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知り合い

初めて買ってもらったゲームは、手のひらサイズの育成ゲームでした。

キャラクターを育てていくと、はじめは「しりあい」だった関係が「ともだち」になり、「しんゆう」になり、最後には「だいしんゆう」になるというゲームでした。
周りの友達が頑張ってお世話をする中、私はどうにもそのゲームの面白さがわからず、次第に興味が薄れ、放置するようになりました。

結果、「だいしんゆう」には至らず、キャラクターとは「しりあい」のままでした。それなりに長い付き合いだったのにずっと知り合い程度の関係だったのです。

現実の人間関係は、ゲームのようにお世話をしていれば「友達」「親友」になれるシステムではないので、さらに難しいものです。ゲームの如く、いやそれ以上に、人間関係でつまずきすぎて傷だらけになりました。
「親友にならない?」
そう言ってくれた人がいました。まだ同じクラスということしか共通点がないのに、急に親友?急に名前呼び?と怖くなって、「うーん、…」と濁し、それきりでした。
「友達になってください!」
塾で別の学校の人からこんなお手紙をもらったときも、怖くて、その人と会える環境だというのに何度か文通をして、それきりでした。
自分がゲームのキャラクターと「大親友」になれなかった理由が、今ならよくわかります。

自分から「友達になってほしい」と言えなかったのです。
人と関わるのが怖いし、まず断られるに決まっているし、横暴を友達という言葉でくるむような関係は好きではないし…こんなネガティブの渦に飲み込まれて、たったの一度も、言ったことがなかったのでした。


いつだか、いつもひとりでいる同級生に、
「ひとりでいるのが好きなん?」
と聞いてみたら、
「うーん。ひとりでいるのは楽やけど、完全にひとりになってしまうのは、さみしい。」
と答えが返ってきたことがあります。
そのとき、ああ平気そうな人でもそうなのか、と気付いたのでした。そして、強がらずにさみしいとはっきり口に出したその子を尊敬しました。人と話したいね、という意思をお互い確かめて、しかしその子とはそれから特に喋ることはありませんでした。友達とも親友とも呼べなかったかもしれません。しかし、知り合い、であったとしても、良い関係だったと私は思っています。

友達になってほしいと言えない自分でも、無理に言わずに、まったくひとりになってしまわずに、関わり合って生きられることを知りました。

これを読んで下さっているあなたとも、まずはあたたかい知り合いでありたいです。

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