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いつかの空の君 公開5周年 キミの始まりに迫る

『いつかの空の君』公開から5周年

2018年3月21日。
気が遠くなるほどの永い時間を掛けて個人制作に取り組んできた自作ゲームRPG「いつかの空の君」を公開しました。
どれだけの期間がかかったのかは(振り返るのも辛い為)あえて伏せさせていただきますが、2つ目の作品「2ndEDEN」の公開からまもなく構想を始め、その時から上述の2018年まで延々と作っていました。
振り返れば、よくもまぁまともに遊んで60時間なんてぞっとするようなRPGを作ったものだなと、この作品を顧みるたびに思います。
それから毎年3月21日、公開○周年と呟くだけなのも味気ないので、何かしらの催し物を行っていました。
今年はファイルの整理作業中に、この物語を作るにあたって何度も練っていたであろうプロットの形跡を見つけましたので、それを参照しつつ、実際に出来上がったものと比べて面白かったものを掲載しようと思います。
言わずものがなネタバレ前提です。
どうか「いつかの空の君」という偏屈なゲームに付き合ってくださった人達にお届けられれば幸いだと思います。

ノートに描いたとあるキャラクターの正体の原案

幻の学生篇!?

テキストデータのフォルダを漁っていますと、あらすじやキャラクターの設定を書きまとめたファイルが出てきます。
その中の、あらすじをまとめたテキストに書かれていたプロットの一つに

◆第一章 テンオウ・セル内の教育施設に通う、二人の少年少女。その性格ゆえにあらぬレッテルを貼られた『ジン』。ある事故が原因で、遅れた時期に通学し始めた『キミ』。ひょんな事から出会った二人は、テンオウ内にはびこる、ある噂を解決する事になる。反発しあいながらも、次第に互いを認め合う二人。そして二人は、知らぬ間にテンオウ内で頻発している猟奇殺人 『影縫い』に迫る事になるのだが…。

というものがあり、更にキャラクターの設定テキストにキミ達の通う学園(あらすじテキストでは教育施設と表記)の担任やクラスメイトの設定が書かれていました。
キャラの設定文にはこんな一節を書いていて

★『影縫い』
 ・猟奇殺人犯。
 殺害現場には、必ず影を塗ったかのような人型の血の跡が残るため、
 『影縫い』と呼称されている。
 テンオウの幾つかの区画で同様の殺人事件が起きており、
 いずれも『影縫い』の犯行であると予想されている。

★ドウモト警部
 ・胴元 博
 テンオウ13区画県警の警部。
 『影縫い』の事件を調べ、追っている。
 『影縫い』被害者とタツミ氏の傷痕が似ている事から、
 ジンに目星をつけ、マークし始めるが…。

テンオウ内で起こる猟奇殺人事件を巡る内容だったみたいです。
『影縫い』と書いてあることから、犯人をジンだとミスリードさせる構想でもあったのかと思います。
『学生篇』は本編が始まる前日譚として考えていたエピソードで、本編が始まる前のキミとジンの接点を作ろうとした内容だったのですが、考えているうちになんだか安直だなと思い、冗長なのものあって没にしたんだろうという覚えがあります。
タイトル放置の裏OPデモにこの名残があると言えますね。
もっとも、今回見つけたテキストのキャラ設定にリセやサチカの名前は無かったのですが…。

ペンドラゴン・もう一つの派閥と内紛篇

それから少し期間が空き、改めて練って書いたのであろうあらすじのテキストデータにこんなものがありました。

■ペンドラゴン内紛編
ペンドラゴン内でのラシード派とキム派の内乱に巻き込まれるジン達。
どちらからも敵視され、流されるままに両者との戦いに巻き込まれる。
キミのやりたい事や、バッシュの嘯き、ペンドラゴンという組織の謎が言及される章。

実際のゲームで言えばChapter.8の時系列に当てはまるエピソードで、ペンドラゴンにはラシード派と対立するガーランド派…ではなく、キム派という派閥があったようです。
キムという人物は

・キム=ロージン(金魯仁)
治安組織『ペンドラゴン』のトップで、第四番部隊隊長。
ペンドラゴン内では右翼の頭目として知られ、ペンドラゴンのセルとしての独立を促している。
短気で直ぐに頭に血が上るが、冷静時の達弁さは組織随一。
常に自分は何かの中心で活躍し、その実感を得ないと気が済まない。
兵器の扱いもさることながら、鉄をも切り裂くその剣の腕から、
『ゴールドドラゴン(黄龍の剣聖)』という仇名で恐れられている。

といった苛烈な人物でした。
構想ではこのキムがラシードに反旗を翻すのですが、何らかの事情で命を落としてしまいます。
その後、キムの命を奪ったのはジン達の部隊だとされ

・ユゥマ=カラン(雄馬唐)
キムの右腕で、第四番部隊の参謀。
育ての親であるキムを誰よりも敬愛し、キムの理想に心酔している。
卓越した電子戦のエキスパートであり、組織内で一・二を争う情報技術の持ち主。
ある盗賊の軍団を、たった一人で壊滅させたことから、
『ロジック・スィーパー(電子の手繰り手)』の異名を与えられる。

という人物の駆る巨大兵器との戦いを繰り広げるプロットとなっていました。
この段階では、上記のユゥマとの戦いの中で天輪の転移装置が発動し、豊穣世界に飛ばされる展開となっていたようです。
後にまたプロットを見直して冗長だと判断したので、このキムとユゥマと戦うエピソードは削られ、ゲーム本編の形に収まったのだと思われます。

おキミさんの出生

当時描いたと思しきキミのデフォルメ

何の能力も持たない、人一倍並外れた気合だけが特徴の主人公・キミ。
ジンをはじめ他が異能揃いの仲間達なのに対し、キミは先天的な能力を一切持たないキャラクターとしました。
(後に異能を手にしますが、あくまで後天的に入手した能力とします。)
しかし、初期設定では

◆彼女は反転存在である。
彼女の父親は因果装置の理論の研究者で、自ら導き出した因果の理論にて、『麻比 君』という人物を二つの“対なる”存在に分割した。
元の彼女の記憶を保持した、オリジナルの“君”と、分割によって生じた、反転存在である“キミ”である。
しかし、オリジナルの“君”は、分割のショックにより、昏睡状態に陥り、
身体の構成要素の欠落から、色素の脱色する“アルビノ”状態となった。
一方、分割によって生じ、辛うじて『麻比 君』を示す記憶のみ継承した“キミ”は、オリジナルの“君”の代わりとなり、その後の生活を送る事となる。
その後、“キミ”は『麻比 君』として生活し、後にジンと知り合う事となる。
(この分割は、第一章の数ヶ月前に発生、“キミ”本人には事故として知らされる)

と、何やら最初から複雑な事が書いてあります。
親父がテンオウの研究者だったみたいですね。
ちなみにゲーム内のもう一人のキミこと"空の君”がアルビノ化している理由は、キミの持つ本質的な「誰かを助けたい・背中を押したい」という願望を強烈に捻じ曲げ否定した結果、強いストレスが生じ髪が白髪となったという設定になっています。
更に幾つもあったキャラのプロットの覚書をみると

  • 元々キミは短命で、10歳でその生涯を終えようとしていた。

  • それをノゥエルの実験で2つの存在に別けられた。

  • 上記の段階で、戸籍を抹消されたもう一人の"君”が発生した。

など、初期から概念に干渉する能力を得ているような設定や、キミが二人存在する構想があったみたいです。
更にこの病弱な時代のキミは実はジンと出会っており、その時のことを描いたテキストデータもありました。
ゲーム本編ではフロントラインで初めて出会ったジンとキミですが、初期構想では小さな時に既に一度で会っていて、しかし何らかの理由でお互いその事を忘れていたという構想だったみたいです。
安直な設定だから変えたんでしょうね…。

永い時を経て、考えていた事は変わっていく

ここまでゲームと違う初期プロットの設定を取り上げて来ましたが、他にも今とは違うキャラクター名の設定テキストや、ゲームのタイトルが付く前の最初期の構想なんかもあったりしました。
どうやら最初はヒロイン選択制で、キミ、リエッタ、アスラ、ピッツのいずれかから選ぶ予定だったみたいです(苦笑)。
初期プロットを改めて見ると、そのエピソードは全32章と現在の形よりも長大なものとなっていました。
それが作業的な妥協があったり、より複雑に・濃密な内容にするために諸々を変更していき、今のような形に落ち着いたのだと思います。
振り返って改めて、よくこれを何年も掛けて形にできたなぁという思いと、今を持ってまだそれは終わっていないと、より気持ちを強くする事ができたと思います。
今回参照した初期プロット群は、また来年に機会があれば、どこかに公開でもできたらなぁと思います。
ここまでお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
来年のこの日に、覚えていればまたお目通しください。

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