#01 もし、あなたが介護に直面したら
介護離職をせず、介護と仕事を両立するために、働く皆様にとっていただきたい行動、心に留めておいていただきたい事柄について
2017年3月発刊COCORO第4号に掲載された内容をもとに5回に分けて掲載します。
人生100年時代、働き続ける年齢も高くなっています。
そして働くみなさまの誰もが、家族の介護に直面する可能性があります。
しかも、介護は予告なしでやってきます。
そのとき、どうか介護の悩みをひとりで抱え込まないでください。
どこへ行けばいいのか、何をすればいいのか…。
何よりも大切なことは、ひとりで抱え込んでしまい、後悔するような早まった判断をしないということです。
介護のために、それまで勤めていた会社を辞めてしまう「介護離職」もまだまだ大きな問題です。
今や働きながら介護をしている人は240万人を超し、そのうちの10万人ほどが介護離職をしているといわれています。とくに40~60代の方々は、家族介護に直面している人の8割を占めています。
そんなキャリアを積んだ働き盛りの方々が退職というキャリアの中断を選択して介護に専念することが、その人の人生に大きな影響を及ぼすことは想像に容易いことだと思います。
まずは「介護がはじまったら、仕事を辞めるしかない」と、思い込まないでください。
実際に、介護はお金がかかります。たとえば、親を介護するにしても、親のお金だけでは賄いきれない方がほとんどです。
親が遠くに暮らしているというケースでしたら、毎回の移動費だけでも相当な負担になります。いったん介護離職をしてしまうと、再就職が難しい年齢の方々も多く、どんどん経済的に追い詰められてしまいます。
さらには、心の問題も生じます。会社を辞めてしまうと、社会との接点がなくなってしまい、四六時中、介護の悩みで頭がいっぱいになります。介護は長期にわたりますから、やがて社会から孤立してしまい、メンタル面での健康を保つことも難しくなってしまうのです。
まずは介護と仕事の両立を第一に考え、相談しましょう。冷静な判断をするために、ひとりで抱えこまず、相談をするのです。
でも「いったい、どこの誰に相談すれば……?」と、意外に難しいものです。病院と違い、介護は「どこへ行けばいいかも分からない」というのが実情です。
窓口は、介護を必要としている人の居住地にある、「地域包括支援センター」になります。「○○市 地域包括支援センター」というように、インターネットで検索したり居住地の福祉担当の役所の窓口へ訊いてみてください。名称や呼称が地域によって異なりますので、少しだけ注意が必要ですが、どこ(場所)に行けばよいのかが分かります。
このように介護のはじめの一歩にもちょっとしたコツが必要なのも、介護が皆さんの常識になっていないからこそなのかもしれません。
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著者プロフィール
飯野 三紀子(いいの みきこ)
ウェルリンク株式会社 産業カウンセラー・キャリアコンサルタント。
一般社団法人介護離職防止対策促進機構理事。
企業の人事部経験を経て、人材紹介会社で、キャリアコンサルタントとして従事。要介護4の母を介護しながら、働く人の「心の健康」と「介護と仕事両立」のための支援を行なっている。5人の介護と4人の看取りを経験。