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第九回:相互繁栄するウェルビーイング

こんにちは、ウェル・ラボラトリーズの金子迪大です。
 
前回は社会の中で生きる人に向けて、利己的でも利他的でもなく、相互繁栄的なウェルビーイングを高めることをお勧めしました。今回はその続きです。


相互繁栄するウェルビーイングの難しさの原因

人によっては自他のウェルビーイングを両方高めるのは容易に感じられ、人によっては難しく感じられます。何故でしょうか。いくつか理由はありますが、その理由のひとつは現代社会において利己的なウェルビーイングを選択することが一見有利に見える構造にあると思われます。
 
詳細は後日説明しますが、人類を含む生物において、協力と裏切りはいつものことです。生物は自分の遺伝子を多く後代に残すために、同じ種族に対しても他の種族に対しても裏切りをして利己的に行動します。
 
しかし、人類を始めとして協力をする動物も多く存在します。特に人類は過去数百万年にわたり集団生活を営み生きてきました。その中では、同じ集団に属しているメンバーと協力して生きていかなくてはなりませんでした。特に狩猟採集社会ではメンバー間の地位の上下はあまりなく、食糧の保存技術も未発達でしたので誰かが食べ物を独占するというようなこともありませんでした。しかし農耕社会以降、土地や農耕具、建物などの希少な資源を誰が多く持つのかという争いが生じました。そこで社会階層、つまり地位が生まれました。地位が高いと希少な資源を手に入れられる、そして希少な資源の数は限られている。さらに長い間同じメンバーからなる集団を形成してきた人類は、産業革命以降急速に地域コミュニティを離れ始めました。それまで農村で小麦や米を作っていたのが、都市に出て工場で働くようになったのです。それまで人類にとっては他者から仲間外れにされることは死を意味しました。村八分、と言われますが、コミュニティからの追放は非常に大きな罰だったのです。しかし、これは同じコミュニティに長く属さなくてはいけないからです。生まれ育った村から都市へ移動することで、良く言えばしがらみから解放されました。それと同時に、これまでほどは他者に気を遣う必要がなくなりました。
 
時は下り、近年の情報化の流れにより人々は物理的空間を超え他者と繋がることが出来るようになりました。しかも、SNSでは匿名で様々なコミュニティに入ることが出来るばかりか、自由にいなくなることも可能です。何か悪いことをしでかしてしまっても、アカウントを削除して新しくアカウントを作成すれば素知らぬ顔で再び同じコミュニティに参加することすら可能です。また、終身雇用制で同じ職場に長くいるのが当たり前の社会から、特に若い世代では転職が当たり前になってきました。
 
このように社会が変化するとどうなるでしょうか。利己的なウェルビーイングを高めることが個人にとっては最適解になってしまうのです。これは現代社会における大きな課題です。この課題の詳細や対処方法、近年新しく希望が持て始めたことなどについては次回以降折に触れて説明します。

ウェルビーイングは奪い合わなくて大丈夫

一方で、この社会にはまだウェルビーイングの量には余裕があるため、利己的なウェルビーイングを目指すのではなく相互繁栄的なウェルビーイングを目指すことが出来る余地は十分にあります。ウェルビーイングの奪い合いを避けることが出来まるのです。
 
第八回で見てきたように、利己的なウェルビーイングも、利他的なウェルビーイングも、誰かが苦しみを抱えてしまいます。だからこそ私は相互繁栄的なウェルビーイングを推奨しているのですが、他の人のウェルビーイングに配慮しなくてはならないというと、「それでは自分のウェルビーイングを上げられないじゃないか」という人がいます。話を聞くと、社会におけるウェルビーイングの総量は決まっていると考えているようです。なるほど、もし社会においてウェルビーイングの総量が100に固定されていたら、自分が60取ったら相手は40しか取れません。
 
では、実際にウェルビーイングの総量は決まっているのでしょうか。私は、もしかすると総量は決まっているかもしれないけれど、現在はまだ実現可能なウェルビーイング総量に全く届いていないと考えています。つまり、総量が100だとしても、現在は10くらいしか社会に行き渡っていないと考えています。言ってみれば、目の前にたくさんの果実が実っていて食べきれないのだから、他の人が食べようとする果実を横取りするのではなく、手の届くところにある余っている果実をお腹いっぱいに食べれば良いのではないかということです。
 
これは、ウェルビーイングという概念がまだ広く行き渡っていないこととも関連があります。この文章を読んでいる人はウェルビーイングに興味がある人だと思います。そのため、おそらく自分のウェルビーイングを気にしたり、自分のウェルビーイングを向上させる行動習慣を身に着けているかもしれません。では、あなたの友人や家族、同僚はどうでしょうか。ウェルビーイングには配慮せず、周りに流されて惰性に身を任せたり、逆に過剰に自分を追い込むような生き方をしていませんか。そのような人たちが自分の、そして他人のウェルビーイングに配慮するだけで、社会全体のウェルビーイングは向上していくでしょう。
 
さらに言うと、あなたは自分のウェルビーイングを向上させる際に、上手く向上させられないというもどかしさを感じていませんか。残念なことに、ウェルビーイングを正しく向上させる方法は社会に行き渡っていません。あるいは、あまり効果のない方法が喧伝されています。正しくウェルビーイングを向上させる技法を身に着けることができれば、他者のウェルビーイングを下げる必要なく自分のウェルビーイングを、そしてさらには他者のウェルビーイングも向上させられるでしょう。

ウェルビーイングの総量は拡大する

それに、もしかしたら総量は決まっていないかもしれません。特に対人関係におけるウェルビーイングというのは、自分のウェルビーイングも相手のウェルビーイングも両方上げることが出来ます。皆さんは、幸せそうな人の側に行ったら自分もハッピーになった、という経験をしたことはありませんか。幸せのおすそ分け、などと言う人もいるでしょうが、喜びを含めた感情というのは伝染することがいくつもの研究から知られています。そのため、あなたのウェルビーイングが高まると他の人のウェルビーイングも高まりやすいのです。あるいは、人助けをすることで自分は善い行いをしていると認識し、相手にお礼を言われることで社会集団の中で価値を認められているという実感を得られることもあるでしょう。このケースも自分と相手双方のウェルビーイングが上昇する例です。
 
近現代のテクノロジーの発達は人々の不便さの解消を通してウェルビーイング向上に寄与しているとも言えます。鉄道や自動車、飛行機があれば移動範囲が拡大し、今まで行くことが出来なかったところに行けます。好奇心を満たしたり、遠く離れた家族と会うことが出来るようになりました。家庭用電化製品は家事の時間を短縮し、自由を増やしました。医療および製薬技術の発達により健康で長生きできるようになりました。人類はこのような便利さにすぐに慣れてしまう結果、総合的なウェルビーイング評価にはなかなか現れてこないのですが、ウェルビーイングを構成するひとつひとつのカテゴリーごとに見てみると確実により善い状態に近づいています。古代中国の始皇帝は不老不死を求め水銀入りの薬を飲んだという伝説がありますが49歳で亡くなっています。王様でもない日本人の平均寿命は現在80歳を超えています。このようなテクノロジーは誰かひとりだけのためではなく多くの人のウェルビーイングを向上させているのです。
 
日々の行動を修正することによって日常生活の中で周囲の人とともにウェルビーイングを高める技法はたくさんありますし、テクノロジーの発達が金銭報酬という点で資本主義と結びついているのでこの先テクノロジーの発達は続いていくでしょう。ウェルビーイングの総量は増やすことが出来るし、増え続けていくのです。

まとめ

相互繁栄的なウェルビーイングを達成するには他者と協力する必要がありますが、現代社会では利己的な行動が有利に見える場合もあり、簡単に達成することはできません。しかしながら、ウェルビーイングについて正しく理解することで他者のウェルビーイングを低下させることなく自分のウェルビーイングを向上させる余地はまだまだあります。何より、自他ともにウェルビーイングを高めるような行動も存在しますし、これからも続くテクノロジーの発達は人類のウェルビーイングを益々高めていくでしょう。次回以降も相互繁栄的なウェルビーイングを達成する難しさと対処法について考えていきたいと思います。

 
あなたがウェルビーイングな人生を送れることを心から願っています。
 
 
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ウェル・ラボラトリーズHP:https://well-laboratories.com/
 
 
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