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不法侵入→建物を占拠→ここ、もうオレん家ですから!

 誰も住んでいない建物に侵入して占拠し、ここは俺のモンだと主張して、家主や警察を蹴散らし、最終的には行政に認めさせて自分たちの巣にしてしまう、というトンデモナイ輩がいます。

 こういう輩の占拠した建物は、パリにいくつもあるようです。彼らはたいてい、移民や貧困層、金のないミュージシャンや若い芸術家など住む場所に困る人々で、古いデパートや工場といった廃墟、空き家を自分たちで手入れして、たとえばコミューンのような住処にします。

 じつは、こうした占拠行為は、スクワット運動といって活発に行われてきました。もともと、squatter(スクワッター)=無断居住者は、オーストラリアで発祥したといわれます。半世紀近く前、いまよりもっと政治的で、住宅環境の悪かった頃に、それは運動としてヨーロッパで広まりました。資本主義的生活スタイルを自ら捨てた人々が、「全ての者に住居を!」と叫んでいたのです。

 しかし、冷戦崩壊に伴って運動も落ち着き、建物から立ち退かされ、どんどん少なくなったようです。政治状況も変わり、以前の熱気もなく、スクワッターにとっては行政といかに上手くやっていくかという問題以外、楽しくやっていければそれでいいといった感覚に近いのかもしれません。

 というわけで、最近は、普段は建物をアトリエとして使い、ときに展覧会を開き、仲間を呼んでパーティやイベントをするといった、アーティスティックな場として公的に機能しているところもあれば、たんに住居として、少々異なる社会秩序を保ちつつ、アパート代わりに使われているところもあるようです。

 興味があって、あるスクワットを覗いてきました。建物は表も裏もアーティストの好きなようにペイントされていて、なかを歩くだけでも楽しくなれます。アバウトでユルイ空気、しかし建物自体はちゃんとオーガナイズされているようです。展覧会当日だったこともあり、その分野では有名なアーティストもいました。

 冒頭ではスクワッターを犯罪者扱いしましたが(実際、不法侵入自体は犯罪行為ですが)、こちらの住宅事情や経済状況を知り、スクワットに何度か行ってみて、ぼくはとても気に入ってしまいました。政治的な主張なんてしませんが、街にこういう場所があることは、とてもシアワセなことかもしれません。

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