「海鳴り」
海が見えない場所で生まれ育ちました。
そのため憧れがあります。
海といえば。父方の里で見た瀬戸内海の穏やかな景色。母方の里で見た荒れた日本海。遠足で見に行った滋賀の海。あれは海ではなく琵琶湖。
明け方の静謐な海をイメージして書きました。
ハープには「ハーモニクス」という特殊奏法があり、弦の音高より1オクターブ高いぽわんとした音を出すことができます。このハーモニクスを活用してやわらかいピアノと合わせました。(曲の一番最後の音を聴いてみてください。)初音ミクDarkのしっとりした声色がちょうどよかったと思います。
消えてしまう前にまだそのときではないといってくれるひとが(ひとでなくてもよい)、静かな救いになることがあります。
海鳴り
詞曲/市井ヒロノ
夜明けの海岸線を歩く
仄暗い街が目覚める前に
青い青い標識が浮いている
いつかなくなるもののはじまり
忘れ物ないようにと育ったから
捨てて来ることはできなかった
「サイフ ケータイ ハンカチ ティッシュ」
全部揃えて
あとは靴を揃えるだけ、
海の縁に指をかけて立つ
小瓶は割れて 手紙は溶けた
さざ波と共鳴するスマートフォン
自然には もどれない
水のような砂を踏んで歩く
海に引き寄せられた彼女を
夜明けが優しく抱き留めた
まだその時ではない と
言った
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