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2022年に高齢社会へ、急速な変化に中国社会は耐えられるのか

ポイント
①「中国発展報告2020」で2022年に高齢社会へと移行すると発表
②高齢社会への対策―日本との相違点
③シルバー経済が成長産業に、老齢市場規模が大きい中国

  中国発展研究基金が「中国発展報告2020:高齢化の趨勢と政策」を発表した。2000年に高齢化社会に入ってから高齢者の割合は増え続けており、今回の発表によると、2022年ごろに中国65歳以上の人口が14%に到達し、高齢社会になる見通しだ。高齢社会への移行における諸問題は現在の中国にとって解決すべき難題でもあるが、一方で大きなビジネスチャンスでもある。(高齢化社会:高齢化率が7%に到達、高齢社会:14%、超高齢社会:21%と定義されている)

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「中国発展報告2020」のデータから引用、高齢者の総数の変化と今後の予測

20年の変遷と、今後の動向
  世界的に見ると、中国が高齢化社会に移行した時期は比較的遅い。人工的理由を主因として2000年に65歳以上の人口比率が7%を超えた。現状(2018年の国家統計局による統計)は、65歳以上の人口比率が11.9%に到達し,0~14歳はわずか16.9%となり、人口構造はつぼ型だ。報告では2022年に高齢社会に入ると見積もられているが、これは高齢社会に最も早く移行したフランスが115年、スウェーデンが85年かかったのと比較すると、たった22年で移行したことは非常に進行が早いと言える。また規模も大きく、2019年のデータによると、65歳以上の高齢者は1.76億人にものぼり、その数は多くの国の総人口を上回っている。

  規模が大きく、高齢化が異常なスピードで進行しているのが中国の特徴で、政府はその対応に追われている。日本も同様に高齢社会に突入するまでが早かったので、先例に習う点が多いだろう、しかし中国独自の問題も依然存在する。では中国の高齢化の特徴とはなんだろうか。

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グラフは国連の統計から引用、筆者作成
~1970年の人口構造はピラミッド型で、多産多死が特徴。
毛沢東政権時代の爆発的な人口増加の影響で食糧難に陥り、都市部では配給制まで導入された状況下で、
「中国が豊かになるためには、人口を減らさなければならない」という鄧小平氏の主張は正しかったが、
同時に人口構造を崩し、「一人っ子政策」は高齢化の主因となった。

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2000年、 60歳以上の高齢者は 1.3億人になり総人口の10.3%。
2005年、65歳以上の高齢者が1億人を超える。
2010年、60歳以上1.78億、総人口の13.3%。65歳以上1.18億人で 8.9%。

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報告によると、2020 年65歳以上の高齢者は1.8億人になり、
2025年の「十四五」計画(中華人民共和国国民経済と社会発展の第十四回五年計画)の終了時には
その数は2.1億人に達し、全人口の15%も占めることとなる。
驚くべきことに報告では2050年には高齢者が約5億人になると予測している。

高齢化社会から高齢社会間の期間が日本と同程度であるが、社会状況が異なる
1、豊かになる前に高齢社会に突入する可能性
  日本の場合は、制度が整備され先進国になってから高齢社会を迎えたが、中国の場合このままでは「小康社会(ややゆとりがある社会)」に至る前に高齢社会を迎えそうだ。日本の65歳人口が7%を超えたのは1970年で、高度成長真っただ中であり医療や科学技術が飛躍的に進歩した時代だった。14%を超えたのは1995年で、合計特殊出生率が低いことを要因に24年で移行した。日本の2000年の一人当たりGDPは、4万ドル近くあり、介護保険制度も整備されていた。一方中国では、「未富先老」(豊かにならないうちに高齢化を迎える)や、「未備先老」(制度が整備されないうちに高齢化を迎える)という流行語がトレンドになるように、高齢社会移行への対策が不十分という見方がある。5月、中国「全国人民代表大会」の閉幕後の記者会見で李克強首相が「6億人が月収1000元」と発言があったが、コロナショックによる「返貧、つまり貧困への逆戻り(⇔脱貧)」で、目標としていた全面的な「小康社会」実現は達成の見込みが低くなり、高齢社会への過渡期における重要な政策は出鼻をくじかれる形となりそうだ。その意味で2021年から2025年における「十四五」計画に注目が集まっている。

2、都市と農村での高齢化などが不均衡
  一人っ子政策導入の結果、中国の伝統文化に根付いた大家族は姿を消した。そして核家族が増え、若い世代が老人世代を支える地域社会での仕組みがほぼなくなった。高齢化と都市化が同時に進行することは悩みの種となっており、都市と農村での退職年齢の乖離や、公的年金や社会保険の整備、家族負担の上昇と誰が介護するか、収入格差や医療格差など様々な問題がある。

  例えば、中国で話題となった映画「我不是薬神」を以前IP問題と関連付け紹介したが、医療格差という点においても注目に値する映画で、作中「金=命」の構造が提起され議論が巻き起こったが、こういった不平等・不均衡を改善するために、どのように社会制度を整えていくかが争点となる。

次回は具体的どのような政策が採られるのか、銀髪経済のビジネスモデルについて紹介する予定です。

文/Tagawa Taichi


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