ファイナンシャル・プランニングにおける収入の考え方

ファイナンシャル・プランニングのプロセスにおいて、データ収集では、収入・支出の情報も必要になります。

さて、収入の情報は何に基づくのが正確か、収入の分類に合わせて見ていきます。

所得税法

まず、所得税法上、所得の種類は給与所得、事業所得、退職所得、雑所得、利子所得、配当所得、譲渡所得、不動産所得、山林所得、一時所得の10種類に区分することができます。国税庁や日本銀行の知るぽるとが参考になります。

会社から受け取る給料はもちろん給与所得ですが、賞与も給与所得に含まれます。また、公的年金給付は雑所得です。株式の配当は配当所得ですが、売買益は譲渡所得になります。

公的年金制度

日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の方が加入する厚生年金保険の2階建て構造です。会社員・公務員などは第2号被保険者で、2つの年金制度に加入します。第2号被保険者に扶養されていて、年収130万円未満の20歳以上60歳未満の配偶者は第3号被保険者です。それ以外の農業者、自営業者、学生、無職の人などは第1号被保険者になります。

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければいけません。
厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。

主な所得による分類

重複もあるものの大きく分けると、以下のように分類できそうです。

  • 給与所得者(第2号被保険者・雇用者)

  • 自営業(個人事業者)

  • 年金受給者

  • 主婦・主夫(第3号被保険者)

  • 学生

  • アルバイト・パート

  • 無職(完全失業者)

配当所得や株式等の譲渡所得が主な収入の投資家もいると思います(上記分類では自営業に近くなると思います)。
なお、いずれも配偶者がいる場合には、夫婦合算のファイナンシャル・プランニングが重要になります。

可処分所得

可処分所得は、いわゆる「手取り収入」のことで、収入から税・社会保険料を引いたものです。家計調査の定義だと、実収入から非消費支出を引いたものになります。非消費支出は直接税、社会保険料、その他の非消費支出を足したものです。

ファイナンシャル・プランニングにおいて特にデータ収集したい収入は可処分所得になります。

雇用者と給与所得の源泉徴収票

会社に雇用されていて主な所得が給与所得で確定申告が不要な人は給与所得の源泉徴収票が正確性の高い収入に関する情報になります。

「支払金額」はいわゆる「年収」です。支払金額から給与所得控除額を引いたものが「給与所得控除後の金額」です。給与所得控除額は収入に応じた計算式があります。「所得控除の額の合計額」は給与所得控除以外に控除される金額の合計額です。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、基礎控除など様々な控除があります。「源泉徴収税額」は「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた課税所得金額に所得税率をかけて算出されます。基本的には「支払金額」から「源泉徴収税額」を引いたものが可処分所得になります。

自営業と確定申告

一定の所得のある個人事業主は確定申告が必要になります。特に、不動産所得、事業所得、山林所得のある人は青色申告をすることができます。その場合、いわゆる青色申告決算書の作成が必要になります。

基本的に売上から売上原価と経費を引き、さらに青色申告特別控除を引いたものが所得金額になります。

ねんきんネットと公的年金シミュレーター

公的年金の受給額は日本年金機構のねんきんネットの「将来の年金額を試算する」が最も正確です。

また、厚生労働省の公的年金シミュレーターも簡易にシミュレーションができます。

公的年金は、国民年金か厚生年金か、などに加え、繰り上げ受給・繰り下げ受給によって月々の受給金額が大きく変わります。

収入のシミュレーションの考え方

ファイナンシャル・プランニングのプロセスで現状のデータを収集したら、ファイナンス状態の分析やファイナンシャル・プランの作成を行います。その際、将来の収入をシミュレーションします。

給与所得者の場合、退職年齢を仮置きし、給与所得の源泉徴収票を経過年数0時点の可処分所得として、毎年一定の昇給率でシミュレーションする方法があります。その方法だと、年齢が高いときの年収が極端に大きくなりがちなので、ある年齢から昇給率を変えたり、場合によっては給与が下がるようにします。家計調査の世帯主の年齢階級別の可処分所得を用いて年齢ごとの昇給率を推計することもできます。

職業、役職、都道府県なども考慮したシミュレーションにできるとよりよいですが、通常そこまで詳細なデータを入手してシミュレーションすることは困難です。
なお、公務員の場合には、人事院から行政職俸給表が提供されているので、転職しない前提で残業を除けばより正確なシミュレーションができます。

公的年金は前述のねんきんネットや公的年金シミュレーターが正確性が高いです。企業年金や確定拠出年金は利回りを仮定してシミュレーションします。

退職金は企業ごとに異なるため、平均的な金額など仮定が多くなる勘定科目です。厚生労働省の賃金事情等総合調査が参考数値として利用できます。

自営業の場合、確定申告で計算した所得金額をもとに事業所得をシミュレーションしますが、給与所得者と比べて、毎年の分散が大きくなりやすいと思います。

資産運用と収入

資産運用のシミュレーションは、資産の積立フェイズと取り崩しフェイズで分けたほうが良いです。資産の積立フェイズでは、長期積立を軸に分配金は基本再投資して所得が発生しないようにします。短期の売買を行っている場合は、期待収益率を仮置きしてシミュレーションすることもできますが、不確実性を考慮した金融機関が行うようなシミュレーションも検討したほうが良いです。

取り崩しは老後の資産設計で重要になります。資産運用の収入シミュレーションと老後のファイナンシャル・プランニングについては別記事に書きます。

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