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ツリーベンチの作り方、その1。

 こんにちは。西願です。

 今日はツリーハウスならぬツリーベンチの作り方について考えたいと思います。

 幸いなことに、私たちは戸建て住宅にすんでいて、外出を自粛しても、家の庭で遊ぶことが出来ました。庭には大きく育った椛の木があり、ブランコをつけるなど、子供達が小さな頃からお気に入りの遊び場の一つでした。そこで、長引く休校期間を利用して椛の上にツリーベンチをつくろうということになりました。

 最初に決めたルールは、椛本体には傷をつけないこと。つまり釘やネジなどで直接椛に木材を固定することはしない、ということでした。建築士として普段から建物を設計している訳ですから、子供達にええところを見せようと簡単な図面を作っていざ施工に取りかかりましたが、自由に枝を広げた椛の木を相手に、図面通りに行かない部分が出てきて大苦戦。

 そこで、改めて、完成形を図面化してのぞむ、という普段の仕事と同じ手法が生の自然相手には通じない、ということに気付きました。そうとわかれば、手法を変えよう、ということで、適当に刻んだ材料を準備し、木の形にあわせてつなぎ合わせていくことにしてみました。

 そうすると、それまでの苦労が嘘のように、作業がどんどんはかどりました。木の上で、枝々に材料をあてがいながら、子供達とあーでもない、こーでもないと議論し、試しに取付け、うまくいかなければ継ぎ足し、といった具合に、まるで木の形にあわせたオーダーメイドの服を作るように、形を決めていきました。子供達も目の前で自分たちが考えたことが形になっていくライブ感に大興奮で、見たことのない不思議なベンチが出来上がりました。

 今回の経験を通じて気付いたことを以下にまとめてみたいと思います。


①制約と自由度のバランス
粘土をこねるようになんでも自由に形を作れるわけでは無く、30mmx120mmという決まった断面の板を適当な長さに刻み、それを木ネジをつかって止め付ける、という、材料と作り方の制約があったことで、逆にある種の表情、統一感をもった形態が生み出されたように思います。結果として椛の枝振りといった個性が表出したような、あるいは、椛の形の可能性を拡張したような、この椛にしかない形を顕在化できたように思います。


②材料と作り方の"プロポーション"

→その2に続く。

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