4 過去回想:支援の歪みは成育歴から


3 つまずき:怒ると叱るは違う

https://note.mu/welfare/n/n016ae8da529f


親から怒られてきた、その口調が嫌だったことはさきほど述べたけれど、
ここではもう少し詳しく掘り下げて、私の成育歴的の話をしたい。

正直自分の過去はあまり思い出したくない部分もあるのだけれど、
この時期なくして今の自分はないので、
受け入れるつもりで、書いてみようと思う。

私の家族構成は父と母、兄と私の四人。
年の離れた兄は、私と違って要領がよく、頭がよかった。

一方で、私は小学生の頃から勉強が苦手だった。
だから、母親からは、よく兄と比較されていた。

たとえば、
小学六年生のときに一人で旅行に行けたけれど、
私は中学生になってもできなかったとか。

兄はテストで高い点を取ってくるのに、
私は全然点数が取れないとか。

私は物覚えも悪かったから、
何度も同じことを親や先生に聞いてしまっては、
「できないこと」を叱責されるのが常だった。

そうしていつの間にか、いくら勉強しても成績の上がらない私に、
両親は「どうせやってもできない」という評価をしていた。

私からみて、両親は機嫌屋で、いつどのようなタイミングで怒るか、
いつ言っていることが変わるか、全く分からなかった。

だから親の顔色を伺ってばかりいた。

私は親に味方であってほしいと心のどこかで願っていたが、
実際には私にとって親という存在は肯定も否定も親の機嫌次第で、
安心感のないものだった。

家の中にいても、いつも不安だった。
私はここにいてもいいのだろうか、という気持ちがあった。

そういう環境下で、毎回親に叱られては、
「親が言うとおりだな。本当に自分は能力が低くて駄目だ」と思っていた。

家族の中で、私だけがお荷物になっているように感じていた。

人は誰からも褒められず、自己肯定感が極端に低いままでいると、
段々と何ごとも頑張れなくなってくる。

大学受験の頃の私が、まさしく「頑張れなくなる」一歩手前にいて、

ここで失敗したらもう二度と努力ができないかもしれないという
危機感のようなものまで感じていた。

このままではまずいから、変化を起こしたい。
その一心で、何とか気持ちを奮い立たせて、
大学受験を乗り越えたのだった。

こうして振り返ってみて
「できないことが多い自分」にまつわる生きにくさを、
誰かに理解されたいと思っていた私が、
福祉に出会うことは必然だったのかもしれない。

そして、福祉を学んだことで、
私は過去の自分が置かれていた環境を
客観的に見ることができるようになった。

自分の中の過去の物語と今の自分が繋がったのだ。

児童関係の本や虐待の本を読む中で、
本に書かれていた心理的な動きと自分の心の動きに、
当時の自分と一致する箇所が見つかってくる。

「人を信じられない」に始まり「頑張れない」
「長続きしない」「無気力」「投げやり」
「自分は愛される価値がないと思っている」
「人を試したくなる」など、あらゆる項目が自分に当てはまり、

愕然とするしかなかった。

自分がどうか普通であってほしいと、
漠然とした不安を抱えて生きてきた中で、
それが虐待を受けた子どもと同じような心理状態にあると知ったとき、
それはとても衝撃的で心に穴が開くように感じるほど痛くて、
ひどい気分だった。

私はどれだけ自分の悲しみと痛みに無自覚でいたのだろう。

今まであまりこの話をしたことはないけれど、
言葉にしていいのであれば、毎日毎日、死にたいとすら思っていた。

子供の頃からずっと、そう思って生きてきたことに、
このときはっきりと自覚したのだった。

福祉という学問のおかげで、自分の家族関係や自分自身について、
深く理解ができたからこそ、就職活動に関しても、
私のことを否定ばかりする両親に疑問がわくようになった。

これ以上、この家にいたら自分は駄目になる。
早くここから出て行かなくてはいけない。

でも自分に一人で生きていく力があるとはどうしても思えなかった。
「自分は駄目だ。いや、そんなことはない。でも……。」
そのような揺らぎの中にいつもいた。

結果として、私は就職と同時に家を出た。

そこから、
駄目な自分とさらに嫌と言うほど向き合うことになるのだが、
それは次の項目で話すことにしよう。

ここまで、子どもの私目線からいろいろと書いてきたのだけれど、
今、当時を振り返って親の目線から子どもの頃の私を想像してみると、
私は移り気が激しくて長続きせず、とても育てにくい子供だったと思う。

そういう意味で、
両親が私の心にちゃんと根づいて信頼関係を結ぶことは、
どれだけ難しかっただろう。

今の私が昔の自分を見たら難しいケースだと思うだろう。

それでも、当時の「理解されたい」「寂しい」という気持ちは、
未だに私の心をしめつけることがあるのだけれど。

5 進路選択:就職先に学童を選ぶ
https://note.com/welfare/n/n64c622dca7ed


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