見出し画像

パリの日本人④ 日系レストラン

 他国でもそうあるように、日本食レストランのほとんどは、日本人以外の経営者や料理人によって営まれています。それはたいてい中国人で、彼らの経営する店はなぜか皆同様の黒い看板を掲げ、スシとヤキトリとテンプラがメニューに混在するという離れ技をやってのけています。

 そういった店は町を歩けばどこにでもあり、庶民的な外国人は、たとえば以下のようなメニューの店に行きます。

 それはさておき、

 在パリの最も典型的な職業の一つが、飲食関係です。今回は、そのなかの日本食レストランで働く人を、経営者、料理人(長期在住、社員)、アルバイトの3つに分けてみます。

 経営者は、長く住んでいるので中年以上の人が多く、一発当ててやろうと日本を出てきて、一からのしあがった自負もあるのでしょう、元気があり厳しい人が多い印象です。料理人やその他の社員は、日本人ではあるもののここの空気に染まっている人が多いので、日本人と同じくらい仕事はするがフランス人のように適当な人が多いようです。アルバイトは、学生やアーティストの卵、ワーキングホリデーという貧乏な若者ばかりで、夢追い人や旅人が多いようです。

 職場の内情は、端的に言うと、こんな感じです。日本人経営者は、自分のレストランでは絶大な権力を持ち、その権力を最大限に行使します。そこでアルバイトとして働かざるをえない貧乏な日本人は、どうしても彼らに足元を見られてしまいます。そして、アルバイトより待遇は良いものの、料理人(社員)も安い賃金で残業のあることもしばしば。

 つまり、日本食レストランは、海外にあること(による諸要素)を除けば日本のレストランとあまり変わりません。日本と違うのは、結束はなくとも、狭い日系レストラン業界内では噂や陰口が電光石火で回ること、日本より平均して味が落ちるわりに値段が高いということでしょうか(個人的主観というより、よく聞く話です)。

 では、それぞれ何を思って働いているのか、まずは経営者目線で考えてみます(次は料理人、アルバイトの順)。

 <経営者> 日本食ブームのおかげで儲けは多少よくなったものの、不況だし人件費は相変わらず高いから、バイトを使って少ない人数で接客を回していこう。仕事を探している無知で従順な若者は毎年大勢日本から来るから、いくらでも代わりがきく。低賃金でこき使っても(怒鳴りつけても、かわいいバイトに手を出しても)、結局すぐ日本に帰るんだからかまわない。料理人や事務は接客より替えがきかないから、信用のおける(使える、日本語の話せる)人を残して、それ以外のバイトは最低賃金で、料理人(社員)は少し多くしておこう。

 <料理人、事務> できれば自分の店が欲しいけど、(いまは)難しい。仕事はきついから、せめて社長以外の後から入ってくる人たちは自分の言うことをきくようにさせて、仕事をしやすいようにしよう。アルバイトはどうせ数年で出て行くんだから。給料が低い現状から、どうやって生活レベルを向上させようか。たまに日本が恋しい。でも帰っても良い仕事はないだろうし、毎日楽しくやれたらそれが一番良いかもしれない。

 <アルバイト> フランス系で働くには語学力が足りないし、日系で働こう。時給は低いのに日本式に働かされて大変だ。職場は気を使うし、人間関係がドロドロしてていやだけど、仕事を選べる立場にないし、職場をころころ変える経済的余裕もないから、ここでがんばるしかない。できるだけ自分のしたいことをしたいけど、仕事に追われてばかりだ。

 多少偏りはあるかもしれませんが、出来るだけ多くの人から聞いた話をまとめたものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?