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在宅か都心か


しあわせホテルの宇賀です。

〇僕の産業資本
 在宅勤務を開始して3週間が経ち、現在借りている都心のオフィスが必要かどうか僕は検討してみることにした。
 工場で働く場合は機械や土地建物、大量電力といった大掛かりな産業資本が必要だから工場に出勤せざるを得ない。
 しかしオフィスで働く場合の「産業資本」って一体何だろう?
 僕の設計事務所をケーススタディーとして考えてみる。
 僕の事務所の産業資本は・・・、
①パソコン
②コンピューターソフト
③コピー機・プリンター
④ネット環境
⑤書籍・参考資料
⑥都心のオフィス
 以上六つ。僕の産業資本はたったこれくらい。
 いや大企業であっても基本的にそう変わらないはずだ。
 上記①~④は自宅にセットできるし、⑤は電子化すれば自宅対応OK。
 残るは⑥の「都心のオフィス」だ。

〇都心のオフィスは必要か?
 都心のオフィスに必要な機能って何だろうかと考えてみる。
「作業場」
「コミュニケーションの場」
「休息場」 
「見栄」(ブランド・シンボル性)
 以上四つ。
 「作業場」と「休息場」は自宅でも大丈夫だ。
 「コミュニケーションの場」はオンラインと電話でかなり対応できることが分かった。またスタッフとは週一回会った時にお互いよく話すから、無駄話の総量はコロナ前と大きく変わらない。
 「見栄」とは名刺に記載されるオフィスの住所だ。10年前ならデザイン事務所の場合、住所が「北千住」よりも「南青山」にある方がデザイン力があるように感じたけど、現在なら「北千住」にある方がユニークなことやってくれそうだとむしろポジティブに解釈されてしまう世の中だ。
 以上の結果を踏まえると僕の場合、都心にオフィスを借りる必然性はそんなに高くなさそうだ。
 
〇都心サイクル
 じゃあ、すぐに都心のオフィスを解約するかというと引っかかるものがある。
 僕は卒業以来、品川→中目黒→九段下→千駄ヶ谷→鎌倉→赤坂と殆どの職場が都心だった。僕は都市計画を学んでいた学生の頃から「都心」で働くことに価値があると思いこんでいた。
 東京都心には「集積の価値や相乗効果」があり、そのサイクルに参加することで何かしらの便益や機会を享受できると思っていたのだ。
 だとすると次に考えるべきはこの「都心サイクル」は存在するのか、もしくは僕はそこに参加できているのかどうかの確認だ。
 都心サイクルには3つのタイプがあると思う。
①偶発的な出会いサイクル
「多様な人がたくさん集まる都心では偶発的な出会いがあり、そこから新たな価値が生まれる」 
 こんなコピーは意識高い系のホテルやシェアオフィス、カフェのコンセプトに今でも散見されてますね。
 だけど僕はそのような場所に行く気にならないし、僕の仕事は大体において旧知の人からの紹介が殆どだし、新しい友人に関しても僕がもし都心で働いていなかったから出来なかったというわけでもない。パーティーで人と知り合うということは確かにあるけど、それは毎日ではないからたまに横須賀線で都心に行けば済む話だ。
 ということで僕は都心の「偶発的な出会いサイクル」にはそもそもあまり縁がなかったようだ。

②消費サイクル
「都心にはあらゆるジャンルに関して最先端かつニッチなニーズに対応したショップが多い。」
 僕の趣味はミニカーコレクションだけど、10年前までは銀座や渋谷のマニアックなミニカーショップで買い付けていたが、今は完全にネット通販だ。多くのジャンルにおいても同様だろう。
 飲食やファッションの一部のように現地じゃなきゃだめだというものは今後もあり得ると思う。だけどそれは毎日の日常というわけではないからたまに都心に行けば済む話だ。
 ということで今後も都心の「消費サイクル」とは非日常的に参加すればOKだ。

③刺激サイクル
「都心には芸術文化施設の集積があり、イベントが多く、都心を闊歩するだけで文化的刺激や情報のシャワーが浴びられる」
 これは70~80年代の渋谷におけるセゾングループの商業開発戦略と一緒だけれど、いまだに都心の大規模開発のコンセプトの根幹をなしている幻想的な文脈だ。
 ネットからの情報量が爆発的に増加してしまった今、都心のリアルな場が提供する情報の質と量は相対的に年々減少しているし、それが特別なものだという意識は現在の人にはそんなにはないはずだ。
 ということで都心の「刺激サイクル」の一部はネットにどんどん代替され、その地位は今後も相対的に下がっていく一方なのだろう。

 以上から「都心サイクル」に対して日常的に参加する必要性はあまりないということで、やはり都心にオフィスを借りる積極的な理由が僕には見当たらないのであった・・・。

 次回は、この僕なりの分析結果を踏まえて、「都心勤務」と「在宅勤務」のどちらに舵を切るとしても今後、何をしていくべきかを考察したいと思う。


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