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財源格差広がる23区 将来を見据えた分配機能を備えよ|【特集】あなたの知らない東京問題[PART-6]

東京と言えば、五輪やコロナばかりがクローズアップされるが、問題はそれだけではない。一極集中が今後も加速する中、高齢化と建物の老朽化という危機に直面するだけでなく、格差が広がる東京23区の持続可能性にも黄信号が灯り始めている。「東京問題」は静かに、しかし、確実に深刻化している。打開策はあるのか——。

2108 東京問題ヘッダー

文・土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)

東京都心部のオフィス街と、周辺の住宅地の格差は大きく広がりつつある。将来の高齢化による財源不足に備え、23区の税収を適切に再分配すべきだ。

 東京と地方の格差は多くの国民の関心事項であるが、「東京都心部の23区内での財源格差も看過できないレベルになっている」と聞いてピンとくる人は少ないかもしれない。特に企業のオフィスが連なる千代田区・港区・中央区といった都心3区では、東京一極集中によって固定資産税や法人住民税の税収が増加し、人口が比較的少ない割に多くの税収が集まっている。

 23区内の格差なんて、所詮「金持ち」同士の格差であり、地方都市からみれば贅沢な悩みにすぎない、と見放さないでもらいたい。23区内格差は、今後さらに高齢化が進む大都市に共通した問題を浮き彫りにしているからだ。ちなみに、東京都と他の道府県との関係では、東京都で上がった法人住民税や法人事業税の一部は、国の特別会計を経て他の道府県に分配されていたり、地方自治体の財源不足を補う地方交付税は、東京都には一切配られず他の道府県に配られるなど、東京と地方の財源格差は一定程度是正されている。

 同様に、23区内でも、財源格差をならす仕組みがある。都区財政調整制度(以下、財調制度)である。

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