全米株式長期投資のリターン
米国株インデックスのS&P 500やCRSP USトータル・マーケット・インデックスについて以前記事で紹介しました。
この記事では、米国株式インデックス長期投資のリターンの実績を調べます。
S&P 500とWilshire 5000トータル・マーケット・インデックス
S&P 500(Standard & Poor's 500 Stock Index)は、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数です。なお、本名称は、同社の登録商標です。1928年1月3日を基準とする浮動株時価総額加重株価指数で、構成銘柄の選定については選定は指数委員会の裁量によって行われるとし、ファクトシートに記載されています。
米国株をS&P 500よりも広範に網羅した株価指数としてCRSP USトータル・マーケット・インデックスやWilshire 5000トータル・マーケット・インデックスがあります。CRSP USトータル・マーケット・インデックスは、Center for Research in Security Pricesが算出するアメリカの投資可能な全株式のインデックスです。Wilshire 5000トータル・マーケット・インデックスは、Wilshire Associatesが算出するアメリカの約3600社程度を含む株式のインデックスです。
以下のnoteで、SBIアセットマネジメントのSBI・V・全米株式インデックス・ファンドはCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動するとご紹介しました。そして、SBI・V・全米株式インデックス・ファンドはバンガードが運用を行う「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(VTI)を主要投資対象としています。
VTIは、2005年4月22日まではダウ・ジョーンズUSトータル・ストック・マーケット・インデックス(旧名称. ダウ・ジョーンズ・ウィルシャー5000インデックス)、2013年6月2日まではMSCI USブロードマー ケット・インデックス、その後はCRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークにしています。
CRSP USトータル・マーケット・インデックスは残念ながら、無料だと長期の時系列データの入手は困難です。一方、Wilshire 5000トータル・マーケット・インデックスは、Federal Reserve Economic Data(FRED)から取得することができます。また、S&P 500も過去10年分をFREDから取得できます。
FREDは、セントルイス連邦準備銀行(FRB of St. Louis)の経済研究部門が提供する経済データです。金利や物価などの様々なデータを取得できます。
以降では、全米株式インデックスとして、CRSP USトータル・マーケット・インデックスの代わりにWilshire 5000トータル・マーケット・インデックス(以下、Wilshire 5000)の長期リターンを調べます。
全米株式インデックスの長期リターン
Wilshire 5000のインデックスの推移は以下のようになります。なお、1980/1/2時点の数値は1.86で、2023/12/29時点の数値は239.94となっています。129倍です。
原系列だと、直近のほうが急上昇しているように見えてしまうため、リターンの時系列に変換します。ここでは、250営業日前(約1年前)の数値と比べたリターンを算出します。またS&P 500のリターンと比較します。
可視化すると必ずしも直近だけ大きなリターンを得られているわけではなく、良いときで40〜80%の超過リターン、悪いときで40%程度の損失になっていることがわかります。また、Wilshire 5000トータル・マーケット・インデックスとS&P 500は視覚的にも非常に相関が高いことが見てとれます。投資対象として、全米インデックスが良いかS&P 500が良いかは、確かに平均リターンの差はあるものの、米国のインデックスに投資するか他のインデックスにするかどうかと比べると大きな違いはないように思えます。
1年間はおよそ250営業日です。Wilshire 5000トータル・マーケット・インデックスに1年前(250営業日)、3年前(750営業日)、5年前(1250営業日)、8年前(2000営業日)、10年前(2500営業日)、15年前(3750営業日)から投資していた場合、どのくらいのリターンになっているか見てみます。
横軸が年月で、色がその時点の何年前から投資を始めたかを表しています。縦軸がリターンの大きさです。
直近、2023年12月時点だと5年前から投資していた場合、90%程度のリターン(約2倍)になっています(紫色の線)。さらに2014年や1999年、1987年頃に5年前から投資を始めていると200%以上のリターンになっています。一方、2008年頃は1〜5年前から投資を始めていた場合50%程度損失になっています。
さらに期間を広げて10年前まで見てみます。
2021年や2019年の10年前から投資していた場合、リターンは400%以上です(水色の線)。
15年前まで見てみます。
直近では600%以上のリターンになっています(ピンク色の線)。1997年、1999年の15年前だと1000%以上のリターンなっている時期もあります(10倍以上です)。またピンク色の線はマイナスになっている年月がありません。仮にタイミング悪い時期に買ったとしても、15年という長期で全米インデックスを保有し続けるといつかはプラスになる可能性は高そうです。
補足
もちろん、過去のマーケットと同じように全米インデックスが長期でリターンをあげる保証はありません。投資は自己責任です。
とはいえ、今回のように投資開始時期ごとの長期リターンを見ると、金融庁も掲げる長期投資や積立投資の有用性が視覚的にも確認できます。
免責事項
本記事に記載された情報は執筆者にて判断した情報源を元に個人が作成したものであり、所属組織が作成したものではありません。
本記事に記載された内容は、資料作成時点においてのものであり、予告なく変更する場合があります。
本記事の内容および情報の正確性、完全性等について、何ら保証を行っておらず、また、いかなる責任を持つものではありません。もし集計ミスなど見つけられましたらコメントください。
本記事は、投資や個別金融商品を勧めるものではありません。投資は自己責任です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?