資料編「アダルトチルドレン」①

対象者
 自分がアダルトチルドレンではないかと思っている人



1.アダルトチルドレンとは
①幼少期の養育環境が虐待や不適切だった。
 (不適切な養育/機能不全家族)
②そのことによって成人しても、
 そのトラウマによって否定的な自己像を持ってしまう。
③極端な人間関係に陥ってしまったりしていること。
④内的には非常に不安定であり、生きづらさをもっている。
(⑤)時には精神障害を患うこともある。

2.傾向
正しいと思われることに疑いを持ちやすい。
最初から最後まで、ひとつのことをやり抜くことができない。
本音を言えるようなときに嘘をつく。
容赦なく自分を批判する。
何でも楽しむことができない。
自分のことを深刻に考えすぎる。
他人と親密な関係を持てない。
自分自身を支配できない時に、過剰に反応する。
常に承認と称賛を求めている。
自分と他人は違っていると感じている。
過剰に責任を持ったり過剰に無責任になったりする。
衝動的である。
行動が選べたり結果も変えられる可能性がある時なのに、
 お決まりの行動をする。
そういう時に限って、混乱や自己嫌悪や喪失感、無気力感に陥る。
自分が混乱した時に、混乱を収めようとして、
 過剰なエネルギーを使ってしまう。


3.原因と解決

(1)虐待
 虐待には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト、
 医療ネグレクト、教育ネグレクト、経済ネグレクト、DVの目撃、
 親の性行為を見せる、など。
 人との信頼関係を築くことが障害される。
 虐待を生き抜くのに必要な技術が、
 通常の人間関係や社会の中で使用すると不適切になる。

例)親を怒らせないようにいつも笑顔で、過度に従順に振舞う。
学校、社会、職場、友人、
 恋愛で行うと反対に人間関係に壁ができて信頼が結べない。

(2)毒親
子どもを傷つけたり、否定したり、支配したり、
 苦しめたりするような親で、心理的虐待と重なる部分が多い。

(3)機能不全家族
家族とは「互いに成員を尊敬、尊重し、成長を支え合い、
 時には励まし、協力していく関係」のこと。そうした機能が働かず、
 反対のことを行ってしまう家族のことをいう。

(4)アルコール依存症の親
アルコール依存症になると他者への配慮や関心が薄れ、
 利用できるものがあれば何でも利用しようとする。
 アルコール依存症の親が子どものお金を盗ったり、
 子どもにアルコールを買いに行かせたり、
 アルコールが無くなった時には子どもに暴力をふるったり、
 等のような行為を行う。

(5)体質
自閉的な子ども、注意集中がしにくい子ども、扱いにくい子ども、
 理解能力が低い子ども、過敏な子ども、
 衝動的な子どもであると親は非常にストレスを抱えやすい。
 子どもの問題を抑え込もうとして支配的になったり、
 叱責が多くなったり、時には手を出してしまったりすることもある。
 家族は疲弊し、殺伐とし、怒りが蔓延する雰囲気になってしまう。
 そうした事柄が翻って子どもにまた悪影響を及ぼしてしまい、
 さらなる問題を引き起こしてしまう。
 子どもの体質ゆえの問題行動に対する対処が、
 虐待や不適切な養育といった親の行動になり、
 それらがアダルトチルドレンを生み出してしまうことにもなりうる。

解決に向けて
 親を許すのでもなく、憎しみに固着するのではなく、
 親の現実を理解した上で、親との決別を心理的に成し遂げること。


4.タイプ

(1)ヒーロー(英雄)
勉強やスポーツで良い成績や評価をもらうことを第一としている。
しっかり者、頑張り屋という見られ方をする。
努力は自身のためではなく親の期待に応えるために、
 もしくは家族の雰囲気を悪くしないための防衛的で、
 後ろ向きな意味がある。
努力が挫折したり、失敗したりしたときに、
 心がぽっきりと折れてしまい、無気力になる。

(2)スケープゴート(生贄)
問題行動を起こしたり、過剰に低い成績を取ったりして、
 家族の中で悪者や問題児の立場を引き受ける。
家族の憎しみや怒りや不満、鬱憤を一人で引き受け、
 そのことにより家族のバランスを取ろうとしている。
家族の中のゴミ箱的な役割とも言える。

(3)ロスト・ワン(いない子)
家族の中での存在を消し、いない子どもとして、
 生まれてこなかった子どもとして家族との関係を断ち、
 ひっそりと気配を感じさせずに生きていこうとする。
時には迷子になっても家族のだれからも気付かれることがなく、
 旅行にも連れて行ってもらえず、家の中にはいても、
 いつも一人で孤独にいる。

(4)ケアテイカー(世話役)
献身的に家族の世話をし、愚痴を聞き、支えることを過剰なまでに行う。
自己犠牲的であり、自虐的でもある。
家事をしない親に代わって家事をしたり、
 養育をしない親に代わって弟妹の面倒をみたりする。
自身のことは何でも後回しにしてしまう。
そうした家族を維持する機能を一身に背負って家族が崩壊しないように、
 バランスが取れるに努力をする。

(5)ピエロ(道化師)
家族の暗い雰囲気を回避するために、おどけたり、冗談を言ったり、
 面白いことを言って笑わせたりして明るい雰囲気を作ろうとする。
ひょうきんで明るい性格に見えるが、過度に雰囲気を読み取り、
 人の表情を伺い、どうすれば険悪なムードにならないかと、
 常に神経を擦り減らしている。


5.アダルトチルドレンの問題・課題

(1)精神障害
「不安障害」「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」「うつ病」
「気分障害」「双極性障害」「境界性パーソナリティ障害」
「自己愛パーソナリティ障害」「解離性障害」「適応障害」

(2)極端な人間関係
親密な付き合いを避けるか、反対に過度に人に依存し、
 相手のためなら何でもするといった没頭をしてしまうときもある。
人間関係を築いていたりしても、
 心から信用すること信頼することができず、疑心暗鬼になり、
 表面的な付き合いに終始する。極端な人間関係に陥ってしまいがち。
心の中では、憎しみの気持ちと裏腹な、
 親密になりたい気持ちが同時並行に存在し、葛藤している。
カウンセリング場面では、
 その関係にこれまでの人付き合いを持ち込んでしまう(転移)のために、
 信頼関係を築くまえに挫折したり、
 継続していたとしても疑心暗鬼と強い駆け引きの関係になってしまう。

(3)否定的な自己像
自身のことを否定的に見ており、自己評価や自尊心は低い。
自分自身のことを大切にできなかったり、
 傷ついても平気なように見えたりする。
時には自分のことを犠牲にして相手に尽くそうとする。
他者から、家族から大切に扱われていないとき、
 人は自分自身を大切に思えなくなってしまう。

(4)自殺・自傷
否定的な自己像や否定的な人間関係が繰り返されると、
 生きていくことに希望を持てず、将来に期待することもできず、
 苦しみばかりがあるように思える。
死ぬことの方が苦しみから解放されるように思えてくる。
(衝動的に自殺してしまうこともある。)
自傷行為をしてしまうこともある。
自傷によりある種の快感がもたらされるため、
 苦しみから一時的に逃れることができる。
悪い自己を手首に投影して、その手首を切ることもある。
自傷による痛みで生きている感覚を取り戻せることもある。
自傷は防衛とも言える。

(5)世代間連鎖
親との関係の中で起こったことが、自身が子どもを持った時、
 その子どもとの間で同じようなことを繰り返してしまう。
親が子に、子が孫にというようにバトンを渡すように受け継がれていく。
親から愛されなかったのに自分の子どもを愛せるのだろうか、
 という不安と苦しみは相当大きい。
人によっては子どもを作ることや結婚そのものを忌避してしまう。

(6)生きづらさ
精神障害、極端な人間関係、否定的な自己像、自殺、自傷、
 世代間連鎖を見ても、
 生きていくことに希望や期待を見出すことは困難であり、
 非常に生きづらさを抱えながら生きている。
生きているのに死んでいる、死んでいるように生きている、とも言える。


「アダルトチルドレン」と「共依存」に共通する5つの課題

1.セルフエスティーム(自尊心)の問題
自分が生まれながらに持っている価値を、
 子ども時代に認めてもらえなかったため、
 人と比べて上か下かという外の基準を頼りに生きようとする。
自分の価値を、周囲の基準だけを頼りに判断する。
自分がどうしたいかではなく、周囲の期待に応えることだけに必死。
他の人の問題を解決することに一生懸命。
困っている人を助けないと悪いという罪悪感。
みんなに好かれなければダメだと考える。
完璧な自分にならなければという思いこみ。など自分を過剰に追い立てる。

2.境界の問題
子ども時代に自分をきちんと守ってもらえなかったり、
 親からべったりくっつかれたために、
 適切な境界線の引き方がわからない。
壁を作って孤立したり、境界がないまま相手に侵入され支配されてしまう。

3.現実性の問題
自分をそのままの姿で認められないため、
 「完璧ならOK、少しでも間違うとダメ」といった白黒思考に陥る。
人間は間違うこともあれば弱いところもあり、感情も揺れ動くものだ、
 という現実を認められない。

4.依存の問題
子ども時代に自分のニーズが満たされなかったり、
 親が先回りして何でも与えてしまうために起きる。
相手が決めたり考えるべきことまでやってあげたり、指示したりする。
その結果相手の甘えを招く。
大きく分けて「人に頼らず、なんでも自分の力でやろうとする」か、
 「自分の責任で自分のニーズを満たせず、他人に頼ってしまう」かの、
 どちらかになる。

5.中庸の問題
適度な自己表現やセルフコントロールが難しい。
自分の衝動や欲求を吟味することができず行動に移したり、
 がちがちに我慢して抑えすぎたりする。誰かとの関係で、
 自分ばかりが責任やリスクを負ったり、気持ちを押し殺したりしている。


6.自分を育てる

① まずは自分を客観視する。

② 次に「正しい親」を設定する。

③ 自分を育てるには、今の自分ではなく、
 意識的に作り出した「正しい親」である必要がある。
 それには、他人からどういう言葉を投げかけて欲しいのかを考える。

●厳しい親、否定的な親の場合
「違う」「そうじゃない」
「ダメだなぁ」「なんでできないの?」
「バカなの?」「ムリだよ」
「どうせできないよ」「失敗したらどうするの?」
⇒あなたのやる気を奪い、
 自信も失わせる言葉を、自分に言っているとしたら、
 あなたの最大の敵は、あなた自身。
 あなたからエネルギーを奪い、あなたから自信とやる気を奪っている。

●本当はあなたが「言って欲しい」
 「言って貰いたかった」言葉を考えてみる。
両親や学校の先生や友人や先輩や上司などに、
 本当はなんて言ってもらいたいか。
「すごいね」「さすがだね」
「あなたなら、絶対できるよ」「ありがとう、助かったよ」
「あなたといるだけで楽しい」「いつも役立ってくれてる」
「頼りになるよ」「過去の失敗なんて気にする必要ないよ」
「これから成功できればいいんだよ」「生まれてくれて、ありがとう」
「生きていてくれるだけで、いいんだよ」

⇒もしこのように言ってもらいながら成長したとしたら、
 あなたの人生はどのように違っていただろう。

④ 本当は言われたかった言葉を考えることが、
 「正しい親」の設定に繋がる。
⇒これからは、自分自身が「正しい親」になって、
 自分という人間を育て、成長させてあげる。

(多くは、成長段階で十分に「承認欲求」、
 「存在価値」を満たされることもなく、
 心が成長できないまま大人になってしまっていることが問題)


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