講座「発達障害の療育について考える」



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〇障害ってなに?
 成長していくと自然にできるようになっていくことがなぜか伸び悩んだり、うまくいかなかったりして、本人が頑張っても上手くいかない状態、本人の頑張りにかかわらず成果が出にくい苦手さ。

〇発達障害とは?
「脳機能に問題がある」障害
発達障害とは、発達期に脳に機能的な問題が起きたために、発達の領域――認知、学習、言語、社会性、運動、手先の細かな動き、注意力・行動コントロール――に、困難が生じることをいう。

 療育について考える時、傾向を知るのは難しくない。
今日では書籍が多く出ている。
難しいのは理解ではなく、周りの状況や環境、関係性で上手く適応していく実践。
子供自身の変化によって、その時々の躓きも多様になることが、一層難しくさせている。

その子の「育ちの理解」と「障害の理解」の両輪で捉えていくことが必要
「障害」に的を絞って、概要をもう一度捉えなおしながら、理解を深めていく。
その際、見立て、検証、実践、というプロセスを踏み、繰り返すことを前提とする。


〇自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群の傾向とは?

1)他人との社会的関係の形成の困難さ

タイプⅠ
人がそばにいると緊張する。例えば、相手と視線を合わせず、とても無口。
こちらが話しかけてもうなずく程度で、言葉による返事がない。緊張のためか、肩には力が入っている。仕事に必要な話はできても、世間話や雑談が辛く嫌い。気付かれないために、愛想笑いでやり過ごす。」

タイプⅡ
人が話している最中でも、会話に割り込んで話す。相手が気分を害することを気に留めず、間違いを指摘する。周りが困った顔をしていても気付かず、自分の知っていることを話し続ける。知識をひけらかしているように見える。相手の都合を考えず、強引に物事を進める。すべてにおいてマイペース

⇒これは、「相手の立場を考える」という「想像力の問題」でもある。

2)コミュニケーションの困難さ

「自分の体験と人の体験が重なり合わない」
「世界の感じ方、見え方が、その人固有の体験である」
常識・普通・一般というような多くの人が共有できることがしにくい。
他者と合意形成がしにくい(空気を読んで適切に自分のふるまいを調節する)
他人の意図や感情が読み取りにくい。
比喩や冗談が通じない。(言葉の裏に含まれた意図を図れない会話の「間」や言葉の「ニュアンス」など)
言葉に込めた意味を察することや、相手の思いを感じ取ることが難しい。

「あの花きれいだね」と言われても「そうですね」と肯定的な返事をせずに、
自分が嫌いと思えば「嫌い」と言ってしまう。
「暇なときに遊びにいらしてください」と言われれば、相手の都合も考えずに、
「暇だから」という理由で本当に遊びに行ってしまう。
――言葉通りにそのまま、鵜呑みにしてしまう。
⇒これは、「相手の立場を考える」という「想像力の問題」でもある。

先の見通しを想像することが苦手=自分のスケジュールや予定に拘る。

3)言葉の発達の遅れ(語彙、話す、聴く、書く言葉、言葉に含まれた水面下の意図、脳内の言葉の扱い)

4)興味や関心が狭く特定のものにこだわる(自分の考えや価値観、手順など。)

⇒行動の障害。(中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定)

!中枢神経系に障害がある=「情報を分析/整理/判断/し、適切な指令を下す=状況判断」が苦手!

(+4)知覚過敏
特定の音を嫌う聴覚過敏
触られるのを嫌う、砂の上を歩くことを嫌う触覚過敏、
特定の匂いを嫌う嗅覚過敏
アーチ型の門(一定の形)を嫌う視覚過敏がある。

「基本方針まとめ」
⇒本人の拘りを理解する。周りのずれを把握する。
その間で具体的に、どのように「ずれ」を埋めていくかを身に着けていく。
苦手さに直面するたびに、その時に適切に状況判断ができるように、振り返りをする。

〇ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?
・注意(注視)を上手く対象に向けられず、集中力が続かない。
・思いついたことは考える前にやってしまう。じっくりと一つのことに取り組むのが苦手。
・五感に入ってくる刺激に気を取られてしまって、動きがでてきてしまう。
⇒忘れやすい、覚えていられない。片付けられない。落ち着かない。集中できない。話を聞かない。

「基本方針」
・大事な話をするときや集中が必要な時は、余計なものは周りに置かない(時間や空間を仕切る)
・覚えられないなら覚えない。手順を明確にする。張り出す。図にする。(見える化する)
 ・仕上げることが極端にできないから、一つのことができたら認める。(成功体験を積む)
・感情を整理することが苦手なので、一緒に体験を振り返る。(整理して、代弁する。寄り添う。)
・具体的に教える。選択的に質問する。「駄目」よりどうすればいいかを一緒に考える。(協働作業)

~子育てで出てくる怒りについて~
〇人には「発達段階」というものがある。人が成長していくと自然に解決するべき課題のことを言う。
例えば乳児期だと大人への「信頼」が課題で、達成できないと大人を信じられない「不信」感を覚える。
幼児期前期だと「自律」が課題であり、達成できないと、人からコントロールされる「他律」になる。幼児期後期だと「積極性」が課題であり、それが上手くいかないと、積極的になれない自分に「罪悪感」を持つことになる。
児童期になると、物事に熱心に取り組む「勤勉」になるが、できないと人と比べて落ち込む「劣等感」を持つことになる。

〇大人でも未達成だったり、達成途中の課題がある。すべてを完璧に超えている人はいない。なので、人を育てる時には、子供時代の頃の未解決の課題が、その時期その時期に応じて引きずり出されることになる。それが当時体験した生々しい感情として現れてくる。頭ではわかっていても心が反応するため感情的になる。(自分も幼い頃にそういう風に言われていた、怒られていた等)

〇まずは、冷静になれない自分にも、解決できていない感情があることを自覚し、向き合う(振り返る)ことが必要になる。自分の感情と距離を置き、整理することが必要になる。


2:関わり方を探す

〇家庭・学校・職場で生じるギャップとは?

「周囲からの理解がなく、集団から孤立」
話が通じにくい、場違いな言動や周りとズレた言動があると見られがち。
集団から浮いた存在として疎まれてしまう傾向

⇒自分について、他の人の視点から見ることが困難。自分は他の人たちと違っていると深く悩む。
職場での無理解や不適切な対応が要因、うつ病や強迫性障害などの2次障害を引き起こす。

「周りの理解」と「本人のずれ」
周りが理解すればするほど、「ずれ」に対して肯定的になる。
反対に、周りが無理解であれば、「ずれ」に対して否定的になる。

〇接し方とは?

障害(抑えるべきポイントと上手な関わり方や理解の仕方)を本人や家族から、伝えて理解してもらう。障害を伝えても理解してもらえないと本人や家族が考えているのが多い。
だからこそ、必要に応じて、分かりやすい言い方で、正しい知識を伝えていく必要がある。
障害をオープンにできる環境を作り出すことに繋がっていく。
周りがその人の障害の状態をよく把握し、サポートができる状況を作り出すことが目標になる。
本人が人間関係を保つために、周りが理解を心掛け、相談に応じ、長所を伸ばすような配慮をする。

圧倒的大多数が、適切な職務と職場配置に配慮すれば、仕事をきちんとできる人。
(周りの助けを得やすくするためにも、最低限そこまで持っていく必要はある=社会適応の分岐点)

3:将来と対策

こうした発達障害の子供がどのように社会的な難しさを感じるのかを想像してみる。

ルート1:学生時代
⇒趣味の合う特定の人とだけ付き合っていればよい。学業さえ並みであれば、ある程度やっていける。
ちょっと変わった子、という程度で、周りもそれほど気にしない。ひとりでいても誰も気にとめない。

ルート2:仕事を始めて
⇒先輩や同僚と協力して仕事を行うことが苦痛になってくる。休み時間に世間話をするのが気詰まりで、
ひとり席を外すようになる。
社交辞令を間に受けて、ちぐはぐな対応をし、周りの人が唖然とすることが重なる。
人とのコミュニケーションが不要な仕事(パソコンの入力や計算、研究開発など)には集中力が高く、
自分が納得するまでやめない。仕事に関することは直ぐに覚え、忘れない。
ひとつのことを極めることはできる。だが、それを仕事にどう活かすかがわからない。

ルート3:仕事を辞める
⇒「アスペルガー症候群」の障害によるものであると、本人も周囲も知らず、また、理解できていない。
そのため、適切な対処のないまま、本人の困惑はますます深まり、周囲の人との溝が深まっていく。
果ては会社を辞め、自分に適した職場を求め、転職を重ねる。
社会生活をおくることに自信を失い、家に引きこもってしまう。

このような一連のルートを振り返ってみると、このような力が必要になることが分かる。
⇒Ⅰ本人が自分の障害の傾向を理解(障害受容)する力
Ⅱ自分の拘りや苦手さを具体的に対処していく力
Ⅲ周囲に自分の苦手さを上手に伝えていく力
Ⅳ自分の拘りと他人の主張がぶつかる中で経験する、調整する力

※特に大人になってから、なぜ周りの理解が大切なのか。
⇒周りの人の視点に立って考えてみる。
「どうしてこの人は約束したことを忘れてしまうのだろう?」「どうしてあんなに怒るのだろう?」と、
一緒に仕事をしていて、相手に対する不満を持ち続けることは、自分自身の心を不安定にする。
それを解消するためには、相手の障害を知った上で、その障害への理解をすることが不可欠。
同じ理解のしにくい発言であっても、それが障害のひとつの現れと分かれば、
相手の発言によるフラストレーションはかなり抑えられる。何を言われても、気分を害するところを、「これは障害によるもので、悪意はない」と理解する。
相手を嫌わない、責めない。それがサポートに繋がってくる。

関連動画
「児童福祉施設でパートをします」
https://youtu.be/Ml-gFrnXq-k

#R8  発達段階
https://youtu.be/iPc9_I86Kjo

#R10  自閉症スペクトラム
https://youtu.be/qGO7lMtu2qg


#R11  発達障害 ADHDとLD
https://youtu.be/i_k6upGjvUo

「発達障害や精神疾患の人へのサポートの仕方を教えてください」
https://youtu.be/IPIbkPnKTVI

「発達障害の子供にどう関わればいいでしょうか」
https://youtu.be/l6mKMgkGbn4


参考文献
「障害者とともに働くための基礎知識 教えて!障害のこと」(第9回 自閉症スペクトラム)
http://www.atarimae.jp/oshiete/2009/01/post-53.html
検索の見出し「おしえて!障害のこと - ATARIMAEプロジェクト」

看護roo!(カンゴルー)ナースなみんなのコミュニティ
Webマガジン ステキナース研究所 「神経のしくみと働き 神経系の機能」
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2103
検索の見出し「神経のしくみと働き|神経系の機能|看護roo![カンゴルー]

日本の学童保育「特集=一人ひとりを大切に―発達障害を学ぶ」11年12月号 全国学童保育連絡協議会

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