見出し画像

"涙が零れないように" | Whale Living/Homecomings

「上を向いて歩こう/涙が零れないように」は明るい旋律に乗って耳に運ばれるが、もう涙は流れている。悲しいことに背を向けてしまうのは、逃避とファンタジーに任せておいて、現実世界に生きる僕たちは、酸いも甘いも辛酸も口にしながら生きていかないといけない。

涙を流さないように、ではなくて、涙が零れないように。ホームカミングスは母国語でないことばで語る以前からずっと、涙は流れるもの、人生は寂しいものという前提(シングストリートで言うところの”Happy Sad" - 悲しみの中に喜びを見出すこと)の上で僕たちに歌声を届けてくれている 。

水曜日の朝、いつものように駅から家までの10分間。SNSをチェックしながら、下を向いて早歩きしている。そのとき僕を立ち止まらせて、ふと空を見上げさせたのは発表されたばかりのホームカミングスの曲だった。冬を告げる澄んだ青は「そんなに急いでどこに行く?」と問いかける。その時間こそがBlue Hourなのだと、僕は気付く。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?