黄色い声【三橋雄斗】


今日は何も予定が無い休みの日。



二人で、僕の故郷へ行き、墓参りをしました。




墓は山の中にあるので、自然の中を二人で歩いていると、トンボの大群が飛び回っていました。



ひかりちゃんは虫が苦手。



刺したり襲ってきたり不衛生な所にいたりしないトンボでも、例外なく嫌うのです。



ひかりちゃんは、トンボを見て「あ゛ーーー!!」と言い、近くを飛ぶと「ん゛ーーー!!」と、声を発していました。



そこで僕はふと思ったのです。



ひかりちゃんの「キャーーー!」という高い声の悲鳴を聞いたことがないのです。



10代の頃から一緒にいますが、驚いたりした時はいつも低めのキレ気味な声。



ひかりちゃんに、
「今まで『キャーーー!』って発したことある?」
と聞いてみると、



「ないね」
とのこと。



何故かと聞くと、

「そういう声帯を持っていないから」

とのこと。



僕は「じゃあそういう声帯作ってみてよ!」
と提案してみました。



ひかりちゃんは、
「なんのため?」
と聞いてきましたが、
確かに何のために作るのかまでは考えずに言ってしまいました。



ひかりちゃんは続けて、
「作るにしても、もう遅いよ。10代までに出来上がるものだからね。もう一生キャーということはないね。」

と言い切りました。


僕は諦めきれず「ちょっと一瞬だけでもいいから言ってみてよ!」
とお願いしました。



その瞬間、ひかりちゃんの目の前を、山にいるハエが『ブオーン!』と横切りました。



ひかりちゃんは、「あーー!もう!くだらないこと言ってるからハエが来ただろう!!さっさといくよ!!」
と言い、早足になりました。



神様も、きっとひかりちゃんのキャーが聞きたくてハエを横切らせたのでしょう。




結局聞けずに墓へ着きました。



そして、ひかりちゃんは、しっかりと墓参りをしていました。



ご先祖さんもきっと喜んでいることでしょう。

【相方へ】

自分の非を認められることは素晴らしいことです。
世の中にはそのように素直に謝ることができない人がいますからね。
やはりひかりちゃんは素晴らしい人ですね。
本当にそう思います。

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