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【大分】vs琉球(H) 華やぐ影武者

今季初勝利。よかった。
まずはホッとするとともに、ようやく下平監督の理想と現実の擦り合わせに目途が立ったのかな、と感じました。

立ち位置のハナシ

大分は香川、伊東と左右のSBが揃って初スタメン。俺たち伊佐もスタメンに。そして今季初めて三竿が4バックの左CBで出場をした。
対する琉球はFC東京から期限付きで加入した大森、大卒ルーキーの武沢に池田、草野などクセモノ感の強いスタメン。ベンチに金井、中野、阿部、上原なんかもいやらしい。

タクトは5つ

この日はなんと4点も取っての大勝。そこから見えた今季のサッカーで必要なものは、例えるならば5つの頭脳、でしょう。
今年はフィールドプレイヤーの少なくとも半分が局面を見て、理解して、調整してなんとか成立する非常に難しいもの。ここに挑戦するんだな…と。

5つの頭脳。それは三竿、下田、小林ゆ、町田の4人+根性、といったところ。この試合はピッチ上に4つのスーパーコンピュータと気合が揃ったメンバーでした。4人の指揮者と6人の労働者。

ビルドアップで顕著に

5つの頭脳。彼らの調整力が発揮されるのは自陣からのボール回し。

ということで、自陣からのボール回しを想定。
・ダブルボランチが縦関係になって小林裕紀がDFラインと横並びに
・SHの町田、小林成豪は内側に絞って伊佐もやや下がり目。ここで3-3-3-1
・SHの片側(上記では町田)が1列落ちてボール回しに参加

これが基本。
ここからもうひと工夫。左サイドで循環をしていきます。

・ダブルボランチの小林裕紀の左隣に下田も並ぶ
・同時に三竿が大外、香川が少し絞りながら前進
・小林成豪は香川と立ち位置が被るので、下田が居た位置まで下がる

この循環。2点目はまさにこの形からでした。

上記2つの立ち位置の可変は、相手もいるのでその時々でボールを受ける、呼び込むタイミングが変わってくる。山口戦では受け手と出し手が噛み合わずに循環の隙というか歪みというか…練度の足りなさが露呈。そういった齟齬を手っ取り早く無くすには…このポジション移動ができる選手が調整をする、という単純明快なもの。
上記の2つの図は、立ち位置をわかりやすくした(つもり)が、実際は小林裕紀はDFラインと中盤をふらふらしていたし、三竿や町田、下田は相手の動きを見て絶妙な位置に立ち続ける、というかなり精神的負荷の高い業務だった。

しかし、あくまでこれは下準備。スタートのポジションが4バックに変わったから選手の動きが違うように見えるが、この「ダブルボランチと2列目の選手が下がってのボール回し」と「サイドを起点にポジションを循環させる」2点は片野坂さんの時から継続していること。
今季、苦戦しているのはそこから、のハナシ。これはチーム、選手共に認識している課題。そこへの挑戦が一番見えていたのは、この日「3人は居るんじゃないか」と言われていた小林裕紀であった。

華やぐ影武者

今季の課題。それは2つあると考えられる。それは
・「4人目」の動き
・ボールの失い方
である。

片野坂政権のラスト2年は、ボールは前進できました。それで…⁉となるもどかしい場面が多くみられ、今季もここまでその気配は水戸戦などで顕著に表れています。
3人の循環はうまくいっているが、そこにフタをされるとボールも人も滞ってしまい、相手が帰陣するので一度下げて作り直す。今年は立ち位置と動かし方を変えて、やや強引にこじ開けに行ったがその裏を突かれていた。

それを好転させたのが小林裕紀でした。
あくまでも例なんで○○分の場面!とかではありませんが、「左サイドで3枚を循環させて突破→相手にクリアされて…」という想定で、小林裕紀のポジショニングの妙を追っていきます。

【状況】
①左サイドで下田、小林成、香川でポジションを循環させながら相手SB-CB間を香川が突く
②さあクロス!という場面で岡﨑に掻き出されてしまい被カウンター

①での小林裕紀の立ち位置は下田と小林成の内側後ろ。そこからボールサイドにググーッと寄せて3人の循環を補強する。これで今までは3人の循環の中でバランスを取る役割を担うことが多かった下田が前に出やすくなり、相手SBだけでなくSHの池田も押し下げることができる。
別の場面で小林成がどこにパスを出すか迷っているときは背後から攻め上がりパスを呼び込むなんてこともしていた。
しかし、敵陣深く。相手にはじかれて、苦手な被カウンターを食らってしまう。
②では攻撃→守備でボランチの小林裕紀からしたら自分の背後でプレーをさせたくない場面。まずは張って背後のFW(草野)を捕まえに行く。距離的に難しいとなると三竿がカバー。これで大抵の場面は防ぐことができた。
小林裕紀がオーバーラップして前線の高い位置にいる場合は下田がバランスを取って中盤内側での守備を行う。

くどくどと書いていくと、とても難しいことをやっているように見えてしまうが、ラスト1/3での約束事は
・最終ラインとその前に2人ずついる事
・3人の連携で崩す時には内側の選手がもう1人サポートする
の2点だけ。

小林裕紀が3人に見えたのは、自陣で最終ラインからサイドを押し上げたり、攻撃のリスクを負う役割をこなしたり、カウンターではその「読み」を存分に生かしてピンチになる場面を潰していたから。

彼を中心に三竿、町田、下田と試合の機微が触れる事のできる選手たちが均衡と調和を保つ。
わかる奴がやる。とても単純明快。そして単純明快が故に相互理解と個々の技術が試されるのが、今季の難しさ。その難しさに真っ向から向かって生き生きとプレーする小林裕紀は本当に華やかさがありました。

傲慢に、欲張って

この日の大勝は満足のいくものだったか…
個人的には失点は蛇足だったし、あと3点は取れた試合だったと傲慢にも感じてしまった。今年は「追われる」側なんだからJ2くらい蹂躙してほしいトコロではある。正直。

思っていたより難しいJ2で苦悩しながらも、サバサバしてる小林裕紀がたくさん身振り手振りでコーチングして自らも動いて、喜怒哀楽を所々で溢しながらピッチ全体を支配しようとする様は、まさに圧巻でした。傲慢に、欲張って、とても挑戦的。我々のシーズンはここからはじまる。

選手画像は大分トリニータ公式Twitterより

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