22試合 1042分/3G1A)
CF

復活のイーサー

怪我に苦しみ、2019シーズンは5試合90分、先発1試合のみと不完全燃焼だったが、昨年はチームを引っ張る選手として見事に復活した。
伊佐の良さはなんと言っても献身性の高さ。滅茶苦茶走って身体を投げ出して守備をして、素早い切り替えからゴールを目指す。昨年はプレスバックの質が上がり、相手の「間」に立って2度追いができるように準備をしてからガッと仕掛ける姿が印象的だった。

一方で守備での貢献が高かったが故に、弊害もあった。1stDFを率先してやりきる選手なため、スタートから相手をかき回して60分ほどでお役御免となる。22試合の内先発は14試合と多かったが、フル出場は意外にもなし。フォアザチームの精神は素晴らしかったが、得点が僅かに3点と伸びなかったためか、絶対的な選手にまではなれなかった。


今季は背番号13を背負って戦う。13番はミスターこと高松大樹の背番号だ。高松と言えばクラブの象徴的なシーンでゴールを決めてみせる、持ってる男。そんな彼の後を継いでの13番のプレッシャーは相当なものだろう。しかし伊佐は敢えてその番号を希望した。それがとても嬉しい。
昨年、絶対的な選手になれなかった伊佐の覚悟と勝手に思ってる。これから、伊佐としての新たな13番像を創ってほしい。


27.三平和司(18試合 895分/3G1A)
OH

大分の元気印

大分を愛し、大分に愛された男だったが、昨年限りで契約満了になってしまった大分の象徴。

昨年は同じシャドウのポジションに小塚に加え、新たなに町田、野村、渡、(髙澤)を補強し、田中も同ポジションで起用されるなど、チーム内で一番熾烈な競争があったポジションだった。ゲームの狙いによって組み合わせが変わるので絶対的な選手は居なかったが、三平にとっては厳しいシーズンであったのは確かだろう。
しかし、やはり勝手知ったる大分のシャドウ。長年片野坂監督から求められるプレーはわかっているし、三平のスペース認知と周りを円滑に動かす細やかなポジショニングは光っていた。実際、先発は10試合、途中出場から8試合と戦力として申し分なかった。それでも、大分トリニータというクラブは契約を更新しなかった……それは他の選手と比較をすると戦力としてダブると判断されたからだろう。

三平とプレースタイルが似ていたのは町田と野村。2列目の調整役としてサイドと1トップを糊付けするポジション。スペース認知が高く、技術面でも安心できる収まり所でないと務まらない。
片野坂監督の中での序列は、前線の選手になればなるほど「フル出場」という指標で見えてくると感じている。

野村は18試合中先発が9試合、フル出場が5試合
町田は19試合中先発が13試合、フル出場が1試合
三平は18試合で先発が10試合、フル出場はなし

野村、町田とも怪我があったことを考えても三平の序列が2人を抜けなかったことが窺える。それは何故か?
2人にあって三平になかったのは、ターンという選択肢だったと思われる。狭いスペースでボールを受けるシャドウというポジション。サイドとの関係性を大事にしつつ……というコンセプトは満足にできていたが、相手を背負った時の選択肢が三平には足りなかった。野村は深い切り返しからターンができ、町田はフリックを多用して背後を取れる。三平もフリックでの打開の意図を感じられたが、効果的な場面はあまりなかった。おそらくここが分かれ目だったと感じる。
ボールを保持して押し込む事に挑戦したシーズンで、シャドウの役割はとても大きかった。だからこそ補強をしたし、人員整理は必須だった。

戦力として後塵を拝することになってしまったが故に泣く泣くの満了通知だった。チームの元気印としてメディアのアイコンにもなれるし、ピッチ外での貢献も絶大。そしてなにより大分トリニータというクラブをとても愛してくれていた。だが、非情な事にピッチで他者よりも活躍できなければ、居場所はないという競争は絶対。ピッチ内があってこそのピッチ外、という判断だろう。クラブとしての判断は間違ってないと思う。が、何かが引っ掛かる。

言葉にできないモヤモヤと、今のサッカー界の不条理さと、「1選手」としての尊厳ってなんやろな、と考えてしまう。それがプロだ、と素直に割り切れない。

大分トリニータの三平和司。WBにコンバートされ人間魚雷として逆サイドからのクロスに突っ込んでいた姿や、PO決勝で鼻折ってもプレーしてたが一緒にJ1に行けなかった事、京都から「帰って来て」からは器用な選手に化けて、J3に落ちても残り高松の引退に花を添えて、J2、J1と共に駆け上がってきた三平。本当に本当にありがとうございました。甲府での幸運と、また大分の地に縁があるとこを切に願ってます。寂しい。


31.髙澤優也(24試合 1156分/6G2A)
OH,CF

あ~ざす!

昨年のFW登録で6ゴールと一番結果で答えた選手。加入時はCFとして考えられていただろうが、思っていた以上にシャドウでも適正があったため、監督からすると使い勝手の良い選手だった。高さがあり、ロングボールのターゲットマン(ポストプレイヤーではない)と、サイドでのプレー、そしてなにより決定力の高さが魅力だった。

まずは高さ。この高さだが色々なタイプがあると思っていて、渡みたいにポケットに入って反らすのが上手い「潜り込んでから」の高さ、高松みたいなフワッとしたセットプレーで競り勝つ高さだったり。髙澤はGKからのハイボールの処理に長ける高さだったと思う。高松的な高さと髙澤的な高さは似て非なるものって考える。密集地帯で正確にボールを頭で処理できたり、胸で収めたりできるタイプが高松的で、ある程度スペースがあって1対1の競り合いに強い、落下地点の予測が上手いのが髙澤的な高さ。
リーグ序盤の低迷期(5連敗の時期)のプレッシャーの逃げ所として、髙澤の高さはCFやWBを近くに陣取らせて髙澤競り勝つ→セカンドボールを近いポジションの選手が拾うという形で生かされた。もっとざっくり分けると、高松はポストプレイヤー、髙澤はボックスストライカーだろう。

次にサイドでのプレー。上記のハーフスペースに立ってプレス回避、って所に着想を得てからの派生だろう。スペースがあれば、ある程度サイドに流れてもカットインして内側でプレーしたがる(若しくは指示があった?)から相手のサイドを守る選手を引き連れる事ができる。サイドの選手がついてきたら大外のWBを使ってポケットに入ってリターンを受けに行けるし、ついてこなければそのままシュートまでいける。そして左利きだったので左シャドウとしてカットイン~アウトスイングのクロスでGKとDFの間も狙える(ほとんどなかったが)。ボールを受けてからの選択肢が多いのは対面する守備より優位に立てる。

最後に決定力の高さ。シュート数で見ると知念、田中に次いで髙澤が23本とそこそこ打っているか、ゴールをシュート数で割った値(=決定力)では小塚に次いで2位(0.26)。小塚はシュート数がそもそも2本なので実質チームトップの成績だ。リーグ序盤戦で途中出場でも結果を残していたし、当然の結果だろう。シュートのパターンも多く、速いクロスに滑り込んでのゴール(7節vs清水)や意表をついたロングシュート(8節vs鹿島戦)、セットプレーのデザインされたこぼれ球(33節vs湘南戦)など1タッチの上手さと判断の良さが光った。そりゃ活躍できるはず。

今季は背番号を9に変更。2桁得点も狙えるので超頑張ってほしい。


33.藤本一輝(5試合 103分)

ヌルッとターン

一昨年の天皇杯のトラウマメーカーがまさかの特別指定選手として加入。鹿屋体育大ではなんとなーく長身の根本凌(→湘南)の方が動けるポストプレイヤーみたいな雰囲気があったため藤本に声掛けてたのか!ってのが驚きだった。

リーグ初出場となったのは意外にも早く、5節のG大阪戦だった。シャドウとして途中出場を果たすと、果敢にドリブルを仕掛けて停滞感のあった前線の活性化を果たした。彼の持ち味は積極性。ボールを上手く隠せるため、相手は下手に飛び込めないし、ボールを受けてから身体は外側に向いていてもグッと相手の懐に入り込んで突破ができる。
一方で、ボールの貰い方はまだまだ発展途上。どのラインまでボールを受けに下がるかが曖昧で、自分にボールが入らないときの動き直しまではあまり印象に残らなかった。
プロとしての初年度である今季は、より厳しくなるであろうフィジカルコンタクトで負けない身体づくりとポジショニングに注目したい。


46.平川絢大(0試合 0分)
※2種登録

コロナ禍のせいでユースの試合は全く見れず。そのためどんな選手かわからんかった……すまぬ。
おそらく進学なので、大学サッカーでみたいな~って気持ち。


50.屋敷優成(0試合 0分)
※2種登録

無限のポテンシャル

衝撃。
リーグ戦こそ出場はなかったが、ルヴァン杯GS3節柏戦でトップデビュー。右シャドウとして61分プレーした。この試合で見せたプレーが印象に残ってる。そのシーンは相手CKこぼれ球を自陣のボックス近くからドリブル開始。相手を引き連れながらサイドに流れて難しい体勢からクロス、って形。

何がすごいって、まずボール持ったら攻め急がないチームでカウンターを自分の判断でできる所。ここ数年の大分のサッカーは手堅くはあるが、そこからのアクションが今一つ。若さゆえの勝手かもしれないが、決断できるってのは強み。
そして走力と体幹の強さも凄かった。自陣から敵陣まで約80メートルをドリブルしながら駆け上がり、トップスピードのまま身体を捻ってクロス。近年はシンプルなカウンターを自重するチームになっているので映えて見えた。

トップスピードからのクロスの難しさは身体が流れないように上手く前傾姿勢にして力を逃がさない事と腰の回転、軸足の置き所だと思う。80メートルドリブルした最後にこれができる強さはめっちゃ凄かった。今年、高校3年生。トップチームに帯同できるだけの実力があるのでもっとみたい。



いよいよ明日にはゼロックス。来週から2021シーズンが始まる。はえーよ!
なんとか開幕ギリギリまでにチームの2020レビュー兼2021プレビューを終わらせますので!ウギャー!

写真は大分トリニータ公式サイトゲキサカより引用。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?